417 眠れない夜
「明日の朝、出発する」
俺はそれだけを告げてこの話は終わりとした。
そして、ベッドへと潜り込む。
卑怯に見えるかもしれない。
だが、事実ちゃんと寝れるのはこれから数少ない機会になってしまうだろう。
ならちゃんと休める時はしっかりと休んだ方が良い。
「キューラちゃん」
そう言ってベッドにもぐりこんでくる気配があった。
すると――。
「あ!」
小さな声が聞こえ、もう一人入り込んできた。
何事かと思い瞼を開けるとそこにはクリエとファリスが居る。
なんでこうなった!?
そう思いつつ……。
「「うぅぅー!」」
二人はなぜかうなり声をあげる。
いや、本当なんでこうなったんだよ!?
「あはは……」
チェルの乾いた声が聞こえるが、助けてはくれないようだ。
トゥスさんは? と思って首を動かすが、彼女は既に別のベッドに入っているうえに手を振ってきた。
背中を向けて器用に……俺が彼女に助けを求めるのがまるで分っていたかのように……。
そんな事を考えていると前に居るファリスは服の胸のところを掴み頭を摺り寄せてきた。
く、くすぐったいんだが?
そんな事を言う暇もなく、今度は背中に柔らかい物が当たる。
いや、これって深く考えなくてもあれしかないよな?
「あ、ああの? クリエさん? 何か当たってるんですが?」
俺は恐る恐るそう言うと彼女の顔は見えなかったが……。
「……当ててるんです」
ちょっと待て、まさか現実で漫画と同じセリフを実際に聞くとは思わなかった。
だが、まずいな……。
これはその……緊張して寝られない。
この頃クリエの暴走が少なかったからすっかりと油断をしてしまっていた。
だが、もう逃げ道はない。
というかなんでファリスまで参加をする!?
まったく意味が分からないんだが……。
「ずっと我慢してたんです……」
いやそんな事を言われましても……。
ま、まぁこのところ彼女の身の回りにはいろいろ起きて不安だっただろうが……。
これはそれと関係あるのか?
いや、この頃確かにおとなしかった。
急に抱き着いて来たり「うへへへ」と言ってきたりすることは減っていたのだ・
「だから……」
普段の彼女とは違う。
そう考えると言っている通り我慢をしていたのだろう。
なら、俺は……。
これ以上何かを言うわけにはいかないな……。
心臓はバクバクするし、正直寝れたもんではない。
だが……。
「ひゃぁ!?」
そう思っていると突然変な感触がし俺は声を上げる。
前で何か触ってきた!?
だが、ファリスの手は俺の胸にある。
彼女が変なことをしているようすはない……。
「ふぁ!? ぁ……」
何が起きたのか?
俺がそう考えていると今度は首筋に息がかかる。
やけに暖かく俺は思わず声を出してしまい。
顔が赤くなるのを感じた。
なんて声を出してるんだ……。
っていうかなんてことしているんだこの百合勇者!
「ク、クリエ!! いい加減に――やめっ!? ぁ、や……」
今度は舌を這わせてきやがった!?
くそう!! こっちが抵抗できないのを良いように使いやがって!!
「うへ、うへへへへへ……クリエちゃんなんか色っぽくなってます」
百合勇者はただの百合勇者じゃなく変態百合勇者に転職したようだ。
いや、ダウングレードと言ったほうが良いか? いやいや、元々だったか……。
とにかく――どうにかしてクリエをどかそう。
「キューラお姉ちゃんも疲れてる。休ませないとだめ……!」
そう思っているとファリスは俺の胸から顔を少し上げクリエを睨みながらそう言った。
するとクリエは……「うぅ……」とうなり声をあげる。
な、情けない話だが、この場は彼女に助けられたようだ。




