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僕だけに聞こえる彼女達の本音がデレデレすぎてヤバい!  作者: 寝坊助
デレ3~主人公、まさかの離縁!? 幼馴染とクラスメートのバトルもヤバい!~
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52「僕を取り合う、義妹と実妹がヤバい!」

 夏休みが終わってから、本当に色々なことがあった。

 アリサはデレ期に入って暴走してしまうし、りおんはそれに嫉妬し対決を申し込むし、おまけに自爆して溺れかけるし。

 

 その後は、あすかとことりとつばめさんの問題だ。

 相変わらずことりは僕を殺そうとしてくるし、あすかはネガティブだし、つばめさんは何が何でも僕を雪ノ宮家に迎えようとしてくる。


 それらの問題を解決すべく、アリサに頼んで白輝の別荘を貸してもらってキャンプに行ったが、そこでもことりは暴れまわった。もう何の映画だよと言いたくなるくらいに。


 まあでもその甲斐あって、あすかとことりの関係は落ち着き、僕はつばめさんとも和解することが出来た。正に、一件落着ってやつなんだけど。


 しかし、それだけ無茶を続ければ疲労も溜まるのが人間ってやつで。その日は祝日で学校が休みだった僕は、ベッドの上でだらしなく横たわり、ぐーすかいびきをかいて寝ていた――なのに。

 

 その眠りは、喧騒によって妨げられた。

 ガチャッというドアを開ける音と共に――。


「透! ちょっと起きなさい!」


 現れたのは、僕の母さんだった。

 それも、相当興奮している。

 僕はベッドから起き上がり、眠気眼をこすりながら、


「あー……なに? 母さん? 朝っぱらから」

 

 僕がそう言うと、母さんは嘆息まじりに、


「……何言ってんの。もうお昼よ。いいえ、それよりも! 大変なのよ!」


「なんだよもう……話は後で聞くから、とりあえず寝かせてくんない?」


「駄目よ! そんなこと言ってる場合じゃないわ!」


「はあ……」


 さっきまで熟睡してたせいか、母さんの大声もあまり耳に入らない。

 母さんは、そんな僕を見かねて、


「とにかく! 着替えたらすぐリビングまでいらっしゃい! なる早でね!」


「分かったけど、一体どういう――」


「いいわね! すぐ来るのよ!」


 バタン! と。僕の話も聞かず母さんは荒々しく扉を閉めた。


「ふわあ」


 なんて。あくびを噛み殺しながら。

 僕はのっそりと立ち上がると、パジャマに手をかけた。ボタンを一つずつ外しながら考える。大変なことって、一体なんだ? 母さんの取り乱しようからあまり良くないことだとは分かるけど、会社をクビにでもなったのか?


 でも、それならもっと慌ててるはずだし。

 というか、話が急すぎるしね。

 だったら何?

 僕が関係してることなの?


 そんなことを考えながら私服に着替えると、


「まあ、考えても仕方ないか」


 と、僕は部屋を出ると階段を下りて一階のリビングに向かう。

 すると……。


 やいのやいの。がやがや。

 やいのやいの。ざわざわ。


「なんだ?」


 途中で、やたらとかしましい声が聞こえてきた。

 一人はほみか。甲高い声で叫んでるからすぐ分かる。

 それともう一人……どうやら、ほみかと言い争いをしているようだ。声はよく聞こえないけど、なんだろう。りおんでも来て喧嘩になったのかな。


 僕は少し緊張しながら、リビングのドアを開けた。

 

「……あ! お兄様!」


 その時。

 僕は思わず、ドアを開けたことを後悔した。なぜなら、


「お兄様、申し訳ございません。お休みのところを起こしてしまいまして……こうなっては不肖あすか、責任を持ってお兄様に添い寝して子守唄を歌い、心地よい睡眠を提供いたします」


(申し訳ございません。連絡もせず突然押しかけてしまいまして。お兄様を驚かせようと思ったのです。後で土下座をしますからお許しくださいまし)


「いや、それはいいんだけど……何であすかが? 何で僕の家に? 何で?」


 そう。僕の目の前にいたのは、あすかであった。

 一瞬遊びにきたのかな? と思ったが、どうやら違う。

 彼女の足元には、やたら大きなボストンバッグが置かれていたからだ。その他にも、手提げ袋やら、キャリーケースやら。とにかく色々なカバンが持ち込まれている。これじゃあまるで――。


「バカ兄貴! ちょうどいいところに来たわね! あんたからも何か言ってやんなさいよ! この泥棒猫に!」


(ふええええええん。ほみか、このままじゃお兄ちゃん取られちゃうよお何とかしてええええええええ!!)


 僕に噛み付きながらも、内心で情けないことを叫ぶほみか。

 でも何とかって言われてもねえ? 僕も起きたばかりで、いまいち状況がつかめないんだけども。

 僕がぼんやりと考え込んでいると、彼女達は向かい合って口論を始めた。


「……泥棒猫、というのは聞き捨てなりませんね? ほみかお姉さま?」


「うるっさいわね、あすか。アンタが何と言おうと、あたしは認めないわよ。さっさと出ていきなさいよ!」


「うふふ、面白い冗談ですわねお姉さま。わたくしはキチンとお母さまやおば様の許可を得てここにいるのですよ? ほみかお姉さまこそ出て行かれてはいかがですか?」


「な、何であたしが出てかないといけないのよ! あんた、あたしのこと舐めてんの!?」


「いいえ、尊敬しておりますよ。海よりも深く山よりも高く。自由奔放で野生的で常識に囚われない大らかなお姉さまを、わたくし心から敬愛しております」


「か~~っ! 何よ、その皮肉っぽい言い方!」


「ところでほみかお姉さま。少し静かにして頂けませんこと? お兄様が驚いてらっしゃるではありませんか。まったく、どういう育ち方をしたらこのように野蛮になれるのでしょうね」


「あ、あ、あ、あんたねえ!」


「ちょ、ちょっと待ってよ!」


 あわてて僕は、喧嘩する二人の間に割って入った。


「はい、ストップ! 二人とも少し落ち着いて! ――ていうか母さん! これは一体どういうことなの!? 何であすかがここにいるの!?」


 僕が問い詰めると、母さんは小首を傾げて、


「うーん。お母さんも本当はよく分かってないんだけどね。あすかちゃん、しばらくここに泊まることになったみたい」


「何そのふわっとした答え!?」


「もうちょっと補足するとね。この間、つばめちゃんから久しぶりに会わないかって連絡が来たの。それでお家に呼ばれてお酒飲んで盛り上がってたら、いつの間にかあすかちゃんをしばらく預かることになってたのよ」


「酔った勢いかよ! というかあすかは名門の生まれだよ!? そんな軽いノリで簡単に引き取ちゃっていいの!?」


「まあ、いいんじゃないの? 責任持って透が面倒見るってことで話がついたから。じゃあ、ほみかちゃん、あすかちゃん。あとは三人で話し合ってちょうだい。あ、なるべく仲良くね?」


「…………」


 そう言うと、母さんは自室へと引き上げていった。

 僕は絶句した。

 というか、思い出した。三日前、雪ノ宮邸を出る時、あすかが言った『秘策』というのを。あれは、このことだったのだ。


「お兄様が悪いのですよ、お兄様が」


 僕の考えを見透かしたようにあすかが、


「お兄様が雪ノ宮家にいらっしゃらないので。それならば、わたくしの方が神奈月家に来てしまえばいいという結論に至りました。お嫌ですか?」


(わたくし、お兄様には何のご迷惑をおかけしません。もし粗相をしたら自決する覚悟でおります。後生でございますから、わたくしをお傍に置いてくださいまし!)


「い、嫌じゃないけどさ。でも、こんな急に――」


「だから、あたしは反対よ!」

 

 僕は口ごもっていると、ほみかがあすかを睨み付けて、


「ただでさえ、うちは母子家庭で余裕がない暮らしをしてるっていうのに! その上もう一人養う余裕なんてないわよ! 追い出すには十分な理由でしょ!」


「そのようなことは、ほみかお姉さまが気にすることではありませんわ」


 声を荒立てるほみかとは間逆に、あすかは冷静に反論する。


「そのようなことって何よ! あたしの言ってることの方が正しいでしょ!」


「わたくしの引越しに対しては、お母さまから十分な額をおば様にお支払いしております――それこそ、わたくしが滞在するのに不都合がない額を。それに日用品や衣服など、必要なものは全て自分で揃えておりますわ。つまり、何の問題もないということですわね」


「そ、そうなの……? で、でも。お金の問題じゃないわよ。この家で暮らしたいっていうなら、この家のルールってもんがあるわ。お嬢様のあんたに、庶民の生活なんて出来んの?」


「わたくしは幼い頃より、お料理もお掃除もお洗濯も、完璧になるまで叩き込まれております。その上編み物や茶道に、軽い大工仕事まで。何分ご厄介になる身なので、それ相応の働きを持って報いたいと思っております。何か問題でも?」


「う、うう。ううう~~……」


 何も言い返すことが出来ず、うめき声を上げるほみか。

 ここにきて、僕もようやく事の大きさに気づき始めた。

 母さんの言うとおり、これは確かに大変だ。

 そもそもほみかは、僕とは血の繋がりがない、義理の妹だ。

 一方であすかは、離れて暮らしていたとはいえ、本当の妹だ。

 その二人が? 一つ屋根の下で? 一緒に住む?


 思考回路がショート寸前の僕に、ずいっと二人は詰め寄った。


「ねえ、バカ兄貴! あんたはどうなのよ! この泥棒猫がここに住まうことに、賛成なの!? 反対なの!?」


「そうですわね。短絡的なほみかお姉さまとこれ以上お話しても、埒があかぬというもの……ここは一つ、お兄様の口から直接許諾を得るとしましょう」


「えっ、えっ? 何? 僕!?」


「今一度お尋ねします、お兄様。わたくしがこの家にお邪魔することを、お認め頂けますでしょうか?」


(お兄様、正直なところをお聞かせくださいませ。もしお断りされるのでしたら、この場でわたくしは腹を切る所存にございます)


「何でそんな選択を僕に迫るわけ!? ていうか話が重いし! ていうか、母さんが認めてる時点でもう僕に決定権はないでしょ!」


「何よ、バカ兄貴! 例え決まったことだとしても、少しは反抗しなさいよ! ほんっとに男らしくない……それとも、あんたロリコン? JCと一緒に暮らせるとか思って、いやらしいことを企んでるんじゃないでしょーね!」


(ダメよ、ダメダメ! あすかみたいな可愛い子が一緒に住むなんて、絶対ダメなんだから! ほみかはお兄ちゃんのもので、お兄ちゃんはほみかのものなんだよ!)


「違うってほみか! ロリコンでもなければ、いやらしいことも企んでないから! ……ていうか……ああ、もう! 僕はどうしたらいいんだ!」


 ……………………。



 ……まあ、そういうことで。

 本当に色々とドタバタ騒ぎをした後で、あすかがこの家に住むことが正式に決まった。

 もちろんそれは形だけのことで、母さんは中立の立場だし、ほみかはそもそもあすかのことを認めていないし。いわゆる全面戦争となってしまった。


 もう、ほんと。胃に穴が開きそうだよ。


 元々仲が悪い二人が、一緒の家に住んで、その上僕を取り合うっていうのは。

 まさに、地獄のハーレムだ。


 しかもあすかに至っては、心の中にことりまでいるからね。そのことりが、この争いに加入しないなんてことはないはずだし。


 本当に……。

 今後どうなっていくんだろう。


 勝気で朗らかでツンツンしているが、僕に対しては内心デレデレな義妹と、お淑やかだが内心は超ネガディブで、さらには二つの心を持つ実妹との共同生活が始まり、僕は心底思うのであった。


――僕を取り合う、義妹と実妹がヤバい!

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