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僕だけに聞こえる彼女達の本音がデレデレすぎてヤバい!  作者: 寝坊助
デレ1~妹と幼馴染のバトルがヤバい!~
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13「だって、カラオケだしね」

 結論から言うと、ほみかの歌は聴けたものじゃなかった。いや、そこまで言うつもりはないけど。可愛い声をしてるのだが、無理に高音を出そうとしすぎて、喉が絞まってしまい、持ち前の声量が逆に小さくなってしまっている。そんな感じだ。ちなみにほみかの歌ったのは女性アイドルグループの曲で、『本当は好きだけど素直になれない』女の子の心情を歌にしたものだった。点数は七十一点。


「ほみかちゃん、大丈夫だよ。何というか、味があったから!」


「……あれはあれで良かったんじゃないでしょうか?」


 と、ほみかが歌い終わってからりおんとアリサさんがフォローを入れる。

 でも、一体どうしてだろう――と、僕は疑問に思った。

 別に下手ではないはずなのだが。声量もあるはずだし、高い声もそこそこ出ている。なのに、壊滅的に音を外しているのだ。


「あー、もう! だから嫌だって言ったのよ! あんたよ――バカ兄貴がいるからよ! あんたのアホ面が気になって、歌に集中できないのよ! あたしいつもだったら、九十点以上は余裕で出せるんだから! 全部、全部よ! ぜーんぶ、バカ兄貴のせい!」


(違うの違うの違うのおっ。お兄ちゃんが見てくれてるから、緊張しすぎて音程おかしくなっちゃうの! りお姉やアリサさんの後だし。頑張ろうと思えば思うほどミスっちゃうんだよお)


「ほ、ほみか。落ち着いて。はい、どうどう。大丈夫、ちゃんと分かってるから。緊張して音程がうまく取れなかったんだよね?」


 僕は両手で抑えるように、ほみかをなだめるようなポーズを取った。なるほど。単に緊張してただけか。まあ、七年ぶりに再会してまだギクシャクしてると思えば、ほみかの言い分も納得できる。


 僕が苦笑しながらほみかを宥めていると、


「何よ、バカ兄貴が! バカのくせに知った風なこと言わないでよね! そんな偉そうなこと言うんだったら、今度はあんたが歌いなさいよ!」


「……まあ、順番ですからね。神奈月さんも歌うべきです」


「わたしも、透ちゃんの歌久しぶりに聞きたーい!」


 三人の口から僕の歌を待ちわびる声が……って、何だこの高すぎるハードルは。あたかも『はい、面白いギャグやって!』と無茶振りをされるお笑い芸人みたいではないか。


「―-ま、いいんだけどね。別に」


 僕はあらかじめ歌うと決めていた曲を機械に入力した。


「それじゃ、いくよー」


 そして僕は“ある歌”を歌った。特に有名でもなければ無名でもない、何の変哲もないバラード。素直になれない恋人に愛を語りかける彼氏の歌だ。僕は、頭の中でほみかのことを考えながら歌った。

 それは、僕の偽らざる本心だから。

 歌ってる間、アリサさんはぼーっとした表情で僕を見ていて、りおんはうっとりとした顔で聞き入っていた。ほみかに関しては、恍惚とした表情で開いた口から思い切りよだれを垂らしていたが。


 曲が終わった。ドゥルルルという古臭い音と共に採点機に表示された点数は――百点だった。ふとほみかに眼を向けると、彼女はプイと横を向きながら言った。


「……ま、まあまあじゃない? でも、まだまだだけどね! バ、バカ兄貴にしては上出来ってところね」


(――お、お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん! 素敵すぎ、最高すぎ、素晴らしすぎいいいい! しかも、ほみかのこと歌われてるようで、もうたまんない! あああ、今すぐお兄ちゃんと一つになりたいよお)


 心の声と肉声にズレがあるのはご愛嬌として。

 こうして褒められるのは悪い気がしないものだった。


「おそまつさま。僕もカラオケは久しぶりだから緊張したけどね――って、君たち何してるのさ!?」


 僕は、両腕に抱きついているりおんとアリサさんに向けて言った。


「ごめんね、透ちゃん。わたし、もう我慢できないから……」


(歌ってる透ちゃんが格好よすぎて、わたしもう狂っちゃうよお。ていうか好きすぎて、もうおかしくなってるの!)


 と、豊満な胸を腕に押しつけてくるりおん。


「……嫌なら振りほどけばいいじゃないですか」


(……ご、ごめんなさい。神奈月さん、怒ってますか? 本当にご迷惑ならやめます。でも、私だって神奈月さんの歌にキュンキュンきちゃったんです)


 透き通るような白い手を、妖艶に絡ませてくるアリサさん。


「あー! 何両手に女の子はべらせてんのよ! このバカ兄貴がー!」


(ほみかがやろうとしたことなのにいいいいい! 歌い終わった後に『今のはほみかに捧げる曲だよ』って、優しくささやいて、頭を撫で撫でしてくれる場面でしょおおおおおおお!?)


 二人の行動にほみかが叫び声を上げる。

 

「ええ? これ僕が悪いの?」


「そうよ! ぜーんぶあんたが悪いのよ! 何よ! デレデレしちゃって!」


(お兄ちゃんは悪くないけど! ちゃんと拒絶しないとダメだよお。お兄ちゃんのこと、世界で一番愛してるのはほみかなんだからああああああ!)


「あ、あはは。ちょっとだらしない顔しちゃってたかな? ごめんね?」


「あ、謝ったってダメよ! 大体、これはあたしの歓迎パーティでしょうが! それなのに、あたしを無視して他の子とイチャイチャするとか、あんた何考えてんの!? 色情魔!? そ、それに、な、な、七年前の、約束……」


(くううっ! お兄ちゃんのバカ! 浮気者! ほみかだって他に人がいなければ、お兄ちゃんに抱きついたりキスしたりするのに……)


 両腕をりおんとアリサさんに抱きつかれ、更にほみかも怒らせてしまった状態で、ほみかの歓迎会はメチャクチャになってしまった。しかしまあ、久しぶりにほみかと遊びにいけたわけだし。多少騒々しくなってしまったが、それもまたよしだ。こうやって賑やかにはしゃいでいる方が楽しい。だって、カラオケだしね。

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