75 キューラの受難?
門の前で会話をしていたキューラ達。
そんな彼らは注目の的であり、中でもキューラは自分が男である事をトゥスへと告げてしまった事から周りの者から目を逸らされる……。
しかし、立ち止まっている訳にもいかずいよいよキューラ達は旅を再開するのだが?
次の街を目指し俺達は道を進む。
ゾルグという街は此処から二日歩いた場所にあるらしい。
「そう言えば門の外に乗り合いの馬車があったよな? 乗れば良かったんじゃないか?」
「先に向かわなければならない場所があるんですが、そこには馬車は向かわないので……」
なるほど、でも寄るところがあるなら最初から言っておいてくれても良いと思うんだが……まぁ、今言っても仕方ないよな。
「それで、寄る所ってどこなんだ?」
「精霊の泉と言われる場所ですよ」
精霊の泉? 初めて聞くな……。
「勇者は旅をする時に世界の危機を探す。だがもう一つ旅の理由がある。各地にある精霊の泉で身を清める必要があるのさ」
「そうなのか……」
それだけならどんなに良かったことか……俺は思わずそう言いそうになるのを堪えた。
クリエの方がそう考えてるはずなんだからな。
「じゃぁ、その精霊の泉って場所に行くんだな?」
「はい、ですが……そこに行くには――」
クリエは心配そうに俺に目を向けてくる。
どうしたんだろうか? そう思いつつ首を傾げると――。
「!? うへへへ……」
何故、笑うのか……というか、さっきの心配そうな表情は何処に言ったんだ?
「はっ!?」
俺の呆れ顔を見てクリエははっとすると慌てて表情を戻す。
「その、そこに行くには魔物の多い所を抜けて行かなければならないんです」
なるほど、それで心配をしてくれたのか。
しかし、俺も戦えない訳ではない……クリエが気を使ってくれるのは嬉しいが、俺は彼女を守らなければならない立場だ。
魔物相手だろうが人だろうが、それは変わらない。
「その……キューラちゃんは私達の後ろに隠れてて欲しいと……」
「大丈夫だ」
クリエが心配した理由は理解した。
俺の今までの行動を思い出し、反省しつつそう口にした。
「大丈夫……ね……使うなと言ってもあれを使ったし、とてもそうとは思えないね」
うぐ……トゥスさんに言われるとは……。
いや、彼女もクリードではずっと一緒だったから仕方が無いか……。
「だ、大丈夫だ! 今度からは突っ走らない、クリエに自分を大事にしろって言った手前、俺もそうする。危険だと判断したら身を守る」
「はい! そうしてもらえると安心です」
俺の答えにクリエは満面の笑みを浮かべたのだが……魔拳の事もある、これ以上心配させたくはないよな。
クリエを守る為にはまずは自分の身をちゃんと守れるようにならなくっちゃいけないんだ。
それには正しい判断が出来る事が必要だ。
決して驕らず……大丈夫だ今は仲間がいるんだ。
クリエを守る為の仲間が……。
そう思っていたのだが……。
「ちょ!? こっちに来た!?」
精霊の泉へと向かう最中。
猿の様な魔物ヴォルアッフェという名前だけは立派なのだろうか? そんな魔物に狙われていた。
勿論、クリエやトゥスさんも戦っているのだが……何故俺は執拗に狙われるのだろうか?
「打ち放て岩の弾丸!! グレイブ!!」
内心叫び声を上げながらいやらしい顔の魔物へと魔法を討ち込む。
すると魔物へと見事に当たったグレイブはヴォルアッフェを物言わぬ肉塊へと変えた。
「キューラちゃん!? 大丈夫ですか!?」
「な、なんとかな……でも……」
俺は恐る恐ると木の上に居る彼らへと目を向ける。
他の魔物への威嚇の意味を込め敢えて詠唱をし、威力を高めた魔法……俺の予想ではこれに怯えてくれる予定だった。
しかし、魔物達は警戒はしている物の先程と変わらない顔で俺を見てきている。
「何で俺?」
「そりゃお嬢ちゃん服に色々ついてるからね、奴らは光る物が好きなのさ」
……そういえば精霊石を固定するための金具はまだ新しいから光っている。
「そういえば、そう言う習性がありましたね……でも、お猿さんが光る物を集めてどうするんですか?」
「どうやら光る物を沢山持っているのが偉いって思われるんだよ、あれみたいにね」
トゥスさんの指を向けた方へと目を向けるとどうしてそうなったと思わず言いそうになるぐらい金属を身に着けた猿が居た。
どうやら、身に着けた物が重くてここに来るのに時間がかかったのか、木の上で休んでいる。
重いぐらいなら外せば良いと思うんだが……しかも似合ってないし、あれがボスなら簡単に倒せるんじゃないか?
確かに人間も偉い人や貴族は宝石を身に着けたりしてはいる。
だが、似合う様に身なりは気にしているはずだ。
というか、自分が動けない位になるまで身に着ける事はないだろ!?
魔物ってのは良く分からない奴らばっかりだな!?
「お嬢ちゃん多分心の中で叫んでるんだろうけど、気をつけな……あれだけ身に着けてるって事はそれだけ人を殺して来たって事だ」
「へ? あれが?」
トゥスさんの冗談だろうか? そう思った俺はクリエの方へと向くと彼女は頷いて答えた。
「そうは見えませんけど、事実です……」
まじか……そうは見えないけどな。
『ウキャーウキキキキキャ―!!』
だが、どういう訳かあのボス? が現れた事に気が付いた猿達は興奮し始め次々に木を飛び降り、此方へと向かって来た。
こうなったらお得意のあれで……!
「シャドウブレード!」
現れた無数の影の剣は猿を次々に捉え切り裂いて行く……。
だが、全部を倒し切る事は無理だ。
残りはトゥスさんの銃とクリエの剣によって俺は事なきを得たのだが……ボス猿が残っている。
魔物はゆっくりと辺りを見回すとニヤリと笑ったように表情を変えた。
二人は油断できないと言っていたが、あの笑み……俺達の事は余裕とでも言っているのだろうか?
なんにせよ油断するなと言われて油断をするような間抜けになるつもりはないぞ!!




