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356 スクルドと言う町

 私は目の前に広がる街を見て呆然とした。


「………………ここが、私の?」


 街なのだろうか?

 私はてっきり小さな町だと思ってたんだけど……。


「キューラ様、おかえりなさい」


 どうやら本当に私の街、らしい……。


「えっと、あの……」

「キューラ様?」


 私が困惑していると彼は心配そうな顔をした。

 記憶が無い、なんて言ったらどうなってしまうんだろう?

 私はその事が気がかりだった。

 だけど、他にどうする事も出来ない。

 事実記憶の殆どは無い。

 だから、諦めて口にしよう。

 そう思ったんだけど……。


「そういえばカインさんが見当たりませんね、彼はどうしたんですか?」

「カイン……」


 もう一人の仲間らしい人。

 その人はどんな人だったんだろう?

 そう思いながら彼の顔を思い出そうとした。

 すると……。


「あ……」


 脳裏に浮かぶのは彼の最後だけ……。

 壁に叩きつけられて、彼はありえない方向に曲がっていた。

 それを見たのに……私は彼が生きているというわずかな希望を望んだ。

 そこまで思い出すと、急に私は吐き気を覚えた。

 気持ち悪いと思った訳じゃない……。

 悲しくて悔しくて……怖くて、どうしたら良いのか分からなくて……。


「うぅ……」


 口元を押さえその場に膝から崩れた。

 目元からは涙があふれ……服を濡らしていく……。

 私は……彼の事が好きだったのだろうか?

 元の記憶が無いから分からない。

 だけど、こんなにつらい気持ちになるという事は大事な仲間だったんだ。

 きっと、そのはずなのに……。


 顔が思い出せない。


「キュ、キューラ様! す、すみません、私は何か……」

「今、彼女は記憶が混乱しててね……落ち着くまではまるで人が変わったようになると思うよ。そっとしてやりな」


 トゥスさんの声はしっかりと聞えた。

 そして、私は彼女達に支えられ……街の中を歩く……。

 周りの人は私が引きつれたスライムを見て感心したかのような声を出していた。


「本当にスライムを捕まえてきたぞ……」

「流石はノルン様が認めた方だな、これで水……いずれは作物を作るのにも困らないな」


 どうやら私はその為にスライムを連れてきたらしい。

 だけど、そんなのはもう、どうでも良かった。

 どんな理由があっても私は……。


「…………」


 黙っているとファリスに手を引かれ私は歩きだす。

 もう私にはできる事なんてない。

 この街の領主だったらしいけど、それでも……。


「キューラお姉ちゃん、無理は駄目……」


 彼女にそう言われて私は首を縦に振った。

 無理は駄目、確かに……今の私には無理が出来ない。

 そもそも、無理ってなんだろう?

 とにかく私は……犠牲になった人を思い出さなきゃいけない。


「…………」


 せめて、カインさんの事だけでも、そう思っても……思い出せないのは辛いよ。


「キューラちゃん……」


 途中チェルさんが私を心配そうな目で見てくる。

 だけど、私は彼女を見ると申し訳なくなった。

 彼女にとっても大事な人。

 その人を忘れてしまった事……。

 それも、私は本当に領主だった……無責任にもほどがある。


 だけど、記憶を取り戻す術なんて無くて……。

 私は連れて行かれるまま自分の部屋へと辿り着くと……。


「今日はもう寝な」


 というトゥスさんの言葉に従った。

 ベッドへと入ると私を見下ろす女性が目に入る。


「クリエお姉ちゃん」


 彼女の名前を呼んだけど、彼女は何の反応もしてくれない。

 私が大事な事を忘れたから呆れているのかな?

 せめて一言何か言ってほしい。

 そう思っても何も返ってこない。

 私は不安を覚えつつも逃げるように目を瞑った。

 そうすると色々な考え事が頭に浮かんだけど……。

 やがてそれは闇の中へと消えて行った。








 目を覚ますと其処は綺麗な花畑だった。

 だけど一つだけお墓がある。

 一体どこだろう? そう思いながらお墓に近づくと……。


「腑抜けたな」

「……え?」


 急に声をかけられ私は驚き、怖くなってしまい思わず両手を胸の前に置く。

 辺りを警戒するけど、何もいない。


「だ、誰?」

「仲間が死に、心が折れたか? だが、それは冒険者にとっていつ来るかも分からん現実だ」


 その声はする。

 だけど、私の前に姿を現そうとはしなかった。


「何が守るだ……貴様にかけていたのは間違いだったか……」

「ど、どういうこと?」


 私の質問に彼は答えない。

 ただただ、一方的に呆れられている様だ。


「ねぇ、誰?」

「今の貴様には名乗る必要もない、弱者よ……お前は仲間が死ねば、自分自身で守ると言った女さえ守れないのか? そうやって殻に閉じこもって逃げるしかないのか?」

「ど、どういう……」


 私はそこまで口にして……ようやく何が起きたのかを思い出した。

 そうだ、私はカインを助けることが出来なかった。

 ノルンもあの偽勇者も……。


 そんな私にクリエお姉ちゃんを……クリエ?

 そうだ、私は……俺は……結局彼女を守る事さえ出来ていない。

 そう思うと悔しくて、辛かった……。


 逃げている。


 その言葉は俺の胸に深く突き刺さった。

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[気になる点] 私の前に姿を現そうとはしなかった」 ↓ 私の前に姿を現そうとはしなかった。 [一言] おや?最後の所の地の文の様子が……
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