367 帰還
キューラ達がスクルドへと帰っていく中……。
彼女達の背中を見つめる男が居た。
彼は気配を消しじっと後ろを見つめているのだ……。
そして、悶えるドラゴンへと目を向けると溜息を一つ吐いた。
「使えんな、やはり子供じゃ無理か……」
そう言うと捕食をしているスライムへと彼は目を向け……。
恨めしそうに睨んだ。
「私にはここまで大きなものは処理できん……まして、今処理すれば面倒か……」
そういうとその場から去り、それに気が付いた様子のドラゴンは最後の力を振り絞り鳴き声をあげた。
しかし、彼は振り返る事無く……。
「使えんゴミを救ってやるとでも思ったのか? 魔物は魔物、使い魔は所詮ただの駒に過ぎん」
それだけ言うとドラゴンを助ける事無く彼は森から消えるのだった。
俺はスクルドへと無事に帰ることが出来、尚且つ屋敷の中へと入るとほっと息をついた。
そして、扉にもたれかかるようにずるずると座り込むと同じようにチェルも座り込んだ。
「こ、怖かった……」
恐らくはドラゴンの事を言ってるのだろう。
彼女が怖がる理由も分かる。
スライムと並んでいる凶悪な魔物ドラゴン。
だが、見た目がまだかわいいスライムとは違いドラゴンは決してかわいいとは言えない。
だからこそ、怖がるものが多い。
「と、とにかくこれで大丈夫のはずだ」
俺はそういうと兵士の方へと目を向けた。
すると彼は何故か顔を赤くしており一点を見つめている。
俺の事を見てるみたいだが……。
そんな事を考えているとチェルが彼の間に入り込み……。
「何見てるの?」
何故か怒ったような口調でそう言った。
「あ、いや……何でもありません!」
彼はしどろもどろになりながらそう言うとチェルは大きなため息をつく。
そして、俺の方へと目を向け……。
「キューラちゃんもっと気を付けてね、スカートなんだから」
「……ああ!」
なるほど、そういう事か!
ようやく合点が行った俺は姿勢を正し立ち上がると……兵士は慌てて頭を下げる。
いや、うん……気持ちが分からんでもないから何も言えないんだよな。
「頼みがある、これから冒険者を募って調査隊を湖に派遣してくれ」
「は、は?」
てっきり怒られると思っていたらしい兵士の一人は首を傾げた。
「ドラゴンの子供がたった一匹であんな所に居るはずがない、親か連れてきた誰かが居るはずだ」
そう言うと彼らは顔を見合わせ……。
「良いな? 頼んだぞ」
俺がそう言うと彼らは姿勢を直し――。
「はっ!」
と敬礼をした。
赤い顔をした彼らが去って行くのを見て、俺はほっと息をつく……。
これで水は問題ないはずだ。
だが、残る問題はまだまだある。
「次は……建物と食料か……」
人が住むための建物。
今は簡易的な物が立っており、一応は雨風を防げるようにはなっている。
だが、このままでは駄目だ。
いずれ不満が爆発するだろう。
だが……。
「材木の確保か……」
出来れば今生えている木々を伐採するのは避けたかった。
何故かというと森などは天然の要塞になりえる。
戦いが始まる事は分かっているんだ……。
わざわざ相手が移動しやすいようにするのは得策とは言えない。
「何か問題があるの?」
「ああ……」
とは言え、鉄筋コンクリート何て物が作れる訳もない。
作れるとしても俺は作り方を知らないし……。
「……仕方がないか」
俺は溜息をつく……何故なら古材になりそうなものも無いからだ。
街を孤児院まで伸ばす事を決めたのもある。
「次は木材だ、孤児院までの魔物の掃討も急がせる。間にある木々は伐採、それで土地と材木が確保できればいいんだが……」
俺がそう呟きながら歩き始めると目の前からフリンが歩いて来た。
彼は何やら書類を持ち、うんうんと頷き……。
「今の言葉は決定事項でよろしいですか?」
「ああ……もし材木が足りない様ならすぐに言ってくれ」
「畏まりました……では、その様に手配いたしましょう」
彼は丁寧な礼をすると持っていた書類に何やら書き込み、身を翻す。
そうしたかと思ったらすぐにこちらを向き……。
「キューラ様、執務が残っておりますので今日中に」
「……まじか」
彼の言葉に俺はがっくりと項垂れる。
するとトゥスさんとチェルは小さく笑い始めた。
執務が終わると外は真っ暗だった。
街の明かりだけが目立ち、俺はそれに見とれていた。
この街は綺麗だ……。
人が良く、犯罪も少ない。
そして、なによりノルンと言う領主のお蔭か街の人が一致団結しているようにも見える。
俺は彼を超える事は出来ないだろう。
だが、彼らの期待には応えてあげたい。
ノルンが守りたかったこの街をそう、易々と滅ぼされる訳にはいかない。
だが、俺達がいる事でこの街は狙われてしまう。
かと言って俺達も寝床が必要だ……転々とする訳にもいかないからな。
「寝るか……」
俺はそう呟き執務室から寝室へと移動をする。
ベッドの上にはファリスが横たわっていた。
だが、クリエの姿が見えず俺は彼女を探す……。
すると彼女は窓際に立っていた……月明りに照らされた彼女は悲し気で……とても美しかったんだ。




