256 邂逅
キューラは勇者ルイスへと自身の切り札である魔拳を使い勝利を収める。
怯え切った勇者ルイスは従者との契約を破棄するのだった……。
「何をしている!!」
騒ぎを聞きつけたのだろう、兵士達は人混みをかき分け此処へとやって来た。
そして、俺達へと目を向けると。
「これはどういう意味だ?」
と問われた。
「あーそういえば、どうしたんだ?」
カイン……お前、後先考えずに突っ込んできたのか? そのお陰で助かったとはいえ、チェルがまた頭を抱える羽目になりそうだ。
「おやおや、勇者殿が情けない姿になっていますな」
そう口にしたのは遅れて此処へと来た煌びやかな服に身を包んだ男だ。
彼は俺達の方へと目を向けるが、その瞳は何処か軽蔑するような物だったがすぐに表情を変え。
「まったく、わが優秀な部下の連絡で来てみれば……大方彼女達に無礼をしたのでは? いくら勇者と言えどそんな事を許されるはずがない!」
大げさに手を広げた彼は勇者の方へと向くとまた表情を変える。
そう、軽蔑した物へだ……。
「それで……」
兵士はいつの間にか俺達の方へと近づいていた。
「何があったんだ?」
「あ、ああ……実は――」
勇者と呼ばれる者を相手にした。
それは罪深い事だろう。
だが、理由がある……その事を伝えなくてはならないと思い説明をした。
「その、宿で無礼をした謝罪の代わりに女性を要求されてな……支配人は拒否をしたんだが……危害を」
うんうんと頷く兵士は俺が話し終わると優しい目をしており。
「それは酷い目に合ったね、君も狙われた一人だと言うのに勇気がある……」
と言葉をかけられた。
それを聞いていたのだろう……。
「聞きましたか!? 皆よ! これが勇者……愚かな王貴族が奇跡の力なんて得体のしれない力に頼ってきた結果! 奴らは思い上がり自分なら何をしても良いと考える連中だ!」
思いっきり馬鹿にしたような表情でそう叫ぶ貴族。
彼は何なのだろうか? 今まであって来た奴らとは何かが違う。
勇者を馬鹿にしているのは同じだ……だが、犠牲になって当然と思っていそうか? と言うと違う気がする。
勇者への対応が気に入らないと言う点に関しては同じだろうが。
「人は人の力で生活すべきなのだ! 皆も分かっただろう? これが、勇者の! 実態だ!!」
そう叫んだ後……彼は俺達の方へと、いや俺へと目を向ける。
「ん?」
何故か嫌な予感がした。
すると彼は胡散臭い笑みを浮かべ……近づいて来て……。
「それでも勇者が欲しいと言うのなら、彼女の様な勇気ある者を勇者と呼べばいい!」
なんて言いながら俺へと手を向ける。
つられて周りの人達は俺を見つめ……。
「キューラお姉ちゃんが勇者? 魔王様なのに……」
訴えるようなファリスの言葉を聞いた王は笑い。
「それは良い! いずれ魔大陸を統べる王となる勇者だ!」
と声高らかに告げ笑う。
俺としては困る。
だが、彼はそんな事はどうでもいいのだろう。
「さて……そこの無礼者を牢へと連行しろ! 私が許可しよう!!」
勇者を指差し、兵士へと伝える。
だが、相手は勇者だ当然兵士はうろたえ……。
「し、しかし……」
勇者はある程度の事は許される。
そんな規則がある以上、下手に手を出して何か報復されるのが怖いのだろう。
「お前は我が兵士だろう!! そこの少女より勇気が無いのか!?」
俺へと指を向けた彼はそう叫び、兵士は慌てて勇者を捉える。
だが……。
「……私は悪くない、私は悪くない」
そんな呟きが聞こえ、勇者はがっくりと項垂れたまま連行されていった。
「ふむ」
貴族は満足そうに頷くと再び俺の方へと目を向ける。
そして、後ろに控えていた神官らしき女性を手招きで呼び寄せると……。
「彼女の腕の傷を治せ」
上から目線で彼女にそう命を下す。
神官は頷くと慌てて俺の方へとやって来て魔法を唱えてくれた。
「何故勇者と戦っていたのかは問わん、だが、よくやってくれた。世界に巣食う害虫からこの街を守ってくれたのだからな」
「害虫……だって!?」
俺はその言葉は聞き流せなかった。
確かにアイツは屑だ。
だが、それだって勇者として生まれたからそうなったに違いない。
だと言うのに害虫? ふざけるな!!
「ああ、いや、言い直そう。確かに勇者はこの世界を救って来た、だが私は思うのだ。……それだけで好き勝手やられては困ると……事実このところ生まれた勇者は大抵ああいった奴が多い」
彼はそう言うと溜息をつき……。
「少し前は女性の勇者が居たそうだ、その者は気高く、誇りがある者だと聞いていた。だが、何があったのか分からんが勇者ではなくなり、噂は聞かなくなったがな」
女性? 気高く、誇りのある? クリエのことじゃないだろうな。
確かに勇者としての素質は備えている。
誰かを守り、誰かの為に戦う……クリエは本物だ。
だけど気高くはないよな? 誇りはあるが……。
「そのような者があのような害虫と同じような事をするとは思えん、大方馬鹿な貴族が奇跡を使えとせがんだのだろう」
彼はそう言うと皮肉気に笑い。
「さて、皆の者! 今宵は宴をしよう! 今代の勇者を見たろう? あれでは魔王討伐など不可能だ! ならば我々は我々の勇者を立てようじゃないか……」
だが、すぐに表情を変えるとそんな事を口にしたのだった。




