15「朝ごはんは、あたしが作ってあげたんだからね!」
それから一日が経った。
僕の恋人に立候補をするというりおんの告白は、ほみかやアリサさんにとっても驚天動地の事件だったらしい。二人にはあれやこれやと事情を聞かれたが。詳しい話はまた後日、ということで、昨日は解散になったのだけれど――。
朝――顔に吹きかけられる生暖かい息を浴びて、僕は眼を覚ました。
「う~ほみか……何してるの……?」
「はっ……!?」
眼を開けると、僕の体の上に馬乗りになったほみかがいた。僕の上半身にまたがり、顔が触れるくらい近づけて、まるでキスをするかのように。
「…………」
数秒見つめあったあとで、ほみかはもじもじと落ち着きなく体を震わせたかと思うと、ガバッと飛びのいて僕から距離を離した。
「か、かかか勘違いしないでよね! あ、あたしはバカ兄貴のこと起こしにきただけなんだからね!?」
(違うの違うのお兄ちゃん! ほみかはお兄ちゃんのこと襲いにきたわけじゃないよ!? ただ、目覚めのちゅーをしにきただけなんだからぁ)
「そっか。おはよう。起こしにきてくれてありがとね」
僕は乱れた布団を直しながら、ほみかに朝の挨拶をした。
「……って、何て格好してるの!? ほみか!」
ほみかの姿を改めて見た僕は、驚嘆の声を漏らした。
ほみかは、裸だったからだ。いや、裸というよりは、裸の上にワイシャツを一枚羽織っただけの状態だった。
ワイシャツの隙間から白い肌がチラチラと見える。汗で布地がはりついて胸の形がハッキリと見える上、ほみかの脈動に合わせて、着丈の間からは健康的な太ももが見えて……パンツも……。
って、思春期の男子には刺激が強いよ。
「あ……あっ。っこ、これは……。こっれは、その……」
僕の視線に気がついたのか、ほみかは腕を伸ばして恥部を隠そうとする。
「バカ! 違うわよ! これは暑かったから! そう、寝苦しかったからよっ!!」
(あふぁう……♪ お兄ちゃあん……。こーふんした? こーふんした? ほみか、お兄ちゃんに襲われるために頑張ってエッチな格好してきたんだよぉ……♪)
なるほど、やっぱりか。ほみかの心の声を、僕は納得しながら聞いた。結論から言うと、ほみかの作戦は成功してると言える。扇情的なほみかの姿に、僕は正直言ってムラムラとしていた。
「ねえ、聞いてんの!? けっして、バカ兄貴にサービスしようとしてこんな格好してるわけじゃないんだからね! 調子に乗らないでよ!」
(お兄ちゃんに朝チュンサービスしにきたんだよお♪ さらに言えば、お兄ちゃんを興奮させて、そこからエッチなこともできればって考えてました!)
釈明はするものの、心の中で盛大に自白をするほみか。その姿はとても愛らしいが、僕はほんの少しだけ違和感を覚えた。
「……ところで、ほみか。そのワイシャツ、僕のじゃないかな……?」
「ひゃっ!?」
僕の指摘に、ほみかは奇声を上げた。
そう、ほみかの着てるワイシャツはどうもサイズが大きいのだ。ほみかの物にしてはぶかぶかしすぎている。袖なんかは完全に隠れてしまっているし、どう見ても男物のシャツだ。
「う、うるさいわね! 昨日たまたまワイシャツを全部洗濯に出してて、着れる服がないからあんたのをちょっと借りただけよ! なによ、何か文句あんの!?」
(はうぅぅ……。バレちゃったぁ。昨日りお姉の告白聞いて不安になっちゃったから。お兄ちゃんのワイシャツ着て、お兄ちゃんの匂いをくんかくんかしてたこと、バレちゃったあぁぁぁ)
なるほど、そういうことか。
勝手に服を持っていったのはよくないことだけど、僕もほみかに寂しい思いをさせてたのは悪かった。まあ、許すとしようかな。
僕がそんなことを考えていると、ほみかは荒い息を吐きながら怒鳴った。
「そ、そんなことよりも! 朝ごはんの支度できてるから! 着替えたらさっさと降りてきなさいよ! 朝ごはんは、あたしが作ってあげたんだからね!」




