9「分かった、結果を発表しよう」
「それで、どうなのよ? バカ兄貴!」
「一体、どちらが勝者なのですか? 教えてくださいまし、お兄様!」
ほみかの料理もあらかた平らげ、食後のお茶を飲んでいると、ほみか・あすかの両方が僕に向かって詰め寄った。
「どうなのよ。てか、あたしでしょ!? 完食してるし!」
「お待ちください。それならわたくしですわ! お兄様はわたくしの作ったお料理を、とても美味しそうに食べてくださいました!」
またもやキャットファイトを繰り広げる二人を、僕は「まあまあ」と両手で制し、
「その前に。二人にはお礼を言わせてくれ。ほみか、あすか。二人とも、僕のために一生懸命、手間暇をかけた料理を作ってくれて、本当にありがとう。料理っていうのは、作った人の気持ちが反映されるっていうけど、僕には二人の愛情が思いきり伝わってきたよ」
「は、はあ? な、何よ急に。真顔で恥ずかしいこと言わないでよね」
(にゃにいいいぃぃぃ♡♡♡ お兄ちゃんが、ほみかのラブラブハートが、伝わってくれたのぉおお♡♡ さっすがお兄ちゃん! これからは毎日でも作ってあげるからね♪)
「お兄様に喜んでいただけて、大変嬉しゅうございます。真心を込めて調理した甲斐があるというものですわ」
(ああ……お兄様から、かようなお褒めのお言葉を賜るとは。あすかは生涯で今が一番幸福ですわ。今すぐこの場で自害をして、時を止めたいほどに……)
ほみかもあすかも、表面上は何でもないといった風を装ってはいるけど、心の中では引くぐらい大喜びしてるんだよなあ。出来れば両方勝者にしてあげたいけど、そういうわけにもいかない。
「まあ、そういうわけでね。料理には愛が必要不可欠だと僕は思うんだよ。もちろん味も大事だけどね。例えば、あすか。給仕の仕方が完璧だったし、食材や調理技術の話は大変参考になったよ。それに、ほみか。僕のために頑張って作ってくれたことが本当によくわかった。こういう何気ない雰囲気や仕草が、食べる人の心を動かすんだあって思ったよ」
「確かに。お兄様の仰る通りですわね」
「ちょ、ちょっとバカ兄貴! 前置き長すぎ! それで? 勝ったのはどっちなの? あたし? それともあすか?」
「分かった、結果を発表しよう」
僕がそう言うと、ごくり、と二人は息を呑んだ。
正直な話、単純に味だけで言うならばあすかだ。というよりその点は比較にもならない。調理の手順も完璧だし、味付けにいたってはプロの料理人と遜色ない。ぶっちゃけズルい気がするくらいだ。
その一方でほみかなんだけど……一言で言うなら懐かしかった。まあ思い出補正と言ってしまえばそれまでだが、それでも味付けは昔よりもしっかりしていた。おそらく、今ほみかが出来る精一杯のことをしてくれたんだろう。
というわけで。僕は勝者の名を告げた。
「勝ったのは……ほみかだ」




