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219.これなら何とかなるだろう

「お前はここで散れ、邪神のしもべ!」

「あいにく、そう簡単に負けるわけにはいかん!」


 再びガキン、とぶつかる金属音。あ、今この位置から見て分かった。互いの剣を互いの剣で受け止めてるんだ、あいつら。

 シーラの剣はドンガタの村でゲットした逸品だけど、ルッタもそりゃ良いもの持ってるはずだよなあ。両方とも、よく壊れないもんだ、と思う。

 再開された戦はやっぱり五分五分にしか見えなくて、微妙に不利らしいシーラのどこが不利なんだろ、と見て考えても分からない。案外微妙に力負け、とかそういう単純なものかもしれないけれど。


「……ここで吸うと、後々どうなるかな」


 ふと、そんなことを考えた。いや、ルッタじゃなくて鎧娘たちの方だ。

 眼の前の戦に乱入させるのはルッタに斬られそうだからなしとして、そのルッタを見張らせることもできるし、サングリアスのサポートにも入れられる。……あれ、結構良くね?


「どうした」

「何をしている?」


 観戦しつつ考え事してるうちに音を立てたのか視界に入ってしまったのか、さっきの鎧娘たちに見つかってしまった。

 ここはうろたえ……ても良いのか。怖いお姉さんたちにうっかり見つかっちゃった幼女、という体で。

 で、こういう場合の言い訳だけは一応考えてあったので。


「あ、あの……用を足そうと思ったら、迷っちゃって」


 知らない人を前にそのものズバリ、はとても言いにくかったのでそんなふうに言ってみる。一応、こちらでもこの言い方で通用はするらしいんだが、さて。


「そうか。修行僧侶の同行者、のようだな」

「こんな小さい子がか」

「そういうこともあるだろう。サングリアス隊長も時々遭遇する、と言っておられたし」


 おお、この二人はサングリアスの部隊なのか。なら、サングリアスに補助としてつけてやるのもいいか。

 よし、決まり。吸って、吹き込んでやろう……と考えていたらそのうちの一人、兜の後ろから長い黒髪が見えている方が俺に向き直った。


「で、用足しは終わっているのか?」

「あ、はい」

「それはよかった。それなら、あとは帰るだけだな」


 この場合の良かったって、要は漏らさなくて済んだとかそういうことかな。いやまあ、嘘だしいいんだけど。


「皆のところまで送ろう。夜の森は危ないからな」

「そうだな。私はルッタ様の方を」

「頼んだぞ」


 俺に同行してくれる黒髪の方と、ルッタの方を気にかけてるもう一人に別れることになったようだ。よし、助かった。

 二人いっぺんだとさすがに大変だけど、一人だけなら何とかなる。何しろ外見上、俺はか弱きロリっ子獣人だからな。


「さて。道端で野宿をしていた、僧侶一行でいいのかな?」

「あ、はい。ファルン様について修行の旅してます。コータっていいます」

「コータ、か。私はシャングリア、という」

「シャングリア様、ですか」


 ……何か、サングリアスと名前似てるのは気のせいかな。妹か何かでも、特におかしくはないけどさ。

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