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245 宿へ

 街の外で検問の列へと並ぶキューラ達。

 ようやく近くまで来たという所で検問から逃げてきた男にぶつかられてしまう。

 そのお陰もあり、兵士と話す時間が出来たキューラは彼のお蔭で無事ファリスと共に門を抜ける事が出来るのだった。

 馬車に乗って来たこの街は名前も知らない街だ。

 ファリスは来た事があるだろうか?

 そう思い、彼女の方へと向くと……。


「なに?」


 首を傾げている。

 やけに妖艶なのはワザとなのだろうか? というかここまで幼いのにこう、なんというか……ませていると心配になってくる。


「……この街は知っているのか?」


 俺の言葉を待つ少女に尋ねると彼女はゆっくりと首を横に振った。


「少なくとも中央都市じゃない」


 何度もファリスは中央都市と言う言葉を使っているが大都市ユミルの事だ。

 だが、恐らくそこにクリエは居る。

 予定ではエルフの森アルセーガレンへと向かうはずだったが……どう足掻いても通らなければならない場所だ。

 ここが何処なのか、分からないが……別の意味でもユミルに向かわないといけないな。

 だが……願わくばここがアルセーガレンに近ければ嬉しいと思うが……まずそれは無いだろう。

 もしそうであればあの監獄の街に行くまで俺達はどの位長い間気絶していた事になるのだろうか?

 考えただけでも恐ろしいし、まずファリス達が追い付ける訳が無い。


「……なんて街なんだろうな? ここ」


 と思っても待ち人に話しかけて「ここはナントカカントカ! ようこそ!!」何て言うNPCは居ない。

 聞けば教えてくれるだろうが……。


「俺達は今結構みすぼらしいからな……」


 着れない訳じゃないがボロボロの服、荷物には汚れた毛布。

 武器も防具も無い。

 身に着けているもので綺麗だと言えるのはペンダントだけだ。

 いや、むしろこれだけ残っていたのは幸いだ。


「……大人しく宿に向かおう」


 俺はファリスにそう言うと逸れないように手を繋いで歩き始めた。

 するとファリスは……。


「えへへへ……」


 と嬉しそうに笑う。

 先程と違い子供らしい笑顔に俺はふと疑問を感じた。

 この子と出会ったのは魔王の仕業だ。

 だが、その時にはもう一人だった。

 彼女の家族は一体どこに居るのだろう? 俺だったらこんな可愛らしい子供がいたら大事に大事に育てると思うんだが……。

 だから捨てたなんて事は考えにくい。

 だが、一緒に居ないってことは……彼女の才能に気が付き欲しくなった魔王が両親を殺し奪った?

 なんて物騒な事を考えてしまう。

 だが、それさえも可能なのが魔大陸だ。

 欲しい物は何でも奪えば良い……金、地位、名誉、そして人の命さえも……。

 そんな土地で育った彼女だからこそ魔王の追っ手を倒した後は俺に懐いてくれているのかもしれない……って思うが……あまり深く考えない方が良いな。

 だってそうだろ? いくら法律がそれで良いと言っても、考えたことが本当ならこの子は一生の傷を心に負っているのだから……。


 そんな事を考えつつ、俺は俺達は……兵士の教えてくれた宿へと向かい。







「ここか……普通、だな?」


 宿へと着いた感想はそれだった。

 いや、失礼だとは思うが宿と言ったらやっぱり大きい物を想像する。

 というか、今までだってそうだった。

 だが、目の前にあるのは綺麗な建物ではあるが民家より少し大きい程度。

 宿である事を示す看板はついているから間違いないだろうが、もしなかったら分からない。

 そんな宿だった。


「入ってみるか?」


 俺はファリスへとそう伝え、一緒に扉をくぐる。


「……わぁぁあ!」


 歓喜の声をあげたのは俺ではなくファリスだ。

 彼女は周りをキョロキョロと見始めた。

 それもそうだろう、外見からは想像がつかない程綺麗な内装。

 まるで高級ホテルとでも言った方が良いだろう。

 そんな事を考えていると、きっちりとした服に身を包んだ初老の男性がこちらへと近づいてくる。


「何用ですかな? 見た所、お泊りではなさそうですが……」


 そりゃ見た目が見た目だし、こんな高級そうな……いや、高級で間違いない宿に泊まるようには見えないな。


「こんな格好ですみません、実は――」


 俺は何度も口にしたゴブリンに襲われた設定で男性へと話す。

 そして――。


「門でこちらで住み込みの従業員を探しているとの事でしたので……路銀を集めたく来たのですが……」


 俺はそこまで言って周りを見る。

 客が何人かいるが、皆綺麗な身なりだ……嫌味な感じがしない事から貴族じゃないか、それとも貴族は貴族でもそう言った人もいるのだろうか?


「なるほど、それは大変でしたね……」


 こんな身なりだというのに追い返さずに話を聞いてくれた彼の対応にも好感が持てる。

 お客の前だとは言っても普通は追い出してもおかしくはないはずだ。

 それに客も客で「みずぼらしい! 追い出せ」と言う言葉は言ってこなかった。


「ですが、お嬢さん達」


 だが、それとこれとは話が違うよな、俺は断られた事に当然だと思い、頭を下げ。


「わかりました、すぐに帰ります……」

「……え?」


 ファリスは惚けた声を出している。

 彼女には悪いが、此処でもめても特は無い。

 そう思って顔を上げると老人も驚いた顔をしている……あっさりと帰る事がそんなに珍しいのだろうか?


「何を言っているのですか、此処はお客様の出入り口です。裏に出入り口がもう一つあります、そちらから入ってください、女性の者を向かわせます。椅子もありますのでそこでお待ちください」

「……はい?」


 返ってきた言葉は俺の予想しなかったものだった。

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