147.シャチお婆さん周りの事情
みんなさっぱりして浴場を出る。お婆さんも、ひょこひょことあとを付いてきた。……女性ばっかりなのは分かるけど、ちょっとは隠そうよ。
で、ロッカーから服出して着ているとき、不意に外からの入口の方で声が上がった。
「お祖母ちゃん!」
「母さん、やっぱりここか」
「おんや。ティッカ、デリリア、来てたのかい」
お婆さんの……娘と孫か。こちらを覗き込んでいる黒髪ウェーブのむちむち系美人さんと、同じ質の髪をポニーテールにまとめた俺の外見よりもうちょっと下っぽい女の子だ。
どちらも露出度多め、というかお母さんはビキニスタイル、娘さんは袖のないワンピース。魚人とか海棲獣人て、少なくともそれなりの年齢までは露出度高いのが基本なのかね。レイダも大概すごいけど。
「ええ。久しぶりに会いたくなっちゃって。ね、ティッカ」
「うん」
娘さんがティッカ、てことはお母さんはデリリアか。そういえばお婆さん、名前聞いてないな。聞く必要もなかったからだけど。
「コータちゃま、コーヒーぎゅうにゅうのみますかー」
そこへ、例によって空気を読まないミンミカの声が割り込んできた。この世界、地味にコーヒーあるんだよな。
暖かいところで栽培してたりするんだろうか、と思いつつ「あ、飲みますー」と答える。この身体になってから、ちょっぴり甘めのもののほうが好みになってるらしい。ま、美味けりゃいいんだけど。
「ミンミカ、ファルン、全員分頼む」
「わっかりましたあ」
「コーヒー牛乳、四つお願いします」
シーラも飲みたかったようで、番台そばにいる二人に頼んでくれた。ちなみに陶器のコップに入れてくれるので、前の世界みたいに腰に手を当てて一気飲み、なんてのはできなかったりする。いや、無理すりゃできるか。
と、娘さんだからティッカ、がとことこやってきた。何ジロジロ見てんだよ。
「おねえちゃん、じゅうじんさん?」
「ん? そうだよ」
「そっかあ」
……もしかして、しっぽ見てたか? ちゃんと乾かして、それなりにふさふさふわふわになってるからな……ああ、コーヒー牛乳で無意識のうちに振ってたか。そりゃ見るわ、うん。
「あなたも、シャチさんなら獣人さんだよね」
「でもね、ティッカたちはふさふさしてないから」
「そっか」
海棲獣人でも、例えばラッコとかなら毛皮なんだけど、シャチだからなあ。
もしかしてこの子、ふさふさもふもふに憧れてたりするのかな。
ちょっとくらいならいっか。
「……さわる?」
「いいの?」
「いいよー」
え、なに、このどきどきからきらきらに変わる幼女の表情。おう、可愛すぎるぜ。いくらでもしっぽ触りたまえ、減るもんじゃねえし。
おっと、俺も一応ロリっ子なんだよな、外見は。変な顔してないよな、大丈夫だよな。
さすがにこんな幼女に手を出すほど腐ってはいないぞ、アルニムア・マーダは!
「わあい」
あ、もふっと顔埋められた。あれか、猫の腹にもふっと顔埋めてすーはーとか、ああいう感じか。
今風呂入ったばっかりだから、さぞやいい香りだろう。存分に味わいたまえ、うん。




