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僕だけに聞こえる彼女達の本音がデレデレすぎてヤバい!  作者: 寝坊助
デレ3~主人公、まさかの離縁!? 幼馴染とクラスメートのバトルもヤバい!~
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48「うん、約束するよ。母さん」

 しばらくの間、僕らは思い思いにお茶やお茶菓子に手をつけていた。というか、主に僕が。つばめさんやあすかは沈んだ顔でただ僕をじっと見つめ続けていた。


 しばらくすると、つばめさんが口を開いた。


「ねえ、透。どうしても駄目なの? どうしても、この家に来てくれないの?」


 つばめさんの問いかけに、僕はゆっくりと頷いた。

 彼女は、更に追及してくる。


「もしかして、神奈月家の方達に何か言われたの?」


「いいえ。これは、僕の意思です」


「だって、あなたはまだ若いのよ。親への恩なんて、難しいことは考えなくても……」


「若いとか年寄りだとか、そんなことは関係ありません。けじめはちゃんとつけないと。あなただって、過去に戻れるなら僕と同じことをしてるでしょ?」


「透……」


 つばめさんは、尚も何か言いたそうに口を動かしていた。しかし、


「……ああ!」


 それは、言葉にならなかった。

 つばめさんは大粒の涙を流していた。人目もはばからず、大声で。お金持ちであることや、名門であることを捨てて。一人の女性、一人の母親となっていた。


「お母さま。しっかりなさってください」


 すぐさまあすかがつばめさんに駆け寄り、左手でハンカチを渡した。


「どうしてなの……? どうして私は……あなたを捨てて、一人で家を出たの……? どんなに辛くても、一緒に連れていくべきだった」


「お母さま、無理を仰ってはいけませんわ。お兄様の行方が分かり、お母さまのことを許して頂いたばかりか、交友は続けてもいいと仰られているのです。それで十分ではありませんか」


「う……うう……」


 つばめさんは、あすかから貰ったハンカチで懸命に涙を拭いていた。


「私、最低の母親だわ。幼いあなたを置いて、ひとりで逃げてしまった。見捨てられても、仕方ないんだわ」


「見捨てたなんて、一言も言ってませんよ」


 僕がそう言うと、つばめさんはハンカチから手を離し、赤くなった目で僕を見つめ、


「でも……透は、この家に来てくれないんでしょう?」


 そう訊き返してきた。


「はい。僕にはまだ、あの家でやらなきゃいけないことが沢山あります。ところでつばめさん。僕のこと、本当に愛してくれていますか?」


「え……? ええ。愛しているわ」


「もし僕がこの家に来たとして、また捨てたりしないでしょうね?」


「いいえ! 二度とそんなことしたりしないわ!」


「たとえ、全てを失くしてもですか? 家や財産や、地位――何もかもを失っても、身勝手な裏切りはしないと約束できますか?」


「ええ、本当に約束するわ。といっても、信じてもらえるかどうか分からないけど。例え全てを失っても、あなたのことを守るつもりよ」


――私はあの家を出てから今まで、アナタのことだけを考えて生きてきた。


 初めてこの家にきた時、つばめさんに言われたことを思い出す。

 あれは、やはり本心だったのか。


 ならば僕は、彼女のことを信じることにした。


「いつか、必ずこの家に戻るよ。それまで待っててもらえない?」


 僕が尋ねると、


「透……本当に? 本当にいつか、この家に戻ってきてくれるの?」


 つばめさんが涙で顔を濡らしながら聞いた。

 その姿には胸を痛めたが、僕は目をそらさずに答えた。


「うん、約束するよ。母さん(・・・)


「透! 今……なんて言ったの?」


「母さんって言ったんだよ。自分のことだろ? しっかりしてよ」


「透……! 透…………!!」


 つばめさんは、僕の言葉に泣き崩れた。この瞬間、僕は母と昔のような親子に戻れたような気がした。この人は、本当に僕のことを想ってくれた。だから僕も、つばめさんのことを受け入れることにした。


「お兄様。そろそろ、お帰りになられてはいかがでしょうか?」


 不意に、あすかが僕に問いかけた。


「もう時間も遅いですし、神奈月の方達もご心配なさるかと思います。表に車を用意してありますので、わたくしがお見送りいたしますわ」


「そうだね……」


 僕はあすかの言葉に頷いた。


「ごめんね、あすか。母さんもそうだけど、これだけ気にかけてもらったのに。特にあすかは……僕のことを慕ってくれて」


「いいのです。それがお兄様のお考えならば、わたくしはそれに従いますわ」


 あすかは言った。その時、僕はある考えに囚われていた。もし、僕が最初から雪ノ宮の家に生まれていたら……という過程だ。実父による暴力はなかっただろうし、つばめさんも心に傷を負うことはなかった。ことりだってまだ生きていたかもしれない。けれど。


 どんなに酷い、あるいは間違った過程を経ていても、僕たちは家族であり、親子であり、兄妹なのだ。それだけは変わらない。


「一ついいかい?」


 僕はあすかに尋ねた。


「あすかって、僕のこと好き?」


「ええ、愛しておりますわ」


「じゃあ、亡くなったお姉さん――ことりのことは?」


 ことりの名前を出してみる。彼女は一瞬だけ眉をピクリと動かすと、


「はい。もちろん、お姉さまのことも愛しておりますわ」


 そう簡素に答えるのだった。 

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