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僕だけに聞こえる彼女達の本音がデレデレすぎてヤバい!  作者: 寝坊助
デレ1~妹と幼馴染のバトルがヤバい!~
43/217

43「そうだよ。僕には――人の心が読めるんだ」

 放課後になり、僕は帰路についていた。

 茜色した空は地平線の先まで続いている。日が傾きかけ、トマト色した朱色から薄い紫に変わろうとしていた。

 もうほみかは帰ってる頃だろう。僕はそう考えながら、鍵を開けて家に入った。


「やあ。ただいま、ほみか」


 予想通り、ほみかは先に帰っていた。制服姿のまま、リビングでテレビを眺めていた。ほみかは僕を見ると、スッと立ち上がった。


「……バカ兄貴。聞きたいことがあるの」


 そう言うと、真剣な顔で僕に向き直った。覚悟を決めたような、少し怯えも混じった目で、僕を見つめている。


「なんだよ、あらたまって。それより母さんは?」


 見ると、いつもならもう帰ってきてるはずの母さんがいない。

 ほみかは、ブルブルと首を横に振った。


「今日は、残業で遅くなるんだって」


「へえ、そうなんだ。OLも大変だね」

 

 そう言いながらも、僕はホッとしていた。

 できれば母さんには、聞かれたくない。


「最近増えてるらしいね。ブラック企業の残業問題。まあ、母さんの会社はたまにしか無いからまだいいんだけどさ」


「そうね。大変ね」


「本当に、もう大問題だと思うよ。母さんは母子家庭だからまだ見逃されてる方だけど。過労死してる人も少なからずいるからね。このままだと……」


「バカ兄貴」


 僕がそこまで言うと、ほみかは僕の言葉を遮った。


「な、なに?」


 僕は、ほみかの顔を見た。ほみかはうつむいている。僕にはそれが、壊れたおもちゃを見せにくる子供のように見えた。


「……昔っから、だったよね。バカ兄貴はいつも、あたしの言いたいことをわかってくれた。空気が読めるっていうのかな? ほんと、子供のころから生意気なくらい気が利いてたよね」


 小さな声で、ほみかは淡々と語った。


「本当に、漫画みたいな、下らない話なんだ。だから、違うなら違うって、笑い飛ばしてほしいんだけど……」


 ほみかは、顔を上げた。


「ねえ、答えて、兄貴。兄貴には、人の心が読めるの!?」


「――!」


 ほみかは、真っ直ぐに僕を見つめている。

 僕は前髪をかきわけ、額の傷に触れた。

 かつて、ほみかを守るためについた、僕の勲章だ。


 ――そう。これは、隠すようなことじゃないんだ……。


「あ、兄貴……?」


「やっぱり、かなわないな。ほみかには」


 僕はフッ……と笑い、そしてほみかに向き直って、キッパリと言った。


「そうだよ。僕には――僕には、人の心が読めるんだ」

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