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15 スタンレー伯爵夫人のお茶会

ノーラ姉様の婚約者がいるスタンレー伯爵領は王都からは馬車で3日はかかる。ストンズ領はそのお隣。領地に戻る時は、ゆったりの行程で3日、強行で2日。大きな川向こうの領地はたまに水害が出るが平野が続く。スタンレー領は山があり、果物の出荷が多い。


姉様がお嫁に行けばなかなか会えないのだと実感する。


今日スタンレー伯爵夫人からお呼ばれいただいた茶会は別宅。王都の端に湖がある別荘地と呼ばれる閑静な場所。空気は幾分冷たく感じる。雨が降り出しそうな天気なので室内のお茶会だ。


玄関前で伯爵夫人とノーラ姉様の婚約者、レオナルド義兄様が迎えてくれた。姉様、義兄レオレオコンビなのだ。

「ノーラ、今日も素敵だね」

「ありがとうレオ」

なんて横でキャッキャしてる。幸せそうで何より。

母様と伯爵夫人は季節の挨拶などしているし、こんな時ぼっち感が出る。タイミングよく執事が手を差し出して茶会場所へエスコートしてくれる。さすが執事。


彩り豊かなお茶菓子が目に入る。果物が豊富なスタンレー家ならではのラインナップに目を輝かせる。

「お気に召したものはありましたか?シャル嬢」

なんておどけて声をかけるレオ義兄様。

「もう、菓子達に目が夢中よ、シャル。恥ずかしいわよ、まだまだ子供ね」

とノーラ姉様にまで。

「学院はどうだい」

なんて話題を変えて振ってくれる義兄様に感謝しつつ

「楽しい時間を過ごしております」

と淑女の顔で言ってみたが、義兄様はクツクツ笑っていた。


席に座って美味しい紅茶をいただく。いざ菓子を取りに行こう。目をつけているのがあるのだ。何種類か菓子をのせ席に戻ると伯爵夫人も同じテーブルに席についていた。

「大きくなりましたね、シャル嬢。綺麗になってますね。女の子はこの頃が一番変わるわね」

と母様と話す。褒められるのは嬉しい。母様は最近の私のことを話し、くびれの事まで恥ずかしい。

「この頃から女性らしい身体になるものよ、ご安心なさいよ」

とにこやかに言う。今年14才になる。確かにこれから女性としての成長期だ。


お茶と菓子を堪能していると不穏な話題が耳に入る。

「夏に隣国の王女二人が留学してくるそうよ。第二王子の婚約者をどちらかにしたいみたいね」

「この時期ならきっとそうでしょうね。ますます第二王子が王太子に近づいているわね」

隣国の王女って、シャーリスはどうなっちゃうのと顔にありありと出している私に母様は溜息とともに

「これも貴族の務め。婚約者候補というのはあくまで候補。決定はより国益と政略あらゆる観点からみた利害が重視されるでしょう」

さらりと強く言う母様は続けて

「シャーリス様は何か言っていたかしら?」

と私の顔を見て言う。

「今の状況がお辛そうでした」

と答えると

「お友達として寄り添ってあげなさい、政略に巻き込まれているのはお可哀想だけど、長年候補とされていたのはこんな事もあるからのようね」

と言うとスタンレー伯爵夫人も一拍置いて

「我が国は、第一王子に国内の公爵令嬢との婚約、第二王子は隣国に婿に出すことも以前から考えていたんじゃないかしら。隣国としては、二人の王女を第二王子が気にいった方を妃として嫁がせる。隣国の方はこちらの方が利が出るでしょ。まるで前から計画していたかのタイミングよね」

「全く最近は派閥のような割り振るお茶会が増えているしギスギスしてるわ。去年からずっと物価が高くなっているでしょう。そんな中だから領民も燻っているわ。各地治安も悪くなっているもの」


世間話からこの国の政略、民のことまで話題になっている。深いわお母様と思っていると曇り空の外では仲良く話しているレオレオコンビの幸せそうな顔を見て気が抜ける。いつもは綺麗なキリッとした姉様だけど、義兄様とご一緒にいる姿はとても可愛い。幼なじみの二人がいつまでも笑っていられる年月は素敵だ。

ずっと姉様にはあの笑顔でいて欲しいと強く思う。


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