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255 契約破棄

 魔拳の力を見せつけたキューラ。

 それに対し勇者ルイスは情けなくも子供のように喚き散らした。

 彼は自分が居なければ魔王を倒せないと言うが、キューラは自分が倒し魔王になる事を宣言する。

 そして、彼に従者達との契約を破棄するように告げるのだった。

 ガチガチと歯を鳴らし怯える勇者。

 対し俺は呆れつつも低い声を作り……。


「余計な事はするなよ? 俺は何時でもお前を殺せるんだからな」


 脅しをかける。

 だが、それを聞いて何処か惚けた表情になるファリス。

 おいおい、この子は何を考えているんだ?


「えへへへ……」


 笑い方こそ女の子っぽいが、何故かその表情がクリエを思い出させる。

 本当に何を考えているんだ?


 だが、そんな事は今はどうでもいい。

 大事なのは……。


「その子達の従者の契約を早く破棄しろ」

「――――!?」


 彼は慌てて立ち上がろうとするが、先程の一撃が余程怖かったのだろう。

 腰が抜けている様で必死に這いずりながらエルフの少女の元へと向かった。


「わ、わわわわわ我……今、我が父ガゼウルの名のもとに契約を終了する……!!」


 すると少女の身体に光が灯りそれは徐々に散り始め……やがて光は消えて行った。


「…………」


 あれで契約解除って事だろうか?

 案外呆気ないな……。


「後の二人もだ」

「あ……ああ……」


 怯えながらもこちらへと這いずって来た勇者は剣士との契約を破棄した。

 続いて残るのは僧侶の女の子だ。

 彼女の元へと近づいた勇者は固まり。


「何しているんだ? 早くしろ」


 俺は急かす。

 すると、彼は情けない表情で……。


「た、たた……頼むこいつはプティカだけは……」

「早くしろ」


 その子に特別な思い入れでもあるのだろうか?

 だが、自分だけはと言われた少女はその言葉を聞くなり怯えた表情になった。


「こ、心を入れ替える、たのむこいつだけは……」

「人はそう簡単に変われない、早く破棄しろ」


 彼女だけは良いなんて俺は言うつもりはない。

 何故ならそのプティカと言う少女は俺の方へとすがるように視線を送ってきたからだ。

 だが、そんな事にも気が付かない男は――。


「た、頼む……頼む!」


 拝み倒して来た。

 気持ち悪いな……。


「カイン、ファリス……」


 俺は溜息をつき二人を呼び寄せる。


「「…………」」


 二人は俺の願い通りに近くに来てくれた。

 さて……。


「さっきも言ったが俺は何時でもお前を殺せる……お前とは違ってこっちには信頼できる仲間がいるんだ……あまりくどいと俺も切れるぞ?」


 先程よりも低く出したつもりの声はやはり可愛らしく、カインとファリスがピクリと震えた。

 二人共笑ってるようだけど……後で覚えてろよ? っと言いたい所なんだが、二人相手じゃ俺は何も出来ないな。

 悲しくなってきたぞ……。


「契約者死んでも、従者は死なない……それは分かってるよな?」


 だが、今は悲しんでいる時ではない。

 俺は精一杯の脅しを彼に伝えた。


「そ、そいつは僕の大事な女なんだ――」


 何を言ってるんだ? こいつは……そうならもっと大事にしてやれば良い。

 なのに、こいつがやってきた事は……。


「ひ、人殺し! 誰が――誰が貴方なんて好きになると思ってるの!!」


 俺が口を動かすよりも早く、悲鳴に似た怒鳴り声をあげるのは……プティカと言う少女だ。

 彼女は大粒の涙を流しながら叫ぶ。


「私の……私の家族を――村長も、アッシュも殺したくせに!! 勇者なんて名ばかり! 貴方の所為で貴方のわがままが通すために皆殺したくせに!!」


 なるほど……な……。

 従わない奴は殺して来たか……勇者だから、そう言って許された事もあるのだろうか?

 だが、人殺しは人殺し……例え勇者でも許されないと思うが、貴族のいない村だったのだろうか? それなら仕方のない犠牲。

 そう思われてる可能性だってある。


「……救えない屑だな」


 だが、俺から出た答えはそれだけだった。

 クリエなら間違ってもそんな事をしない、彼女は本当の意味で勇者だ。

 死ぬのが怖いくせに、誰かを助けずにはいられない。

 誰かの為に戦う彼女は勇者なんだ……だが、同じ金髪に金色の瞳を持つ彼はどうだ?

 屑だ……誰が見ても、誰が聞いても……こいつは屑でしかない。


「ふ、ふざけるな! あの男よりも早く巣くっていた魔物を倒せばお前は僕の女になるって話だっただろ!」


 弱弱しく叫ぶ声に対し、イヤイヤをするプティカ……。


「私は見てたの! 貴方が卑怯にもアッシュを背後から襲って殺した所を! 何が魔物にやられたよ! 貴方が殺したんじゃない!!」


 なるほど、大方村側は彼女を渡すつもりはなかった。

 そこでそのアッシュって腕の立つ剣士だか冒険者との勝負をさせた。

 見た所彼女は僧侶、神聖魔法を使えるだろう……小さい村なら僧侶だって貴重な人材だ。

 相手が勇者だからと言って「はい分かりました」と渡す訳にはいかないだろう。

 ましてや彼女の先ほどの言動。

 きっと彼女は村の住人が好きで、そのアッシュって奴が好きだった。

 そしてその反対で住人やアッシュって奴も彼女の事が好きだったはずだ。


「最低な奴だな……男なら正々堂々と真正面からやれよ! それともそんなに自信ないのか!」


 カイン、はっきり言い過ぎだ。


「気持ち悪い、キューラお姉ちゃんに近づくな。呼吸しないでほしい……キューラお姉ちゃんが吸ったら何か変な物が移りそう」


 余程気分を害したのか、二歩後ろへと下がったファリスは俺への様付けを止めたは良いが、そんな事を口にする。

 君もなんというか抉る様な言葉だな。


「ふ、ふざけるな! お前達なんて僕にかかれば……」


 そして、プティカを手放すことが余程嫌らしい勇者殿は騒ぎ喚く……。

 いい加減面倒になって来たな。

 俺は一歩前へと歩き出す。

 すると男は身を守る様な仕草をし……。


「ひっ!?」


 情けなくも小さな悲鳴を上げる。

 だが、関係ない、俺は近づきもう一発魔拳をお見舞いしてやる。

 まだ殺すつもりはない。だが、俺は――もう、迷わない。

 やる事はただ一つ、契約を破棄をさせる事だ。

 それが出来ないというのなら……覚悟はもうしている。


「次は無いぞ?」

「あ、あああ!? ああああああ!!」


 余程痛かったのか、その場でゴロゴロと悶える男を見つつ、俺は魔法を解く。

 焼けた腕に風が当たり痛いなんてもんではないが、気にする必要ない。

 後で教会にでも行って治してもらえばいい、幸いそれほどひどい火傷じゃないしな。


「死にたくない! 死にたくない!!」

「だったら分かるだろ?」


 俺がそう言うと慌てて男は立ち上がり、プティカの傍へと転びながら近づいて行く。

 そして……ようやく彼女は解放された。

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