38「……透さん? 透さん!」
次の日。
僕はクラスメートであり親友の白輝アリサと水族館デートをしていた。
ここで『なぜ急に?』という疑問について説明しておきたい。
まずアリサには、これまで大変お世話になっている。
あすかの第二の人格、ことり。そのことりの素性を確かめるため、あすかの学校での様子を観察してくれと頼んだのだ。
すると僕の睨んだとおり、あすかは特定のクラスメートから苛めに合っていた。ことりは、あすかを苛めから守るために正当防衛を働いていたというわけだ。そして、ことりとの和解の場として、アリサはキャンプ場まで提供してくれた。それも天然温泉、充実したキッチン、フィットネスルーム完備の、かなり豪華なコテージまで用意してくれて。
これだけ骨を折ってくれて、何のお返しもなしというのは流石に悪い。
だから何かお礼をさせてくれないかとアリサに尋ねたところ、彼女は僕とデートしてほしいと言ってきた。(ちなみに心の声では結婚してほしいと熱望していた)。
ほみかの件は何も解決していないけど、つばめさんの所にいるならとりあえずは安心だし。アリサに恩返しするのも大事なことだ。
ちなみに、なぜ水族館なのかというと、アリサはアルビノであるがゆえに、日差しをまともに受けられないというのがあって、屋内ならば天候による影響は受けない。しかも僕と同じで魚好きだし、イルカショーなどのイベントも見たいし、デートコースとしても定番だ。よって、水族館をセレクトした次第。
そんなこんなで今日、待ち合わせした水族館に、アリサと二人で遊びに来ているんだけど……。
アリサからある疑惑をかけられ、僕はそのフォローに四苦八苦しているというのが、今の状況だ。
まあ、とりあえずご覧いただきたい。
「……透さん? 透さん!」
「ん……? ああ」
大声で呼ばれたので顔を上げると、ふくれっ面のアリサが僕を睨んでいた。
「ごめんごめん。ぼーっとしてた。いや、違うんだよ。アリサとのデートが久しぶりすぎて、何か緊張しちゃってさ」
「……白々しい嘘をつかないでください。今さら緊張するような間柄ですか? 私といるのがそんなにつまらないなら、帰ってもらってもいいんですよ?」
(……もし本当に帰ったら、私ここで死にますけど)
「いやいや、そんなことはないよ。アリサと次はどこを見にいこうか? って考えてたんだよ。それに――」
「……言い訳は聞きたくないです。それに、そんなこと考えてるような顔には見えませんでしたよ」
(……それっぽいことを言って誤魔化してないで、私のことを見てください)
「というより、あれなんだよ。今日のデートが楽しみすぎてさ……」
「……それはさっきも聞きました。というか、話をすり替えないでください」
(……明らかに様子がおかしいのに楽しみだったと言われても、説得力がありません。言うなら、ちゃんと抱き寄せてから言ってください)
ぷいっ、と拗ねてそっぽを向いてしまうアリサ。
内心は僕に構ってほしい気持ちでいっぱいだったが。
まあでも、これはアリサの言うとおりかな。元々今回のデートはアリサに日頃の感謝を伝えるためのものであり、尚且つこれほどの美少女とデートしてるのにボーッとしているとあっては、男として最低と言っていいだろう。
まあ、心の声を聞く限りでは怒ってるわけではなさそうだし、幸い雰囲気を作りやすい水族館をデート先に選んでいるから、とりあえずは何とかなるんじゃないかな?
そう思い、僕は行動に移した。




