12「わたしの命にかえても透ちゃんを守る」
「り、りおん……」
「透ちゃん、大丈夫? どこも怪我はない?」
包丁を手に持ち、ことりを睨みつけながらりおんは、僕に言った。
「あ、ああ。僕は大丈夫だけど、それより……」
「お姉ちゃん、だぁれ? お兄様と、どんな関係?」
僕の言葉を遮るように、ことりは短刀を構えると、愉快そうにりおんに尋ねた。
この状況でどうして笑顔を浮かべられるんだろうか。
やはり、今の彼女は異常だ。
「わたしは一ノ瀬りおん。透ちゃんの妻だよ」
いや、違うし。
「ふーん。お兄様ったら。ぃつの間にかそんなことになってたんだぁ」
いやいや、お前も信じるなよ。
「そうだよ。透ちゃんはわたしのものだから、勝手に手出ししないで」
りおんは、包丁の切っ先をことりの顔に向けると、そう言った。それ以上近づくと攻撃を開始する、というメッセージらしい。
僕は二人を止めようとしたが、立ち上がることが出来なかった。
どうやら受身を取ることに失敗したらしく、内臓も痛めてるらしい。
地を這うことならかろうじて出来るが、それでは二人を止められないだろう。
僕は動くことを諦め、壁によりかかって、呼吸が落ち着くのを待つことにした。
ことりは、短刀を体の前に構え、いつでも切りかかれる状態を維持した。
「お兄様はね、ことりが殺すんだよ。邪魔しないで」
「そんなこと、許すと思う?」
「じゃあ、お姉ちゃんから殺すよ? それでもぃぃの?」
「わたしの命にかえても透ちゃんを守る」
ことりの宣戦布告を、りおんは堂々とした振る舞いで返した。
どうやら、どちらも一歩も引く気はないらしい。
「……じゃぁ、しょうがないね。死んでね」
「きなさい!」
ことりはりおんの声に答えるように、短刀を構えて飛び掛った。




