379 神の子……
その日の夜。
俺は空を眺めながら考え事をしていた。
その理由はクリエの事だ。
彼女は勇者と言われながらそれとは違う力を与えられ悩んでいた。
その力を与えた人は本物の神だという……。
「分らない事ばかりだな」
しかもクリエは本当に神の子で魂は死産した赤子の中に入るというんだから更に頭がこんがらがってくる……。
ただ唯一分かっている事はある。
「神は矛盾している……」
そう、今俺が口にした通り神であるガゼウルは矛盾している。
我が子を傷つけれられてその事に怒っているのは分かるんだが、どうもおかしい。
ならなぜその子供に奇跡を叶えたら死ぬなんてピーキーな能力を持たせたのだろうか?
それじゃ使い捨ててくれ! なんて言っているのと同じだ。
実際その所為でクリエ達、勇者は今までひどい目に遭って来たのではないか?
だが……。
「もし考えられるとすれば……」
その理由は修行ではないか? と俺は考えた。
なぜか? 簡単だ……前の世界でも人生は修行だ。
なんて言う人が多く居た。
確かにそうだ、色々な人に出会い様々な体験し、俺達は性格を作り出す。
だが……ここは地上だ天界でも同じと言う事は確認できない。
「キューラお姉ちゃん……」
「ん? ああ、ゴメン寝ようか」
灯の所為で寝れなかったのだろう訴えるような声がファリスから聞こえた。
俺は急いで明かりを消しベッドへと潜り込む。
その時、俺の目に映ったのは疲れたのかすぐに寝てしまったクリエの寝顔だ。
すやすやと寝息を立てる彼女は時折顔を歪め、胸が締め付けられる。
抱きしめてあげたら少しはましになるだろうか?
そんな衝動をさえつつも彼女とベッドの間からようやく逃げるライムを見つけた。
ライムは俺と目が合ったようでぴょんぴょんと跳ねながら俺の方へと近づいて来た。
クリエを守るように告げた使い魔ではあったが、たまには休んでもらわないとな。
そう思った俺はライムを抱き寄せ瞼を閉じた。
「全く……本当に、色々ある……」
俺はそう口にして夢の中へと落ちる。
今日はアウクと話せるだろうか?
そんな期待を胸にしたが……。
彼の夢は一切見なかった。
翌朝、俺は身支度を整えるといつも通り仕事をする。
面倒だが、目を通さないといけない書類が多い。
「相変わらずこのままだと食糧難か……いや、今も十分にあるわけじゃない」
それは分かっていた事だが、直面すると困る部分でもあった。
街の人は確実に増えてる。
このままだと餓えるしかないだろう。
だが、今は他の者しい仲間もいる。
これが解決するのは最早時間の問題と言って良いはずだ。
「次は……」
不審人物の報告書。
流石に目だって見つかるような事はしない様だ。
目撃情報が全くないわけでもないが、特に気にするような情報も無い。
壁の方も今のところは順調だ……これさえ完成すれば魔物の脅威も少しは防げるだろう。
「問題は……」
これからどうするか? だ。
俺達の目的は魔王討伐。
つまり、このままずっとここで手をこまねいている場合ではない。
確かにノルンに託された街でどうにかしてやらなきゃいけないとは思う。
だが、クリエの話を聞く限り、さっさと魔王を倒して損はないだろう。
その上で神様とやらに会う方法を探す。
何故か? その理由は簡単だ。
彼は娘であるクリエに世界の崩壊を義務付けた。
だが、その所為で彼女は傷ついている……。
それは俺にとっては許されない事だ。
「例え、神が相手だろうと……」
実力不足は分かってる。
正直勝てる見込みはない。
だが……それでも俺の中にあるのはたった一つの事だ。
「クリエを泣かせるなら倒す……それだけだ」
俺は彼女を守ると約束した。
その障害が何であろうと関係はない。
だからこそ、相手が神だからと言って引く事は出来ない。
とはいえ……。
「……まずは街をどうにかしないとな」
問題はそこへと帰ってきてしまう。
今できる事はそれと後は彼女の精神面でのケアだろう。
人を殺めてしまった。
その事をずっと気にしているクリエが今後、その優しさの所為で壊れてしまう。
なんて事は十分にあり得るからな。
彼女は守る。
それがどんな結果になろうとも関係はない。
俺はただそれだけの為にここまで来た。
もう……魔王を倒すだとか魔王になるだとかはそのための手段でしかない。
「…………さてと、次は」
だからこそ、今は目の前の書類を片付けクリエの様子をすぐに見に行きたい。
ただ、そう思った。
思ったより時間がかかった……。
俺は伸びをして固まった体をほぐす。
そして、立ち上がるとクリエが居るであろう部屋へと向かった。
彼女はあまり出歩かないからな……いつもの部屋というか寝室に居るはずだ。
ファリスもそこに居るだろう。
そう思いつつ足を向かわせようとしたその時だ。
「キューラ様」
「ん?」
最高にタイミングの悪い時にフリンが部屋に尋ねてきたのは……。




