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僕だけに聞こえる彼女達の本音がデレデレすぎてヤバい!  作者: 寝坊助
デレ4~決着!? 最後に誰が選ばれるのかがヤバい!~
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3「……ぉ兄様ぁ。ぉ久しぶりぃ」

「うで、ずもー?」


 きょとんと、ほみかは聞き返した。

 そりゃそうだろう。直前まで茶道だの華道だのと言っていたのに、急に腕相撲だもんな。しかしあすかは、そんなほみかを見るとくすりと笑って、


「あらまあ。何ですの? そのお顔は。まさか、腕相撲を知らないと仰るのではないでしょうね?」


「いや、そうじゃなくて……。てか、何で? さっきまでやたら伝統芸能を押してきたのに。アンタ何か企んでんじゃないの?」


「うふふ。そのような……。ほみかお姉さまがそれらを拒否なさるから、分かりやすく力比べをしようと言うのではありませんか」


「う、うん。確かに分かりやすくていいんだけど……」


「それともなんですか? わたくしのようにか細く、ましてお姉さまより二つも年下の中学生にさえ、勝てる自信がないと仰るのですか?」


「ムキー! 何よ! そんなに言うんだったら、やってやろうじゃん!」


「うふふ。その意気ですわ。さすがは、ほみかお姉さまです」


 威勢よく勝負を受け入れるほみかに対し、あすかは優雅な微笑を浮かべた。

 いやまあ、僕としては別にどっちでもいいんだけど。

 むしろ勝負内容の話し合いを何時間もされるよりは、すんなりと決めてくれた方が楽だ。勝負内容としてもシンプルだし、ほみかにも勝ち筋はあると思うけど……。


「さあ。それじゃ早速やるわよ? バカ兄貴が審判でいいわよね? アンタも確か右利きだったから、右腕一本勝負で――」


「ほみかお姉さま」


 ノリノリで勝負を進めようとしていたほみかを、あすかが遮る。


「申し訳ありませんが。少々お待ちいただけませんか?」


「え? まあいいけど……何すんのよ?」


「別になにも。あと、出来ればお静かにしていただけると、嬉しゅうございます」


「し、静かにしろって……。アンタねえ」


「……申し訳ありません。言葉が足りませんでした。勝負の前に精神統一をしたいと存じます。五分もかからないと思いますので、しばしお待ちいただけますか?」


「まあ、五分ぐらいなら。てゆーか精神統一だなんて、アンタこそよっぽど余裕なさそうじゃん。いいわよ。いくらでも待ってあげる。その代わり、負けたあとの言い訳は聞かないからね!」


「……ありがたき幸せ」


 あすかは薄く微笑むと、俯き下を見た。

 そのままぶつぶつと、何事かぼやき始めた。目の焦点も定まっていなかったが、意識を失ってるという風ではなく、集中してる感じでもなかった。そう。まるで誰かに話しかけているというな。


(まさか……あすかのやつ、ことりと入れ替わるつもりじゃ?)


 僕がそう思ったのは、あすかは精神統一というには上の空で、そしてピクリとも動かなかったからだ。視点は地面に固定されたまま。かといって床を眺めてるわけでもない。


 約束の五分が過ぎても、あすかはしばらく顔を上げなかった。


「お、おい。あすか……?」


 僕が声をかけると、やっとあすかは顔を上げた。

 しかし、すぐに僕を見ることはしなかった。

 まるで、ここがどこであるか確認するように。ぼーっとあちこちに視線をめぐらせると、ようやく僕に顔を向けたのだった。


「……ぉ兄様ぁ。ぉ久しぶりぃ」


 あすか――いやことりは、満面の笑みでそう言った。


「さて、と。ほみかぉ姉ちゃん。ぉ待たせしてごめんねぇ。さっそくやろぉか」


「い、いいけど……アンタ、大丈夫? 何か、喋り方も変わってるわよ?」


 ほみかの指摘はもっともだろう。なにせ今話している相手はあすかではなく、危険な第二の人格――ことりなのだから。


 まあこの家に来るようになってからは、前みたいに暴力を振るうことはなくなったんだけど……それでもあすかの為とあれば、何をしでかすか分からない。


「ぁたしは大丈夫だよぉ。ぉ姉ちゃんこそ、自分の心配でもしてたら? まぁ、どっちにしても負けるんだけどねぇ。きゃはは」


 ことりは嘲るような笑い声をあげながら、テーブルの上に肘をついた。すると、


「な、なによ! 急に変なキャラになったりして! アンタなんかに負けないんだからね!」


 と叫んで、ことりの差し出す右手を、ほみかは握り締めてから、


「みてなさいよ。今日こそアンタをぎゃふんと言わせてやるんだから」


「ぎゃふん」


「べ、別に今言わなくてもいいのよ! てか何よ! いやにノリいいわね! アンタ!」


「……うーん」


 僕は唸った。

 何かこうしてみると、あすかよりことりの方が、ほみかと上手くやっていけそうな気がしてくるな。しかしそんなことりでも、そのパワーは人並み外れているのだ。

 

「さあ、そろそろやるわよ? ほら、バカ兄貴もさっさと準備しなさいよ! こっちはさっきからスタンバッてるんだから!」


「ぉ兄様ぁ。ぁたし待つのきらぁぃ。腕痺れちゃうし、早くしてぇ」


 と、僕に審判の催促をする二人だけど。


「……その前にちょっといい? この勝負は中止だ!」


 僕がそう叫ぶと、ほみかとことりは二人して驚きの声をあげた。


「えー!? なんでよ! ここまで来て、なんで止めんのよバカ兄貴!」


「ぉ兄様ぁ。どうして邪魔するの? せっかくぁたし勝てるのに」


 と、ほみか、ことりからクレームの声があがる。

 まあ、当然だろうな。女同士の真剣勝負に、水を差されたのだ。ほみかが怒るのは無理もない。しかしことりに関しては……。ここはひとつ、彼女の真意を聞きだすしかないか。


「ちょっと! バカ兄貴! 聞いてんの!?」


「ぉ兄様ぁ。立ったままぉ昼寝?」


 ……おっと。

 どうやら、まごまごしてる暇はないようだ。


「こと――いや、あすか。君にちょっと話がある」


 ことりの返事も聞かず、僕は彼女の手を引いて歩き出した。


「バカ兄貴! どこ行くのよ!」


 後ろから浴びせられるほみかの叫び声も無視して。

 僕はことりを自室まで連れ去ったのだった。

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