23「……はい。なるべく早く戻ってきてくださいね」
そんなわけで、遅めの昼食を食べ終えて。
ようやく《ブーさんのバニーバント 》の順番が回ってきた。一時間待ちではあったが、午前の時間帯にしては早い方なのだろう。ブーさんの絵が描かれた建物の中に入ると、そこは木々の生い茂る森で、その中を、ウサギさん型の乗り物に乗って進んでいく。
途中で虎やフクロウなどの、おなじみのキャラクターが次々と現れ、僕らは声を上げて楽しんだ。
「……映画の内容を忠実に再現していますね。出てくるキャラクター達も、どこから飛び出すか分からないですし。まあ、そこそこ楽しめるのではないでしょうか?」
(……ああ、ブーさん可愛いです。お腹たぷたぷです)
アリサさんは建前だとクールに批評しつつ、心の中では絶賛していた。
僕にとっても百点満点の面白さで、つい童心に戻ってはしゃいでしまう。
「……思ったよりも、予想がつかない動きをするんですね。これはこれで迫力があると思います」
(……右に行ったり左に行ったり。凄く刺激的です)
そう。回転するライドはどこに行くのか分からず、ピョンピョン跳ね上がったりと、奇怪な動きをした。これまた、無我夢中で楽しめる面白さだった。
「……あ、あれ。ブーさんの大砲じゃないですか?」
(……滅多に間近で見れないんですよね。ラッキーです)
と言って、アリサさんが指差した先を見ると、確かに壁際には大砲がセットされている。そして、大砲が僕らの乗っているライドに照準を向けた。
人形が、巨大なマッチを導火線に近づけると、点火された大砲からはパン! と空気砲が発射されたのだった。いわゆる《ブーさんの空気砲》というやつだ。
「いやあ、楽しいねえアリサさん」
ブーさんがトウモロコシを食べる最後の部屋で、僕はアリサさんに向けて言った。
「久しぶりにいいガス抜きになったよ。それもこれも、全部アリサさんのおかげだ」
「……そうですか。それはよかったです。でも……」
部屋から出て、ポッドから降りたところで、アリサさんは答えた。
「……あの、神奈月さん。実は大事なお話があるんですけど、聞いていただけないでしょうか……?」
「ん? いいよ。なに?」
「……それが……」
なぜかアリサさんは悄然としてうつむいた。
それきり、何も言う気配はない。
うーむ、一体どうしたんだろうか?
どうにも、今日のアリサさんは様子がおかしい。楽しいデートのはずなのに、沈み込んでしまっている。何か励ましの言葉をかけてあげたほうがいいんだろうか。
「あの、アリサさん……」
と、そこまで言いかけた時。
ポケットから電子音が聞こえた。
携帯電話の着信音である。
「あ……誰だろう。アリサさん。ちょっと待ってて」
「……はい。なるべく早く戻ってきてくださいね」
「うん。ごめんね!」
僕はアリサさんにそう言うと、携帯を持ったまま遊園地横にある客席まで走った。ポケットから携帯を取り出す。そして、画面表示を見てギョッとした。
何と、ほみかからの着信だったのである。




