226 魔拳の代償
カミアへと止めを刺そうとするキューラ。
だが、それはレムスによって阻まれる。
やはりレムスに裏切られていたのだろうか? キューラがそう考えていると……。
クリエの声が聞こえ、彼女は殺しては駄目だという。
彼女の願いを聞き入れたキューラだが……新たに表れた者により……意識を失うのだった。
次に目を覚ました時は俺は綺麗な部屋にいた。
柔らかいベッドの上に寝かされている様だ……。
「……っ!?」
起き上がろうとすると全身が痛く、声をあげようとすると声が出ない。
「――――っ」
どうしたんだ?
そう思いつつ辺りを見回してみる。
だが、誰も居ない……。
途端に不安になり俺はベッドから落ちるように降りるとライムの姿を探した。
だが……いない。
ここは何処だ? 見た事も無い部屋だ。
疑問を感じていると鏡が目に入った。
一瞬何が映っているのか迷ってしまった。
何故ならそこには俺の姿が無かったからだ。
見えない訳じゃない、全く知らない誰かがそこにいた。
喉は焼けただれ……両腕は真っ黒。
これはまさか魔拳を使った代償か? そんな事を考えながら再び意識は遠のく……。
次に目が覚めた時は今まさに炎に飲み込まれようとしていたところだった。
どういう事だかは分からない。
ただ、鮮明な痛みと熱さ……それに気が狂い俺は叫び暴れた。
次も……。
その次も……。
その次の次も……まるで昔漫画で見たどこかのマフィアボスが主人公に負けた時のように俺はひたすら死ぬ場面に遭遇した。
これはまさか……いや、恐らくは……。
「魔拳を使った人間の末路か……」
いずれ俺もこうなるのか?
そんな事をぼんやり考えていると……ふとアウクが言っていた事を思い出す。
怒りに身を任せ力を振るった……確かに俺は今回はそうした。
いや、そうしたと自覚がないだけでクリエを守る為と言いつつも俺は怒り……魔法を使っていた。
最初の時だってそうだったんだ。
「………………」
不意に暖かい何かが腕に触れた気がした。
ゆっくりと瞼をあけると其処にはクリエの姿があり……彼女はどうやら眠ってしまっているみたいだが、俺の看病をしてくれたのだろうか?
水の張ってある桶、そして頭に乗っているのは濡れた布。
「………………」
俺は何をやっているんだ?
彼女を守る為の力を使ったはずなのに……彼女に守られている。
「……俺は…………」
俺は……このままじゃ駄目だ。
何度も何度もそう思っていたのに……何も変わっちゃいない。
そりゃ人はすぐに変われやしない。
だけど、焦っても意味がないなんて分かってはいる。
それでも……俺は……。
「少しは変わってると思ったんだけどな」
がっくりと項垂れながら俺は彼女の頭へと手を乗せる。
俺は……何をしたらいい?
そう思っているとクリエの背を伝いよじ登ってくるライムの姿が見えた。
俺の頭に乗っていないという事はクリエの看病を尊重したのだろうか?
「ライム……」
布団の上に昇ったライムを撫で、俺は辺りを見回す。
「居ない……よな」
そこにレムスは居ない。
当然だオレはレムスの主を殺した。
そもそも本当の仲間ではなかったんだろう……落胆しながらも部屋の中をレムスを探す。
そんな中、目についたのは魔法陣の本だ。
あれは確か俺が意識を失う前にヘレンが取り戻してくれたやつだ。
という事は此処は屋敷って事だろうか?
「それにしても見たことが無い部屋だな」
屋敷の部屋だとしたら俺が知らない場所か、流石に全部の部屋を見て回るのは無理だしな。
「とはいえ……ここは?」
俺はベッドから出ると扉へと向かう。
そしてノブを回すのだが……。
「……ん?」
かちゃかちゃと音がするだけで明かない。
「ど、どういう事だ?」
鍵穴らしい場所はない。
が、鍵がかかっているようにしか思えない。
なんだ? 何が起きている?
カチャカチャと何度も扉を開けようとするが、音が響くだけで何も起きない。
「グレイブ!!」
なら魔法でと唱えて見た瞬間。
「――っ!?」
身体中に痛みが走り、俺はその場にうずくまった。
「――――かっ!?」
息が出来ない……これは魔力痛なのか? だとしても、今までこんな事……。
クソ、一体なにが起きて……俺達はどうなってるんだ!?
とにかくここが何処だか調べないと……そう思い俺は窓を見つけそちらの方へと這いずり近寄っていく。
カーテンを開け俺は呆然とした。
そこには鉄格子のような物があり、此処が牢屋である事が分かったのだ。
ならヘレンも敵だったという事か? そう思っていると違う事に気が付いた。
俺達が閉じ込められている部屋。
そこから見える大きな池がある広場には沢山の奴隷が見えた。
その中の中心に男に連れられている裸同然の少女と目が遭ったのだ。
彼女は俺に気が付くと一瞬はにかみ……泣きそうな顔で前へと向き直る。
ヘレンだ……。
なんであの子が奴隷なんかに? そう思っていると……。
「キューラちゃん……キューラちゃん?」
扉の方から俺を呼ぶ声が聞こえた。
その声には聞き覚えがある……。
「なんで、お前が?」
俺は声の主に尋ねると彼女は扉に張り付いたのだろうか? 少し音がした。




