418 別れと旅立ち
とはいえ、朝まで同じベッドの上だ。
某国産RPGのように「昨夜はお楽しみでしたね」なんてことにはならなかったのは良いが……。
寝れねぇ……。
そう、一睡もできなかった。
いや、どう考えてもできるわけがないだろう。
目の前にはファリスが……。
後ろにはクリエが……。
いや、ファリスだけならいい。
妹みたいなものだからな。
だが、クリエはまずい。
というかこんな時だからこそだろう。
女になっていてよかったとさえ思えた。
もし男だったら……。
きっとファリスに嫌われていたかもしれない。
とはいえ、心は男のままだ。
何も思わないというのは無理な話であり……。
「すぅ……すぅ……」
規則正しく聞こえてくる彼女の寝息にはゾクリとしたし……。
なにより、体を摺り寄せてくるのは本当にまずい。
「ふぁ……」
そんな事を考えているとファリスが欠伸をしながら瞼を擦る。
どうやら起きたようだ。
彼女は俺と目が合うと年相応の笑みを見せ顔を胸へとうずめてくる。
「おはよう、ファリス」
俺は彼女に向かってそう言うと彼女は笑みを浮かべたまま。
「おはよう」
と返してくれた。
魔王はこんな子に殺しをさせていた。
いや、俺も大して変わらないのかもしれない。
だが……。
この子を簡単に見捨てるようなやつだ。
自分のために身を犠牲にする少女をだ……。
そんな奴を許すわけにはいかない。
俺にはもう一つ魔王を倒さなければならない理由が出来たわけだ。
「うへへへへ……きゅーらちゃぁん……」
「…………」
すっかり通常モードのクリエの寝言が聞こえ、俺は身を震わせる。
恐怖を感じたわけではない。
彼女が動いたり、寝言を言うとその……ぞくぞくするだけだ。
「わ、悪いがファリス……クリエを起こしてくれるか?」
「うん」
クリエを起こした後、朝食を済ませた俺達は町の入口へと向かう。
クリードに向かうためだ。
だが、そこにはイリスとヘレンがすでに立っていた。
まさか、一緒に行くって事だろうか?
それだけはだめだ。
彼女たちには戦う術が少ない。
いざって時に身を守れないのでは危険すぎる……。
そう思っていたのだが……。
「あの、キューラちゃん……」
おずおずと差し出されたのは一つの精霊石だ。
「いらないと思うけど、光る精霊石……ランタンの代わりになるから」
「助かるよ」
俺はそれをありがたく受け取るとイリスに礼を告げた。
するとヘレンは腕を組んだまま。
「それで、いつ迎えに来るんですか?」
と不満そうだ。
そりゃそうか……彼女には戻る場所がある。
だが、そこに戻れないとくればいつ戻れるのか? それが気になるはずだ。
「魔王を倒したら必ず……」
俺は正直に答え、彼女の眼を見つめた。
すると溜息をつかれてしまったが……。
「なるべく早くお願いします」
「ああ、分かった」
そう言うともう何も言わなかった。
普通ならそんなことできるはずがない! というのが貴族だろう。
そして、勇者の奇跡に頼るはずだ。
だが、彼女はそれに頼ることはなかった。
そんな彼女のためにも早く魔王を倒さなければならない。
魔王さえいなくなれば……俺達の罪も消えるかもしれないからな。
そう考えつつ、俺は仲間を連れ町の門をくぐる。
彼女たち二人とはここでお別れだ。
だが……仲間であることには変わりがない。
「行こう! 皆!」
俺は残った仲間……。
クリエ、ファリス、チェル……トゥスさんそしてレラ師匠に爺さんに告げた。
本当ならここにカインが居るはずだったのにな……。
そう考えると泣きそうになってしまった。
だが、彼の死も無駄にはできない。
こんなところで立ち止まってられないんだ。
そう決心をつけ、歩き始めたのだった。




