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僕だけに聞こえる彼女達の本音がデレデレすぎてヤバい!  作者: 寝坊助
デレ1~妹と幼馴染のバトルがヤバい!~
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39「ほみかは、僕に疑問を持っている」

 僕はりおんを連れて家に帰った。

 病院で巻いてもらった包帯の上に、ネットを被せている。しかし、怪我自体は大したことなかったらしい。脳挫傷や、くも膜下出血などの心配もないそうだ。


 ほみかは、ベッドの上に座っていた。「全然大丈夫だから」と息巻いてたそうだが、母さんから寝てるよう強制されたらしい。ピンクのパジャマを着て、りおんの訪問を迎えてくれた。


「りお姉がお見舞いにきてくれるなんて。なんだか嬉しいな!」


 ほみかは、無邪気な笑顔でそう言った。


「うん……。ごめんね、ほみかちゃん。急に押しかけちゃって」


 りおんは対照的に、血の気がない病人のような顔だった。


「むしろ、こっちのほうこそゴメン。心配かけちゃったね」


「……! う、ううん。わたし、こ、そ」


 りおんは震えながら、左手で右手をギュッと握りしめていた。それを見ながら僕は、りおんの心中を察した。おそらく、自分のしたことを後悔しているのだろう。そして、なおも明るく振舞うほみかを見て、責任を感じているんだろう。


「ほみか。今日はね。僕とりおんは、大事な話があってきたんだ」


 そう言うと、ほみかは緊張した面持ちで僕を見た。


「えっ。な、なによ、バカ兄貴……。あらたまっちゃって。言いたいことがあるなら、さっさと言いなさいよ」


(えっ! えっ! なに!? もしかして、お兄ちゃんとりお姉つき合うの!? そういえば、約束の三日目って今日だよね!? だめだめだめ! そんなの絶対だめなんだからあああああああ!)


 ほみかは心の中で見当はずれな妄想をしている。


「違うんだよ。実はね……」


 僕は、チラリとりおんを見た。どうも僕からは言いにくい。

 りおんは、僕の視線に気づいたようだ。まだ迷いはあったようだが、やがて意を決したように口を開いた。


「わたしから話すわ。ほみかちゃん。聞いてほしいの」


「う、うん……」

 

 そしてりおんは、全てを語った。

 ほみかのお弁当にお茶をかけたことがわざとだったこと。ほみかの靴の中に砂を入れたこと。階段から突き飛ばしたことも。まるで懺悔のように、自分が犯した罪を告白した。ほみかは辛そうな顔をしていたが、そんなに驚いてる風でもなかった。やはり、りおんのしたことだと見当はついてたらしい。


「……と、いうことなの。本当にごめんなさい!」


 りおんは、懺悔を終えると頭を深々と下げた。僕はチラリとほみかを見たが、怒ってるような悲しんでるような、よくわからない表情だった。共感性症候群を使えば、ほみかの心が読めるが。僕はやめておいた。それは、彼女への冒涜だと思ったのだ。


 ふいに、ほみかが口を開いた。


「りお姉……ひとつだけ聞かせて。りお姉は、今でもバカ兄貴のこと好きなの?」


「……! それ、は……」


 りおんは言葉を詰まらせた。本音を言うなら、まだ僕への思いを捨てきれてないのだろう。簡単に諦められるような思いなら、あんなことはしなかったはずだ。


「答えて。バカ兄貴のこと、まだ好き?」


「ううん。もう……終わったことだから」


「本当に? 正直に答えて。嘘ついてたってすぐわかんだからね。嘘ついたら一生許さないから。もう一度だけ聞くよ。バカ兄貴のこと、好き?」


「わたし――」


 りおんは慌てて答えた。


「やっぱり透ちゃんは、わたしなんかに相応しくない人だなって思う。わたしなんて全然子供だし、透ちゃんには、もっと大人な人のほうがいいと思うし……」


 りおんは、あちこちに目を泳がせ、手をバタバタさせて言葉を紡いだ。まるで、オモチャを壊した子供が、大人にむかって言い訳をしているように。僕には、すぐ嘘だと気づいた。りおんは、ほみかのことを気遣って嘘をついていると。


 しかし、僕は何も言わなかった。りおんにはりおんなりの思いがあるし、ほみかには、ほみかなりの考えがある。僕が口を挟んで、余計な邪魔をしたくなかった。


 りおんは、なおも喋り続けた。


「……そうだよ。わたしにとって透ちゃんは、高嶺の花だったんだよ。もっと早くそれに気づけばよかったのにね。子供の頃からずっと一緒だったから、少し感覚が麻痺してたのかなあ? 透ちゃんにはほみかちゃんがいるし、わたしにだって……」


 りおんの言葉は辿々しく、しまいには途切れ途切れになっていた。


「……だから、ね。でも……」


 りおんは、その場に泣き崩れた。


「ごめんなさい……! わたし、透ちゃんのこと好き! 大好き! 愛してるの! 昔から! 今でも! いつだって! もう、透ちゃんしかいないの!」


 それが、りおんの本心だった。堰を切ったように、ボロボロと涙を流している。


「許して……。許して、ほみかちゃん」


 ほみかは、ベッドから立ち上がった。そのまま、りおんの正面まで歩く。手を、強く握りしめているのがわかる。

 まさか――?


 僕が一歩踏み出すよりも前に、ほみかは右手を高く上げた。


 そして――――


「許すよ……りお姉」


 ほみかはりおんを、力強く抱きしめた。


「りお姉が、バカ兄貴のこと好きじゃないなら、引っ叩いてたけど。こんなバカな兄貴のこと、好きになってくれたんだもん。だったら、許すよ」


 ほみかは、りおんの体を抱きしめながら言った。今、やっとわかった気がする。ほみかがあえて、りおんの苛めを黙って耐えていた理由が。おそらく、ほみかはりおんに後ろめたさを感じていたのだろう。りおんの気持ちに気づいてから、僕と一緒にいる自分に罪悪感をもっていたのではないだろうか。


「でも……いいの? こんなわたしのこと……」


 子供のように泣きじゃくりながら、りおんが聞いた。


「いいって言ってるじゃん……」


 ほみかも、涙を流しながら答えた。ようやく戻れた。子供の頃のような、昔の幼馴染に。いや、最初から昔のままだったのだろう。ただ、仲直りするきっかけが必要だっただけで。


 その後、しばらくわんわん泣き続け、ようやくほみかとりおんは和解することができた。謝り倒したりおんが帰った後、ほみかは僕に向かって得意げに言った。


「りお姉、嘘つく時は必ず手をバタバタさせんのよ。だから嘘だって気づいた」


「そうだったんだ。気がつかなったよ」


 心が読める以上、そんな癖見抜く必要ないしね。


「バカ兄貴って鈍感だもんね。それより――」


 ほみかは真剣な顔で僕に向き直った。

 そして、


「ほみか……?」


「……ううん。なんでもない。もう寝よ。こう見えても怪我人だし、あたし」


(……お兄ちゃん。どうして、りお姉が病気にかかってるって分かったの? それに、どうして包丁で刺されるってことも知ってたの? お兄ちゃん、どうして?)


 ほみかは首を横に振ると、ベッドの上に座った。プイッとあさってを向いて、もう僕の方を見ない。退散しろという意味なのだろう。僕はお休みのあいさつだけすると、ほみかの部屋を出て行った。


 パタン、とドアを閉める。と同時に僕は、先程ほみかから読み取った本心を思い起こした。


 ほみかは、僕に疑問を持っている。

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