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僕だけに聞こえる彼女達の本音がデレデレすぎてヤバい!  作者: 寝坊助
デレ4~決着!? 最後に誰が選ばれるのかがヤバい!~
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29「……ありがとう」

 鉛のように重くなった足を引きずるようにして、僕は家に帰った。空はかなり暗くなっていて、夜というよりは早朝といった方がいい時間帯だった。

 家に入るなり、あすかが出迎えてくれた。そのままリビングまで通される。


「お帰りなさいませ、お兄様、その……どうでしたか?」


「ただいま。駄目だったよ。ほみかは見つからなかった」


 僕は沈んだ声で答えた。一人で帰ってきた時点で答える必要は無かったかもしれないけど。あすかにはキチンと答える必要があると思った。

 僕の返事を聞いて、あすかは無言で目を瞑った。心の声が聞こえてこないので、何を考えてるかは分からないけど。ほみかのことを心配してるようだった。


 僕が走り回ってる間、あすかもずっと夜遅くまで起きていたそうだから。


「かしこまりました」


 あすかが言った。


「ひとまず、今日の捜索はもうお止めくださいませ。ほみかお姉さまのことは、明日考えましょう」


 あすかの言うとおりだった。僕は頷く。


「それでは何か、お夜食でもお作りいたしましょうか?」


「……いや、いい」


「夜通しずっと探し続けていたのでしょう? 軽く何か食べてはいかがですか?」


「いいんだ。お腹減ってないから」


 僕は静かに首を振った。

 空腹を感じていないというよりは、むしろ空腹だからこそ何も食べたくなかった。今もまだ、ほみかは一人寂しく街をさまよっているのだ。お腹も空かしてるかもしれない。僕だけご飯を食べることには、どうも気が引けた。


 そんな僕を見かねたように、あすかが優しく囁きかけた。


「ではせめて、熱いお茶でも淹れてきましょうか。少しお話したいこともございますし」


「……ありがとう」


 あすかの心遣いが嬉しい。無意識に感謝の言葉が出た。

 あすかはキッチンに向かうと、沸かしたお湯とお茶っ葉を急須に入れ、レモン汁と一緒に茶碗に入れた。

 戻ってきたあすかとテーブルに向かい合わせになり、お茶をすする。温かさとほのかな苦み、レモンを入れたことによる爽やかさが、優しく胸に染み渡った。


「……僕のせいだ」


 僕は呟いた。


「僕の能力のことも、ほみかにはずっと秘密にしていたんだ。ほみかには、隠し事ばっかりしてきた。見限られたってしょうがないんだ」


「お兄様……そのようなことは」


「でも、言えなかった。義父とうさんも死んでしまったばかりだし。ほみかにショックを出来るだけ与えたくなかった」


「お父様は、いつ頃亡くなられたのですか?」


「今年の三月」


「では、お兄様の判断は間違っておりませんわ。肉親が亡くなったばかりのほみかお姉さまに、そのような事実を打ち明けることこそ、無神経かと存じます」


「違うんだ」


 僕は、あすかのフォローを否定する。そして、茶碗の中でゆらゆらと揺れるお茶の波を見つめながら、


「僕はただ、ほみかに嫌われることが怖かっただけなんだ。自分のことしか考えてない、勝手な男なんだ。今言えばほみかを傷つけるとか、時期を考慮してとか、そんなのは全部言い訳だ。僕はどれだけ自惚うぬぼれていたんだ? ほみかからすれば、僕はほみかの気持ちを弄んでるだけだ。実際に僕は、虚栄心と自己保身の固まりだった。ほみかのことを本当に考えるなら、己が傷つくことなんて恐れずに、真実を話すべきだったんだ。

 でも僕は、それをしようとすらしなかった」


 淡々と話したつもりだったが、自分でも驚くぐらい声は暗く沈んでいた。あすかは終始無言で聞いていたが、僕の話が終わると口を開いた。


「お兄様。ご自分を責めないでくださいまし。真実を全て話すことこそが正解ではありませんわ。しかも、お兄様だけが一方的に非難を受けようだなどと。よいではないですか。いずれ、話さなくてはならないことだったのです。もっと早くに言えていたとしても、結果は変わらなかったことでしょう。正しいことなど、誰にも分りませんわ。例え家族相手でも。例え打算ずくであったとしても、お兄様がほみかお姉さまを思いやっての沈黙なのですから。お兄様は何も悪くありませんわ」


「良い悪いの問題じゃないさ。僕がほみかの心を深く傷つけた。それだけが問題なんだ」


「であれば、お姉さまを見つけ出せばよいのです。そして、それからゆっくりと話し合い、誤解を解いていくのです。それが、普通の兄妹なのではないですか?」


 優しく諭すあすかの口調に、少しではあるが叱咤の感情が混じっていた。


「お兄様。大丈夫です。ほみかお姉さまは、必ず見つかります。お母さまにご連絡をして、雪ノ宮家の力を総動員し、お姉さまの捜索に当たっております。捜索願を出す必要もありませんし、警察よりも捜査は滞りなく当たれるはずですわ」


「あすか……」


「ですから今は、ゆっくりお休みになってください。これでもしお兄様まで倒れてしまったら、ほみかお姉さまはさらに傷つきます。無論、このわたくしも。それは、お兄様の本意ではないでしょう? であるならば捜索は雪ノ宮の者に任せるとして、お兄様はもうグッスリと就寝されることですわ」


「……ありがとう」


 あすかの励ましの言葉に、僕は笑った。

 かなり、無理をした微笑みだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です! [一言] 日頃のネガティブシンキングはどこへやら、正常運転のあすかはめちゃめちゃ頼もしいですね。 果たして透君は彼女の期待に応えられるであらうか・・・。
2020/05/02 17:36 退会済み
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