34「……今度でいいので、私とデート、してくれませんか?」
「……ほんと!? ありがとう、アリサ!」
僕はテーブルから身を乗り出し、歓喜の声を上げた。
「それで、ええっと……お金の件なんだけど……」
「……そんなものはいりません」
首を横に振り、拒否の意を示すアリサ。
「でも……」
「……いらないと言ったら、いらないんです」
食い下がる僕の言葉を、アリサは遮る。
「……私は親友として、あなたの力になりたい、助けになりたいと思いました。例えあなたが今から前言撤回しようとも、私は無理にでも透さんに協力するつもりでいます。言わばこれは、私からのお節介なので対価は要求しません。それに、透さんには青木ヶ原さんとの件で大変お世話になりましたから。
……とにかく、借りは返せる時に返したいと思っただけです」
「……ほんとに、それでいいのかい」
調査費や車両費だけでも、何十万といくだろうに。
それらをタダで支払わせるのには、流石に抵抗がある。
「ねえ、アリサ。僕に何かしてほしいことはないかい? といってもお金は全然ないんだけど――それでも、恩を受けっぱなしていうのは悪いよ。何でもするから言ってほしい」
「……何でも、ですか?」
(……それなら、私と結婚してほしいんですけど……)
「あー、いや。ほら、もちろん常識の範疇でね? 結婚とかは無理だよ?」
「……わ、分かってますよ。私がそんな非常識な人間に見えますか?」
(……危ないところでした。でも、結婚が無理なら何を言えばいいんでしょう? 私と○○○……っていうのは、やっぱり引かれますよね?)
「ごめんごめん。『僕に出来ることなら』ってルールを加えさせてもらえる?」
「……そういうことなら」
アリサは何故か顔を赤らめ、俯きながら、
「……今度でいいので、私とデート、してくれませんか?」
「え? デート?」
拍子抜けし聞き返す僕に、アリサは顔を上げると、
「……そう、デートです。遊園地でデートした時はお見合いの件があって、心から楽しめたとは言いがたかったです。なので、もっとちゃんとしたデートがしたいと思いました」
「いやでも。そんなことならいつだって出来るじゃないか。今だって」
「……それは違います。学校帰りに喫茶店に寄って雑談をする……これも一つのデートかもしれません。しかし私にとってデートとは、キチンと約束をして、入念な準備をして、細かな手順の元行われるものです」
「ま、まあ、言いたいことは分かるけど……」
「……それに、あまりに過度な要求は無理なんですよね? デートといっても普通のデートで結構です。お金も時間もそれほどかからない――これ以上の『お願い』は他にないと思いますが」
ここまで論理的に喋り立てられると、反論もしづらくなる。そもそも僕には選り好みをする権利もなければ、アリサみたいな美少女とデートだなんて逆にご褒美だ。断る理由がまずないんだけど。
「ねえ、アリサ。ほんとに僕なんかとデートでいいの?」
僕が尋ねると、
「…………」
アリサは何も答えずにレモンティーを口元へ運ぶ――そして、飲み終えたカップをお皿に戻すと、
「……他に適当な男性がいませんからね。貴方で我慢します」
(……透さんしかいないんです。是非私とデートしてください)




