465 素直じゃない?
「ファリス、大丈夫か?」
俺は少し疲れた様子の彼女へと目を向け、そう聞いてみる。
すると彼女は此方へと目を向け――。
「大丈夫」
と笑みを浮かべた。
だが、明らかに疲れている表情だ。
「キューラちゃん……出発は明日にした方が良くないですか?」
そんな彼女を心配してだろう。
ライムを抱えたクリエはそう口にした。
「ああ、そうだな……」
本当はすぐにでも次の町に行きたい。
いくら大陸が違うとはいえ、ここは港町だ。
ぐずぐずしていたら追手がさらに来ることは間違いない。
だが……。
「大丈夫、だから行こう?」
「だめだ……今のファリスは消耗してる」
大事な仲間がつかれている。
この状況で動くことはおろかだろう。
そう思いトゥスさんへと目を向けた。
すると彼女は――。
「同意だね……チビはついてくるだろうし、足手まといになるのだけは勘弁だ」
彼女はそっぽを向きながらそんな事を口にしたが、素直じゃない。
心配というのは口にしないが……。
仲間である以上、万全な状態が好ましいと思っているのだろう。
「……そういう言い方!!」
「チェル……トゥスさんは素直じゃないだけだ」
当然突っかかるチェルに対し、俺はそう伝える。
するとトゥスさんは「はぁ!?」と声を上げるが、それ以上は何も言ってこなかった。
本当に素直じゃないだけだと思うんだが……。
まぁ、彼女にとってそれを言われるのは不服だったのだろう。
「出発は明日だ……ファリスはしっかりと宿で休むこと、俺達で明日朝一に出られるように準備をしよう」
そう伝えると仲間達はそれぞれ返事をしてくれた。
一人を除いて……。
その一人は勿論ファリスだった。
「でも……」
食い下がる彼女の頭へと手を乗せた俺はなだめるように撫でる。
「ファリス、君は頼りになる……だから、今はしっかりと休んで身体を整えてくれ」
嘘は口にしていない。
実際彼女は頼りになる。
だからこそ、時間をかけてでも休ませた方がいいのだ。
これから先、追手だけじゃない。
この魔大陸の魔物だって戦わなければならないだろう。
そんな時、戦力だけでなく知識としても頼りにできるのがファリスだ。
彼女だけがこの魔大陸出身なんだからな。
そう言う意味でも彼女が必要だ。
「頼むぞ」
「……分かった」
ようやく、納得は行かずとも聞き入れてくれた彼女に微笑むと――。
「あ、ああ……ああああ」
変な声が聞こえ、そちらの方へと目を向けると――。
クリエが羨ましそうにファリスを見つめていた。
君はこんな時に何を考えているんだ……?




