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俺は百合勇者の従者にならざるを得ない……  作者: ウニア・キサラギ
10章 勇者《魔王》として
240/490

230 光

 頼みの綱のライムが傷つき、更には迫りくる氷の魔法。

 ここまでかと思われたその時。

 キューラ達に迫る影があった……。

 それらはまるでキューラ達を守るかのように動き……。

 彼はそのうちの一人が嘗て敵であった少女であると気が付く……。

 突風が吹く……魔法と魔法がぶつかり合ったその影響だろう。

 すると3人を隠すローブは剥がれ……。


「だ、誰ですか!?」


 ヘレンは焦った様に声を張り上げた。


「……なんで、なんで?」


 そして、クリエは彼らを見るなり、信じられない物を見るかのように涙を流した。


「駄目なんです、何で皆……」


 彼女に見覚えのある人物。

 ファリス……チェル……そして――。


「……カイン? 目を覚ましたのか……」


 そこに居たのは嘗て俺達を窮地から救った男。

 彼はまるで話に出てくる勇者や主人公の様な立ち振る舞いで……。

 俺が本当に女だったらこの状況で何と思うだろうか?




 いや、男女は関係ないか……。


「……かっこいい真似をするんだな……」


 俺達がクリードを去る前、彼は目を覚まさなかった。

 だが、目の前にいるあの少年を見間違える事は無い。


「キューラちゃん!」


 チェルは俺達の事が余程心配なのだろう、此方へと寄ってくると……。


「この怪我! また――!」


 俺の腕を見て、怒ったように眉を吊り上げた。


「チェ、チェル?」

「チェル? じゃないです! 無茶をしたらクリエさんが悲しみますよ?」


 優しく、強い口調……間違いない、この子はチェルだ。


「ああ……ごめん」


 俺は素直に謝るともう一人の少女へと目を向ける。

 彼女は心配そうに俺の方へと目を向けていたが目が合うと慌てて向こう側へと向いてしまった。


「あの子は……ううん、あの子が皆の危機を教えてくれたの……」

「……え?」


 何だって……? あの子ってファリスの事だよな。

 どうやって俺達の危機を? だってあいつは……。


 俺が疑問に思っているとバサバサと言う音が聞こえ、それと同時に懐かしい声が聞こえた……。


「そりゃ勿論、キューラ……あんたが無茶してるってあんたの”使い魔”が”教えた”からだろう?」


 トゥスさんだ。

 銃声が聞こえないと思っていたらいつの間にか近くに来てくれていたのか……。

 いや待て……。


「使い魔? 使い魔ってライムは――」


 俺がまさかと思い見上げると其処には何処か遠慮がちな大烏の姿が見え……。


「レムス……?」

「何言ってるんだい? キューラ頭でも打ったのか?」


 トゥスさんは俺の顔を心配そうにのぞき込む。


「え? ……あ、あれ?」


 そして、最後の状況から考えても事情を知っているはずのイリスは混乱しており……俺とレムスを交互に見ていた。

 レムスはやはり負い目があるのだろうこっちに向かって来るという事はせずに遠慮をしているようにも見える。

 だが……。


「助かったよ、レムス」


 俺が言うべき言葉は時間はかかったがなんとか口にする事は出来た。


「皆も――」

「そう言うのは後だ後! この場を切り抜けるぞキューラ!!」


 俺の言葉が聞こえていたのだろうか? それとも予想してだろうか? カインの声が聞こえた。


「キューラちゃん、カイン君は本調子じゃないんです……起きた時に二人が危ないって聞いて飛び出していったんだから」


 それを聞き、ありがたいと思いつつも俺は少し笑ってしまった。

 カインらしい。

 だが、それは同時にチェルの胃を痛める原因でもあるだろう……それに……。


「この状況どうするんだい? 世界へ反抗した者が多すぎるんじゃないかい?」


 トゥスさんは悪人染みた顔で笑う。

 そうだ、確かにそうなってしまった……。

 このままでは皆指名手配だ……今の実力のままではいずれ掴まり売られるか死ぬかだ。

 でも――。


「やる事は一つ……クリエを守る……それで、この場から脱出する!!」


 俺は声を張り、告げる。


「キューラお姉様がそう言うなら…………それが命令だから……」


 何時の間に傍に来ていたのだろう、幼い少女は瞳を歪ませると初めて俺と遭った時の様な何処か恐ろしくも可愛らしい笑みを浮かべる。


「程々になファリス……お前が死んだりしたら意味がない、皆も自分の命はしっかり守れ!!」


 再び声を張ると、何故か真横から刺すような視線を感じた。

 俺がそちらの方を向くとクリエにじっと見つめられており、乾いた笑い声を上げると再び刺すような視線を感じる。

 今度はそちらを向くと……。


「キューラちゃんは敢えて少し弱く回復魔法をかけますね、そうした方が痛みが残ってちゃんと反省すると思いますから」


 笑顔が張り付いたチェルがそんな恐ろしい事を口にした。

 というか、それ……拷問じゃないか?

 敢えて痛い所で止めておくなんて酷い事を考える。

 まぁ自業自得と言われてしまえはそうなんだけど……。


「せ、せめて……」

「はい?」


 反論をしようとしたが笑みと声の圧力に俺は言葉を失い。

 暫く視線を様寄せた後――。


「皆! 頼む! 俺は動けない……!」


 情けないお願いをする他なかった。

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