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267 レラ師匠の教え

 レラ・スティル彼女に教えを乞うキューラ。

 しかし、何も教えることはないと口にする。

 だが、キューラは諦めず手合わせをし、実力を見てくれと口にした。

 その結果キューラはレラに敗北し……。

 そして、見事に師を得ることが出来たのだった。

 あれから数日、ファリスの方はすっかり良くなっていた。

 だが、その当時の事は覚えているのだろう、顔を赤らめて目を逸らされてしまう。

 俺の所為ではない、そう思ってもショックだな……。


「ぼんやり考えている暇があるのか!!」

「っ!?」


 俺はと言えばレラさん……師匠に稽古をつけてもらっている途中だ。

 当然、ぼんやりしていた俺はあっけなく叩かれてしまう。

 偶々見学に来ていたカインはそれを見て笑い、それが気に喰わなかったのだろう。

 ファリスはカインの足を踏んでいる。


「……キミは雑念が多いな」

「す、すみません……もう一度お願いします」


 呆れた様子の師匠に俺は頭を下げる。

 すっかりと、敬語を使われるのが慣れた様子の師匠は大きく溜息をつくと……。


「剣を使った戦いの基本は分かっているな?」


 と口にしてきた。

 俺は首を縦に振り答える。


「己の体重をかけて体当たりをするように……」

「それは体術だ、剣は己の腕の延長だと思うべきだ」


 俺の答えを遮り、彼女は言う。


「剣は自分の腕ではない。だからこそ腕のように扱うことが重要だ……さっき体重と言ったな? 剣の重さ……それを利用し使うんだ。力だけで無理やり振り回しても卓越した技術にはかなわない理由がそれだ」


 そうか……なるほど、確かにルイスの奴は力だけの分回しだった。

 それは素人同然の俺から見てもわかる。

 だが、逆にカイン達の動きは力だけとは思えなかった……それが剣の重さを利用するってことなのか……。

 専攻してたわけじゃ無いから、そこまでは詳しく知らなかったな。


「そして剣や体術……戦いにおいて重要なのは呼吸だ……特に体術は武器が無くとも己の肉体だけで出来る、しかし、それ故に相手の懐にどう踏み込むかが重要だ」


 そうだな、相手は武器を持っている訳だ。

 単純に剣を持たれただけでリーチが違う訳だから、身軽な分不利にもなる。


「だからより呼吸を意識しなければならない」

「呼吸……?」


 俺が繰り返すと彼女は首を縦に振る。


「そう、呼吸だ。相手がどう動き、どう攻めてくるかを予測し、それに呼吸を合わせ懐に潜り自分に有利な状況を作り出す」

「………………」


 うん、言わんとしている事は分かる。

 だが、無茶も良い所だ。

 予測するというのも分かる、だが俺は剣士じゃない……魔法使いだ。

 なんて事を単純に言えたらどれだけ楽だっただろうか?

 俺の切り札は間違いなく魔法。

 しかし、その魔法には体術が必要とされている。

 つまり、彼女の言う呼吸……。

 それを身に着けない限り使いこなせるわけがない……。


「なんだ、諦めるのか?」

「い、いえ……」


 俺は師匠の言葉に首を振り答えると、彼女は満足そうに頷き木剣を構えた。


「では、続けようか」

「はい!!」


 それを合図に俺は一歩前へと踏み出すが、彼女はあっさりと避け。


「直進的過ぎる」


 溜息交じりの言葉と共に木剣を俺の頭に軽く振り落とすのだった。


「~~っ!?」


 痛い、なんてもんじゃない。

 手加減をしてくれているのだろうがレラ師匠の一撃は重い。

 しかし、それにしても……。


「追いつける訳が無い……」


 今言った言葉は師匠にという訳ではないターグの使っていた疾風の型。

 それを再現したつもりだが……俺はターグに全く追いつける気がしないのだ。

 当然、彼以上の実力を持つカイン、レラ師匠、クリエは夢のまた夢だ。


「追いつける訳が無いだろう? 今のは疾風の型だな? 丁寧だ……だけど、キミでは扱えない」

「ぅぅ……」


 彼女の言葉に俺は項垂れる。


「いくら初心者が使う技だとは言え、それでも剣士と魔法使いでは技術が違う。君は確かにこれまで色々と旅をしてきた。この街に来てその腕を振るってくれた」


 しかし、俺の様子を気にする事も無く、彼女は言葉を続ける。


「だが、剣の才能は無い」

「だな、俺から見てもキューラに剣は使えないぞ!」


 カインよ、そんな事言うとうちの妹さんが……ああ……殴られてる。


「でも、俺は実際剣を使った事が……」

「だが、それも君から特別製だと聞いているぞ?」


 ああ、そうか確かに用意してもらったのは精霊石で加工した軽い剣だ。

 普通の剣は重すぎるという事は無いが、扱いづらいんだよな。


「やはりキミは魔法を鍛えるか……」

「それじゃ駄目だ!!」


 魔法自体は教本がある。

 自分で練習の仕方も分かっている。

 だから強くなれる……なんて言いきれる訳ではないが、自信はある!

 だが、それよりも俺に必要なのは……。


「分かっている。だが、どうして剣もなんだ?」

「……そりゃ……」


 そう言われると俺は答えに困ってしまった。


「君は自称勇者を殴り飛ばしたと聞いたぞ? 体術だけじゃ駄目なのか?」

「い、いや、だって……」


 剣で戦うのは……。


「特に理由はないのか?」

「…………」


 答える事は出来なかった。

 そうだ、としか言いようが無かったからだ。

 剣はクリエに貰い、トゥスさんが改造してくれた大事なものだ。

 だが、それはもうない。

 俺はそう思いながら身に着けているペンダントを握った。


「なら尚更剣を学ぶのは愚策だ」


 彼女はそう言うと大きく溜息をついた。

 そして……。


「だが、話に聞いたキミの魔法から察するに体術は学んだ方が良い、剣を覚える時間が減る分、教え込む時間が増える」

「レラ師匠?」


 俺がそう呼ぶとすっかりその呼ばれ方を忘れていたのだろうか? 顔を赤くした師匠は……。


「と、とにかく! ワタシはキミを見捨てるつもりはない! 剣を捨て、体術を極めた方が良い」


 と言い、突然頭を撫でてきた。


「だ、第一、妹のような可愛らしいキミを見捨てて何かあったらきっとワタシは後悔する!」


 その後何かもごもごと言っていたが、それは聞き取ることが出来なかった。

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