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僕だけに聞こえる彼女達の本音がデレデレすぎてヤバい!  作者: 寝坊助
デレ2~第2の妹登場!? クラスメートのお嬢様もヤバい!~
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33「遅いと思って見にきてみれば……。誰よ、その子」

 まあ、忘れていたわけではない。

 というよりも、これは僕が立ち向かわねばならない大事な問題だ。

 いや、出来れば後回しにしておきたかったのは事実だが。アリサさんの一件もあるし、あすかや母親のことだって、唐突すぎてまだ現実味が湧いていないというのが正直な気持ちだ。


 とはいえ、いつかこういう時が来ることはわかっていた。ほみかが、僕の本当の妹ではないこと。本当の妹は別にいること。それがバレてしまうことくらい。永遠に隠し通せるなんて、考えてはいなかったさ。


「突然の訪問、真に申し訳ありません」


 僕の心情を察したのか、あすかは気遣わしげに声をかけた。


「来訪の前にはご連絡をするのが礼儀なのですが、何分重大な話でございますので。誰がいつ聞き耳を立てているかも分からない昨今、こうした突然の訪問を何卒お許しくださいませ」


「ああ、いいよ別に。ちょっとビックリしただけだから。歓迎するよ」


「……! さようでございますか! 身に余るお言葉。わたくしには勿体なく存じます」


(お兄様に不快な思いをさせてしまったこと、まことに申し訳なく思います。こうなったらあすかは、切腹をして責任を取ります)


「一応言っておくけど、怒ってないからね僕は」


 ていうか、こんな事でいちいち腹を切っていたら、内臓がいくつあっても足りないぞ。


「そ、そうでございますか。流石はお兄様です。正直なところ、先日はご迷惑をおかけしましたので、お兄様がお怒りなのではないかと……」


「だから別にいいって。体調が悪くて倒れることなんて、誰にでもあることなんだから。別にあすかが悪いわけじゃないさ」


「ああ……。お優しいお言葉、ありがとうございます。そのような慈愛に満ちたお兄様を持って、あすかは幸せにございます」


 うーん、相変わらず話しづらい娘だ。

 というより、真面目すぎてこっちが尻込みしてしまう。


「ところで、あすか。何か用があって来たんじゃないの?」


「! これは、わたくしとしたことが。大変申し訳ありません!」


「いやいや。全然いいんだけど。大事な話っていうからさ。ちょっと気になって」


 まあ、まあね。

 全然よくはない。ちょっとどころか、メチャクチャ気になる。


「それでは、結論から申し上げますと、お母様――雪ノ宮つばめより、是非一度当家に来て頂けないか? という話になりました。それ以上のことはわたくしも伺ってはおりません。申し訳ないのですが」


「いやー、聞いてないならしょうがないけど。今すぐ?」


「大変申し訳ありません」


「そうは言われてもねえ。今はほら、妹もいるし、お客さんも来てるんだよ。そっちにも都合はあるだろうけど、こっちにだって都合があるからさ」


「ごもっともです。しかし……」


「まあ、君たち雪ノ宮の人間にとっては大事なことかもしれないけどさ。今の僕は神奈月家の人間なんだ。あまり無理を言っちゃ……」


 ここまで言って、僕はハッとなった。

 あすかの表情が――今にも泣きだしそうだったからである。赤い目をしょぼしょぼさせて、必死に涙が流れ落ちるのを我慢している。これはズルい。そんな雨の日に捨てられた子犬みたいな目で見つめられたら、嫌とは言えないではないか――。


「お兄様は……あすかのこと、お嫌いですか……?」


「い、いや。そんなことはないよ」


「あすかは……この世にいないほうがいいですか……?」


「だから違うって! ああ、もう、分かったよ。行けばいいんだろう行けば。もうどこへでも行くから、好きな場所に連れてってくれよ!」


「ほ……本当ですか? ありがとうございます、お兄様!」


 僕の言葉を聞いて、あすかは宝くじの一等でも当たったかのように満面の笑顔を見せる。目はまだ赤い。どうやら、本当に泣きそうだったらしい。ということは、今はことりの人格ではなくあすか本人で間違いはなさそうだ。


「それでは、早速ですが参りましょう」


 僕の気が変わると困るからか、あすかは僕の腕を引っ張って言った。


「あっ、ちょっと待って」


「どうしたのですか? まさか、やっぱり来て頂けないのでは……」


「いやいや。違う違う」


 僕は首を横に振って、


「さっき言ったでしょ。今は妹とついでに来客もきてるって。それに……ほみかには、まだ君のことは話していないんだ。本当のことを話すとショックを受けるし、とりあえずは親戚の子として説明するから少し待っててよ」


「そ……そうですね。わたくしとしたことが、とんだご無礼を。お許しくださいお兄様」


 泣きそうな顔をきりりと引き締めて、あすかはこう主張した。


「それでは、こういたしましょう。あすかは、お兄様の祖父の兄の娘のいとこの叔父の孫であると。要するに、四親等以上離れた遠い親族ということにするのです。それならば、わたくしの顔に見覚えがなくても納得は出来るでしょう」


「ああ、まあ、それでいいよ。とにかく、僕とあすかの関係は隠すんだ。いいね?」


 僕があすかに向かって人差し指を立てて「シーッ」とやった時、


「誰に何を隠すの?」


 後ろから声をかけられた。


「遅いと思って見にきてみれば……。誰よ、その子」


(え? え? 誰誰? メチャクチャ可愛い子じゃん! 何何、お兄ちゃん、浮気はダメだよ浮気は!)


 ああ、ついに来るべき時がきてしまったか。

 まあ、そうだよね。

 ここで顔も合わせずに済ませるなんて、ご都合展開はないよね。


「ああ、紹介するよ、ほみか。この子はね……」


 僕は振り向くなり、ほみかに向かって説明を始めた。

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