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僕だけに聞こえる彼女達の本音がデレデレすぎてヤバい!  作者: 寝坊助
デレ1~妹と幼馴染のバトルがヤバい!~
25/217

25「あなたなんかに、何がわかるんですか?」

 なんて綺麗な人だろう。

 初めてその人を見た時、僕はそう思った。


 白輝アリサ。


 周囲の女子生徒と比べてみても、まるで別次元の美しさだった。透き通るような白い肌。雪のように真っ白な髪。燃えるような赤の瞳。全てが、圧倒的な麗しさだった。決して社交的ではないその寡黙さと、人形みたいに無表情な顔も、神秘的さを増す要因になっていたのかもしれない。


「白輝さん、だよね? 初めまして。神奈月透です。よろしく」

 

 二年生の始業式、僕は隣の席になったアリサさんにそう挨拶した。

 しかしアリサさんは、


「……よろしくお願いします」


 と言いながら、それきり僕と話さなくなってしまったのだった。

 その時は、二年生に進級したばかりで、緊張してるのかな? と思った。

 ――まあ、それが間違いだったとすぐ気づくわけだが。


 一時間目が終わった中休み。


「流石に二年生にもなると、勉強も難しくなってるねえ。白輝さん、ついていけてる?」


「……はい」


 四時間目が終わった中休み。


「白輝さんっていつも本読んでるよね。本好きなの?」


「……そうです」


 お昼休み。


「白輝さん。一緒にお弁当食べない?」


「……結構です」


 ……そう、全てがこんな感じなのだ。

 会話が続かないのなんの。

 次から次へと話しかけても、冷静に「処理」されてしまうのだ。


 この時、アリサさんの心の声は聞こえていなかった。これはつまり、愛情も憎悪も、どっちの気持ちもなかったということになる。だから僕は、アリサさんに話しかけることにした。別に嫌われてるわけではないのだから、遠慮することもない。それに、せっかくの高校生活なのだ。友達は多いほうがいいに決まってる。


 そして放課後。昇降口の前にて。


 ボクはアリサさんに、「一緒に帰らない?」と誘いをかけた。彼女の返事は、もちろんNOだった。


「神奈月さん――あまり、私に構わないでもらえますか?」


「え、どうして? 僕のこと嫌い?」


「そういうわけじゃないですけど……」


 一瞬だが、アリサさんは表情を曇らせて、


「……一人でいるほうが好きなんです。だから、放っておいてください」


 次の瞬間には、僕を静かに見つめながらアリサさんは言った。

 嘘だ、と僕は思った。今アリサさんの心は読めないが、アリサさんは嘘をついている。本当に一人でいたいなら言い淀んだりはしないし、そもそも最初から無視をしてるはずだ。


 ――ということで、僕は気にせずアリサさんに話しかけることにした。


「ねえ、白輝さん」


「……なんですか?」


「余計なお世話かもしれないけど、一人ってあんまりよくないと思うよ。誰かといるほうが、絶対楽しいし。白輝さんを見てると、なんだか凄く寂しそうに見えるんだ。もう少しみんなと打ち解けたほうが――」


「……本当に余計なお世話ですね」


 アリサさんは、僕の言葉をピシャリと打ち切った。


「私が寂しがってるなんて、一言でも言いましたか? あなたなんかに、何がわかるんですか? 迷惑です」


「なにがわかるって……なにも言わないんだから、わかるわけないよ」


「……」


 僕がそう言うと、アリサさんは肩を落とし俯いた。

 しばらくしてから顔を上げると、


「みんな、見てくるんです」


「え?」


 僕が聞き返すと、アリサさんはキッと僕をにらみつけて、


「私がアルビノだから……みんな見てくるんです。『気持ち悪い』とか『化け物』とか、ちょっと人と違うからっていい気になるなって……あなたもそうなんでしょう? 本音では、私のこと見下して、それで話しかけてきてるんでしょう?」


 僕はその時、アリサさんの本音を初めて聞いた気がした。そう、特別な存在の彼女を、奇異な目で見る生徒達は少なくない。財閥の令嬢、ハーフ、アルビノ。人間とは、自分と違う存在に嫉妬を抱く生き物なのだ。おそらく、アリサさんは僕なんかじゃ想像もつかないような辛い目にあってきたに違いない。でも、だからって一人のほうがいいなんて、間違ってる。


「えっとさ、白輝さん」


 僕は、言いたいことを言い終えたアリサさんに、声をかけた。


「さっきの話だけどさ、僕、君の気持ち、少しはわかるんだ」


「……わかってないです」


「わかるよ」


「……! だから、あなたに何が――」


「僕も、同じだから」


「……え?」


 僕がそう言うと、アリサさんは不意をつかれたように固まった。

 僕は続けた。


「僕も、人とはちょっと違うんだ。君とは別の意味で――だけどね。孤独の意味も知ってる。昔、両親が離婚して、大切な妹と離れ離れになってしまったから。すごく辛かったし、死ぬことを考えたこともある。だけど、死ななかった。母さんだっているし、幼馴染の女の子もいる。だから、言えるんだ。孤独はやめたほうがいいってね」


「…………」


 僕の言葉を、アリサさんは無表情に聞いていた。表情がないし心の声も聞こえないから、彼女が今どんな思いなのかはわからない。しばらく無言で見つめ合っていると、先にアリサさんのほうから口を開いた。


「……お節介の次はお説教ですか? いいご身分ですね」


 と、ハッキリとした拒絶の意味をこめて。


「白輝さん。僕はただ――」


「……あなたの話は、与太話として受け取っておきます。それでは、私はこれで」


 そう言って、アリサさんは走り去ってしまった。しかし僕には、立ち去る彼女の顔が、ひどく悲しげなもの見えてしょうがなかった。よく考えてみれば、それはアリサさんなりのSOSだったのかもしれない。

 

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