4「だから二度と、透ちゃんには近づけさせないよ!」
そして、やってきた5時間目のプール授業。
りおんの登場に、生徒達から歓声が上がる。
「うおっ、すげー!」
「何!? あのバスト!」
「やべえ。立ってられねえ……!」
「顔ちっちゃい! 胸大きい! 足長い! ほんと羨ましい……」
「世の中は不公平だ世の中は不公平だ世の中は不公平だ……」
男子生徒三人、女子生徒二人の意見である。
その他にも多種多様な感想――主に狂喜乱舞だが――が、プール内に響いた。それもそのはず。りおんの水着姿は、あまりにも扇情的すぎた。
着ているのは普通のハイレグタイプなスクール水着のはずだが、他の女子とは比べ物にならないほどセクシーだった。スラッと長い手足や、余計な脂肪のないくびれたウエストもそうだが、特筆すべきはやはり胸。以前聞いたところによると、Fカップはある豊満な乳房が、スクミズのバスト部分に圧迫されている。その色っぽさは、まるでグラビアアイドルのようだった。
って、何を僕は熱く語ってるんだ。
でも正直言うと、ヤンデレ病という厄介な病気さえ除けば、本当にりおんって魅力的な女の子だと思う。容姿だけじゃなくて、料理も上手だし、コミュニケーション能力も高い上、頭もいい……本当に、ヤンデレ病でさえなければなあとつくづく思う。
ちなみに当のりおん本人は、沸きあがる生徒達からの歓声、拍手喝采をものともせず、それこそモデルのように堂々と歩を進めている。周りの声なんて、まるで聞こえないほど集中している証拠だ――と最初は思ったけど、どうやらそれは勘違いのようだ。
りおんは恐らく、クラスメートから歓声が上がっていることに気づいてもいないのだろう。いや、それは少し言いすぎかもしれないが。男子からの欲望、女子からの羨望など、歯牙にもかけない、という意味であれば、りおんにしてみれば僕以外の人間なんて目にも入らないのだろう。
まあ、りおんの紹介はこれぐらいにしておこうか。
続いてもう一人、プールサイドに入ってきた。
その人物の登場にりおんとは違って、プール内にこんな感嘆の声が漏れる。
「綺麗……」
アリサさんである。
りおんの時とは打って変わって、感動で沈黙が溢れる空間を、悠然とアリサさんは歩く。
アリサさんの水着姿は、一言で言えば「芸術」。スクール水着から出る手足は、ミルクを垂らしたように真っ白であり、シミひとつない肌にはライトが当たって、まるで後光が差しているかのように見えた。
うーん……。
これがただのデートだったら、最高のシチュエーションなんだけどね。
不幸なことに、これはデートでも遊びでもない、女と女の真剣勝負なのだ。しかも、負けた方は今後一切僕に近づくことを許さないという、悲愴な戦いなのだ。美女二人の水着姿に浮かれている場合ではないのだ。
「よく逃げ出さずにきたね、白輝さん」
りおんは、向かい合うアリサさんを睨みつけ、
「白輝さんのこと、ずっと警戒していたの。まさかとは思っていたけど、透ちゃんに言い寄るだけじゃなくて、結婚まで申し込むなんて。こればかりは、わたし認めることができないの。だから悪いけど、勝たせてもらうね」
「……一ノ瀬さん。まだ勝負は決まっていませんよ?」
「決まってるよ!」
クールにストレッチをしながら反論するアリサさんとは対照的に、りおんは高らかに勝利宣言をする。
「言わせてもらうけど、わたしはずーっとあなたのことが気に入らなかったの! クラスメートってだけで、透ちゃんと仲良くしちゃってさ! わたしは透ちゃんと幼馴染で、ずっと一緒にいたっていうのに!」
「……だから、何だというんですか?」
「だから二度と、透ちゃんには近づけさせないよ!」
大声を上げるりおんは、驚く周囲を全く気にも留めず、アリサさんを指差して、
「種目は背泳ぎ五十メートル一本勝負! 審判は、透ちゃんにやってもらうからね!」




