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33 夏季休暇明けの学院生活

夏季休暇明けは学院が騒がしい。


教室内では変化があった。第二王子アルファード様とシャーリスの婚約だ。先日のカフェでの後、王宮で正式に発表された。

それを受けて、令息令嬢、シャーリスを囲んでいる。私達も話したいのに。

「凄い人気ね」

「おこぼれを貰おうと親子揃って取り入る為、必死なのでしょう」

毒を吐くローラだが、声が可愛い為、きつい言葉と感じない。夜会でもシャーリスのご両親に取り入ろうとする者が、次から次へと湧いたらしい。母様が下品な方々だったと教えてくれた。

こういう状態になるから王宮での教育になったのかしら。

今日も午前の授業だけで王妃教育へ行くらしく、またしばらく会えないと別れ際に言われ、

「淋しいね。頑張って」

と言って別れた。


二人で食べるつもりだったカフェでの昼ご飯は、偶然一緒になったツァーリ公爵のマッケンナ様とエイデル様とともに取ることになった。

なんとなく罪悪感が心にあるのを誤魔化し、

「エイデル様、生徒会役員おめでとうございます」

と伝える。

「いや、先日領地で会った時にも伝えればよかったのにセオドリア殿と領地の特産品について意見交換していたら、すぐに時間になってしまった。改めて、交流会の研究発表手伝ってくれてありがとう。おかげで賞を取れたよ」

「とんでもないです、こちらこそ勉強させて頂きました」

ふっふっふっと上品に笑うマッケンナ様は、私達の様子が可笑しいようだ。

「どうなさったのですか?」

と聞くと

「エイデルが、仕事を任せるなんて。大人になったなぁと思いまして。この子、優秀でしょ。他人に頼るよりも自分でやった方がいいと考える子ですから」

「やめてください。姉様」

「何故シャルに頼みましたの?板書を見たと仰ってましたが」

その続きがあるのではとローラも興味を示す。

なんだか自分の話になるのはくすぐったい。

「つまらない授業でも楽しそうに受けているからかな。チラッと横見たら、綺麗にまとめて板書しているし、なんか新鮮だった。…いや、驚いたな」

「私そんな風に授業受けてましたか?」

「楽しいんじゃないの?」

「確かに楽しいですけど」

「仲いいのね」

マッケンナ様は微笑みながら話し続ける。

「アイスクリームもあんなに美味しそうに食べてくれるシャルロッテ様、私は好きですよ」

ローラもいたずらを仕掛ける子のように

「ストンズ領の市でお財布を落としてしまって帰り道ツァーリ領でアイスクリーム食べれないと嘆くぐらいお好きですものね」

「もう、夏季休暇の楽しみなのだから仕方ないじゃない」

「酪農はツァーリ領の特産にしたいのですが、なかなか輸送手段が難しくて、暑い季節は、腐りも早いので困ってます」

「どこでも濃厚なミルクアイスが食べれたら、考えるだけで幸せですね」

ふふふと笑い、マッケンナ様は私達二人を茶会に誘い、是非アイスクリームを食べてね、と言って別れた。


エイデル様は私達に

「お二人方、ありがとうございます。姉様の学院への復学は久しぶりで、腫れ物を扱うように遠巻きにされていまして。姉様ご自身、緊張して学院で過ごしているので、笑ってくれてよかった」

本当にエイデル様は心配なさっていたのだろう、ホッと一息、呼吸を吐いて私達と別れた。

私達1年生は、去年の件は、噂に聞く程にしか知らない。しかし、上の学年は何があったか、見て知っている。隣国だの魅了の薬物だの相手側に何があっても、関係者として見る目が厳しいのだと知る。


ローレンス殿下は大丈夫なのだろうか?図書室でお会いした時も、どんなふうに学院を過ごしていたのか。考えると淋しく切ない。


逢いたいなぁと思う。


時間は関係なしに進んでいく。

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