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僕だけに聞こえる彼女達の本音がデレデレすぎてヤバい!  作者: 寝坊助
デレ3~主人公、まさかの離縁!? 幼馴染とクラスメートのバトルもヤバい!~
109/217

1『愛してます、透さん♡』

 しょっぱなではあるが、後日談を聞いてもらえるだろうか。

 僕とアリサさんの結婚は、結局うやむやになった。

 というのも、僕はアリサさんとの婚約を持ちかけてくるクリスティーナさんに、


『すみません。お気持ちは嬉しいのですが、僕は一介の高校生である身。一人の女性の生涯を支えていくには、あまりにも未熟なので、お嬢さんとの結婚に対しては、どうか考える期間を設けては頂けないでしょうか?」


 ……と言うことで、何とかスピード婚から逃れることが出来たのである。

 しかし。当然ではあるが、それで全てが解決したわけではない。

 振り返れば、七年ぶりにツンデレ病を患う妹、ほみかと普通に暮らしていくはずだった日常が、りおんのヤンデレ化を期に、突然の修羅場と化したのだった。


 りおんのヤンデレ病には苦労させられたが、憎悪の感情を読み取る僕の能力、「共感性症候群(マインド・シンパシー)」と、ほみかの必死な説得の甲斐あって、何とか元の鞘に収まることができたわけだけど――ここにきて、新たな問題が発生した。


 僕の本当の妹を名乗る少女、雪ノ宮あすかの登場だ。これには本当に驚いた。幼い頃生き別れになった母が子供を産んでいたこともそうだが、問題なのはあすかのもうひとつの人格、ことりだ。


 礼儀正しく、お淑やかなあすかとは正反対で、ことりは好戦的で危険な性格。

 そのことりが、あすかの中に潜んでいて、いつまた出てくるかも分からない。

 彼女とも、いずれ決着をつけなければいけないんだけども……。


 回想は、ここまでにしておこうか。

 りおんやあすかの問題はまだ残っているけど、今僕が直面している最大のピンチ。それはズバリ、クラスメートで親友である、白輝アリサさんについてだ。


 望んでいない相手との結婚を強いられたアリサさん。

 その結婚式を、僕はぶち壊したのだった。

 僕だけじゃなく、ほみか、りおん、あすかの協力もあって。無事にアリサさんと青木ヶ原の婚約は解消された。


 そして、残った問題がひとつ。

 クールビューティだったアリサさんが、まさかのデレ期に入ってしまったのだ。

 普段の冷静さは影を潜め、僕に対して好き好きアピールをするアリサさんのデレ期は、全く終わる気配を見せず、僕らの夏休はそのまま終了したのだった――。


「……透さん♡」


「……なに? アリサさん」


 夏休みが終わって二学期の教室、僕はアリサさんに寄りかかられていた。


 白輝(しらき)アリサ。

 アルビノのアリサさんは生まれつき遺伝情報が欠乏していて、その肌はまるでおしろいを塗ったように真っ白だった。


 そう、肌の色から眉毛から髪の毛に至るまで、全てが真っ白なのである。

 その神秘的で美しい容姿もそうだが、そのクールな態度は周囲の人間を寄せ付けない。まあ、心の中だと、常に僕に対してはデレデレだったんだけどね。今は、その『心の中』が表面化しているわけで。

 

 アリサさんは授業中にもかかわらず、机をピッタリ寄せて、彼女は僕の肩にしなだれかかって、腕を絡めている。押し付けられた胸は同じ人間の体とは思えないほど柔らかくて、彼女自身からも女性特有の甘い香りがしていた。


「……うふふ、何でもないです。呼んだだけです♡♡」


「えーっとさ、アリサさん」


 僕は横目に――といっても、すぐ目の前にいるのだが――アリサさんを見ながら、注意をする。


「分かってると思うけど、今は授業中なんだよ? 意味もないのに呼ばないでもらえるかな」


「……何を言うんですか、透さん」


 アリサさんは止めるどころか、絡みつく腕に更に力を強めてきた。


「……私達はデートどころか、結婚までした仲なんですよ? 妻が夫に甘え、愛情表現をする。これはもう常識じゃないですか?」


「いやいや。その話は結局流れたじゃないか。クリスティーナさんだって、今すぐ答えを出さなくていいって言ってくれたし……」


「……言い訳は見苦しいですよ? 私の処女膜まで破っておいて。大人しく、私の愛を受け入れてください」


「うん、嘘をつくのは止めようか」


「……それともなんですか、透さん」


 アリサさんは、美しいルビーのような赤い瞳を細めて、


「……あの夜のことは、全て遊びだったとでも……?」


「あーだから、そういう嘘はやめてよ。じゃないと嫌いになるよ? ――いや、まあ、違うんだよ。そんな泣きそうな顔しないで。アリサさんのことを、嫌いになるはずないじゃないか。それに……」


「えー、そこ。うるさいぞ」


 黒板に板書していた教師に、僕は注意されてしまった。


「ほら、怒られちゃったじゃないか。だから、僕は言ったんだよ」


「……それはすみませんでした。……ところで、透さん」


「な、なに?」


 アリサさんは僕の耳に口を近づけると、ふうっと息を吹きかけ、


「……大好きです♡」


「えっ! えっ! な、なんだよ急に……」


 突然のことに、僕が大声を上げて狼狽すると――


「神奈月! いい加減にしろ! お前は静かに授業を受けられんのか!」


 と、再び入る教師の叱責。

 授業の邪魔をされた恨みからか、激しく肩をいからせている。


「まったくお前たちときたら。学校は遊び場じゃないんだぞ? 乳繰り合いたいなら、せめて放課後にしろ。特に白輝。お前は真面目な奴だと思ってたのに、急になんだ? 神奈月とイチャイチャし始めて」


 そう。

 例の事件の後、アリサさんはデレ期に入りっぱなしなのだ。

 デレ期というのは、アリサさんの場合だと普段クールなのが一転して、デレデレの状態になることである。アリサさんは表面上はいつも知的で冷静だったから、デレ始めるとその破壊力もヤバいんだよね、これが。


 前に、妹のほみかがこのデレ期に入ったことがあるが。

 ほみかの場合はツンデレ病で、僕に対していつもツンツンしていたのとは逆に、デレデレな態度をとり始めた。

 しかしそれもすぐのことで、僕が入院中目を覚まし、また眠りにつくまでのわずかな時間だけだった。


 ……要するに。

 何が言いたいのかというと、デレ期のリミットには個人差があるということだ。

 それか、何か特殊な条件があるということ。


 どちらにせよ、このデレ期の謎を解明すること――それこそが、ほみかのツンデレ病を治す一番の近道になるはずだ。

 もちろん、りおんも。そして、アリサさんも。


 僕がそんなことを考えていると。


 ちょんちょん。


 アリサさんが僕の肩を指でつついてきた。

 僕はアリサさんに向き直って、


「今度はなに? アリサさん」


「……」


 アリサさんはニッコリと笑いながら。

 無言で自分のノートを指差した。そこには、


『愛してます、透さん♡』


 そう、中央にデカデカと……やたら達筆な文字で書かれていた。うーん、なんだかなあ。まるで恋を覚えたての小学生みたいな。可愛いんだけど流石に学校の中で、このテンションは勘弁してほしいな。


 一刻も早くアリサさんのデレ期を治そう。

 僕は心の中で、硬く誓うのであった。

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