14「誠ですかお兄様!」
「……明日? 雪ノ宮家に、食事?」
ポカンとしながらオウム返しをする僕に、あすかは「はい」と答える。
「これはお母さまのお誘いなのですが、色々とありましたが、わたくしたちは『家族』ではありませんか。本来ならばずっと一緒に過ごせていたはずなのです。様々な事情で離れ離れになってしまいましたが、これからはその時間を少しずつ埋めていきたいと」
「うーん、言いたいことは分かるけど」
「この前は、慌しくて晩餐を共に出来ませんでした。わたくしたちは実の家族ですし、お母さまに親権がないとはいえ、会うこと自体は犯罪ではありません。よって、せめてお食事でも一緒に取りたいと思った次第です」
「それは……まあ」
「それとも。やはり、無理なのでしょうか? わたくしも、お兄様と卓を囲めることを楽しみにしておりますが、お母さまからの言いつけで、決して強制はしないようにと言付っております。なので、断って頂いても構いませんが……」
(急なお話で、お兄様に嫌われたのでしょうか。お兄様も嫌がってるご様子ですし、お母さまとの確執もまだなくなっていないようですし。お兄様とのお食事会が無くなるなんて、あすかは悲しゅうございます)
「いや、別に、僕は……」
あすかはしっかりした口調ながらも、不安そうな表情で僕を見つめている。僕に断られることを内心で恐れているようだ。
それは、共感性症候群により分かる。
だけど、ぶっちゃけ行きたくない。
雪ノ宮つばめさんに対しては、色々と複雑な思いがあるし。
でもたぶん、ここで行かないと物語は進んでいかない。
十四年前、僕がつばめさんに捨てられ今の家族に拾われた時から。これは僕でしか終止符を打てないストーリーになっていたんだと思う。
勿論、めんどくさい。ドロドロの修羅場よりも、ほみかや母さんと一緒に下らない馬鹿話をしてる方が何倍も楽だ――だからこそ、ここで逃げてはいけない。
「分かったよあすか。明日、雪ノ宮家にお呼ばれするよ」
「誠ですかお兄様!」
珍しく声を弾ませて、大喜びであすかは言う。
「よかった……本当によかったです。本音を申しますと、お兄様に断られるのではないかと、あすかはとても心配しておりました……偉大なるお兄様の妹だというのに、お兄様を信じることが出来ないなどと。妹にあるまじきこと。猛省し、これからの精進に生かす所存にございます」
「そ……そうか。頑張ってね」
「はい! それでは、明日の十五時ということでいかがでしょうか?」
「十五時ね。うん、わかったよ」
僕がそう答えると、あすかは両手をパン! と合わせて、
「それでは、決まりですね。ああ……今から楽しみですわ。お兄様とのお食事会」
(よかったですわ。もし断られていたら、手首を切っているところでした)
おいおい。心の中でまた物騒なことを呟くあすかに、僕は内心で突っ込みを入れる。でもよかった。今日のあすかは何だか落ち込んでるように見えたから、少しでも元気になってくれたのであれば。正直つばめさんとはまだ顔を合わせづらいけど、あすかの笑顔を見れるならまあ良しとしようか。
それでは明日、と約束をして、僕とあすかは公園で別れるのであった。




