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僕だけに聞こえる彼女達の本音がデレデレすぎてヤバい!  作者: 寝坊助
デレ2~第2の妹登場!? クラスメートのお嬢様もヤバい!~
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5「――代わりに、ご褒美をあげる」

 信賞必罰方式、という言葉を知っているだろうか。

 功ある者は賞し、罪ある者は罰する。

 僕は今、この方式で勉強している――といっても、賞もなければ罰もないが。

 端的に言うと、問題に正解すると、りおんから頭を撫で撫でされる。

 間違うと、りおんからハグされる。

 これのどこが信賞必罰方式なのだろうか。全くもって謎だ。


「どうしたの透ちゃん。何だかすごく疲れた顔してるけど」


 りおんは、心配そうに僕の顔をのぞき込みながら言った。

 相変わらず、後ろから抱きしめ、僕の頭に胸を乗せたまま。


「ダメだよ。入院してた分の遅れを取り戻さないと。わたしたち来年三年生になるんだから。その時になって後悔しても遅いんだよ? それに、ほみかちゃんと遊びにいく元気はあるのに、わたしと勉強する元気はないなんて、あんまりじゃない?」


「いや、まあ、そう言われると弱いんだけど……」


 よく言うよ。勉強なんて口実で、自分の欲求不満を解消してるだけのくせに。

 

 なんてことは、口が裂けても言えなかった。何せりおんは、“ヤンデレ病”という奇病にかかっているのだ。ほみかとの一件以来、病状は良くなってきているけど、それでも安心はできない。


 ここの所、ほみかにかまいっぱなしで、りおんの事をないがしろにしてた部分があるかもしれない。それで嫉妬心に火がついてこんな行為をしてきたのだろう。


「りおん。君を放ってほみかと夏祭りに行ったことは謝る。だからもう、勘弁してくれないか?」


「あら~? 何を勘弁してほしいのかな~? ちゃんと喋ってくれないと、わたし分かんないなあ~?」


 くすくすと嘲るように笑って、りおんはまた胸を揺らす。たぶん他の人が見たら、勉強じゃなくて何かのプレイの一環にしか見えないんだろうな。


「うふふ。こうしてわたしの胸に詰まってる神秘のバスト・パワーを、透ちゃんの頭に注入してあげるよ」


「そんなもの注入されたら、果てしなく馬鹿になりそうだね」


「むう。なによ。透ちゃんの意地悪」


「りおん。君の気持ちは分かってるつもりだ。夏祭りを一緒にいってあげられなくて、申し訳なく思ってる。でもね、仕方ないじゃないか。いつもそばにいてくれたりおんと違って、ほみかは七年ぶりにここへ戻ってきたんだ」


 僕は問題用紙に回答を書き込みながら言った。


「でもね、もしほみかが今も父さんと一緒の家で暮らしてたら……。僕は間違いなくりおん、君を誘ってたよ。親友として、幼馴染として。りおんはいつでも僕のことを支えてくれた。決して、軽んじる気持ちはなかったことは信じてほしい」


「…………ふえ」


 ここまで言うと、りおんが固まった。

 心なしか、顔も真っ赤になっている。

 もしかしたらまた怒らせてしまったのだろうかと、僕はりおんに話しかける。


「どうしたの? 僕、何かおかしなこと言った?」


「……! ううん! なんでもない! なんでもないよ!」


(言った! 言ったよ! いつも透ちゃんっていきなりなんだから! そういう不意打ちをされたら、ドキッとするに決まってるでしょう!? でも正確に言えば、親友でも幼馴染でもなくて、将来のお嫁さんなんだけどね。そのへんの意識の差は、少しずつ調教して埋めていけばいいよね? うふふ、うふふ……)


 あれれー? おっかしいぞー?

 心の声が、後半かなり物騒になってた。――ていうか、調教って言葉が聞こえた気がするんだけど。


「まあ、いいよ。そういうことなら、許しあげるよ。透ちゃん」


 りおんはそう言うと僕を抱きしめていた腕を放しながら、僕の前に向き直ると、


「――代わりに、ご褒美をあげる」


 僕の頭を撫でた。

 気がつくと、僕が書き込んだプリントの解答欄には、全て○がついていた。なるほど、問題を正解したからご褒美というわけか。

 りおんはまるで子供をあやすように――優しく僕の頭を撫でた。ヤバい、何だか気持ちがいい。まるで揺りかごに揺らされてるような安心感がある。

 

 僕はゆっくりと目を閉じた。

 すると、りおんの心の声が聞こえてくる。


(はあ、ふっふぁあああ……。か、可愛い。やっぱり……されるがままになってる透ちゃん、すごく可愛いよ。あっあっ、もうわたし――透ちゃんを薬漬けにして監禁してずっと一緒に過ごしたい)


 ……僕は目を開けた。

 そして、りおんの手をバシン、とはねのけた。


「ふえ? な、なに? いきなりなにするの?」


「ええいうるさい。今僕のことを監禁して薬漬けにしようと考えてただろ。ちゃんと分かってるんだからな?」


「ええっ? なんで分かったの? ――じゃない! そんなこと考えてないよ! だから、もっと頭撫でさせてよ!」


「お断りだよ。大体、集中力がどうのと偉そうに言ってたけど、一番集中出来てないのは君じゃないか。分からないところは一通り教えてもらったし、後は一人で勉強させてもらうよ」


 あーもー。

 一瞬でも、りおんのことを可愛いと思った自分が馬鹿みたいだ。

 ヤンデレ病っていうのはあれだな。放っておいたら大変なことになるし、かまったらかまったらで面倒なことになる、困った病気なんだな。


 近いうちにりおんのヤンデレ病を治す訓練もしなきゃな、それも早急に。


 僕は、尚も頭を撫でようとするりおんの手をかわしつつ、そう思うのだった。

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