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俺は百合勇者の従者にならざるを得ない……  作者: ウニア・キサラギ
10章 勇者《魔王》として
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225 クリエの願い

 キューラの切り札である魔拳。

 それを使い見事ロッシュ……いや、ビルを倒したキューラ。

 そして、続きカミアへとその拳を向けようとした。

 彼女は狂ったように叫び騒ぐが、その中でキューラが決して許す事の出来ない言葉を発してしまった。

 彼は彼女へと迫り事を終わらせようとしたその時、レムスに邪魔をされ……クリエの言葉を聞いたのだった。

「クリエ……?」


 俺は彼女の名前を呼び、振り返る。


「い、今ですわ!!」


 すると布が擦れる音が聞こえ、再びそちらへと振り返るとカミアは腰が抜けているのか這いずりながら外へと向かおうとしていた。


「おま――っ!?」


 俺は再びカミアへ殴りかかろうとするのだが、急に身体中に痛みが走り、思わず魔法を解いてしまった。


 魔力痛か? クソッ!! こんな時に――!!


『カァー!! カァァ!!』


 動けない俺はカミアを睨む……そんな時聞こえたのはレムスの鳴き声だ。

 どういう訳か分からない、だがレムスは……カミアの前へと降り立ち。


「ひっ!?」


 じっと睨みつけている。


「レムス……」


 俺が名前を呼ぶとレムスは此方へ一瞬振り返り、再びカミアの方へと向き直る。

 もしかして、見張ってくれているのか?

 いや、きっとそうだ……そう思った俺は……。


「ライム、クリエの元へ運んでくれ」


 使い魔であるライムへと願う。

 するとライムはずるずると俺を引っ張っていき、ゆっくりとではあるがクリエの元へと運んでくれた。


「クリエ、クリエ……!!」


 彼女の名前を呼び、悲鳴を上げる身体を動かし少し揺する。

 すると彼女は薄く瞼を持ち上げ……。


「駄目、です……ころし……たら……駄目……」


 必死で訴えてきた。

 相手は自分を貶め、殺そうとしてきた人間だ。

 だというのにクリエは殺したら駄目だと口にした……。

 何処までも優しい彼女に俺は……。


「分かった……」


 と言うしかなかった。

 彼女は安心したのか微笑むと再び意識を失ったのかがくりとし、俺は慌てて彼女の口元へと耳を当てる。


「すぅ……すぅ……」


 どうやら、眠ったのか?

 息が聞こえる事から命には別状はないだろう……。

 以前魔法を使おうとした時のように顔が苦し気に歪むなんて事もないし、ひとまずは安心か……。


「あの者の処遇は私に任せてください」


 俺がクリエの安否を確認し、ほっとしているとヘレンは立ち上がり、カミアの方へと向かっていく……そして、部屋にあった縄を手に取るとぎこちなさはあった物のそれで腕を縛り、本を奪った。

 カミアの方はゴーレムも居らず、もう抵抗する術は失われたのだろう……その間は大人しいものだった。


「ここで大人しくしててください姉様……いえ、カミア」


 そう口にした彼女は本を俺の所まで持ってくると、複雑な表情でロッシュの死体の方へと目を向けた。


「……悪い」

「いえ、悪いのは騙されていた私です……そんな大怪我までして守ってくれた人を悪人だとは呼びませんよ」


 大怪我? 確かに彼女達を守ったのは間違いない。

 だが、大怪我とは何だ?


「我が主よ、我が願いを告げる……この者、邪なる物との戦いに傷つきし者に加護を……キュアライト……」


 俺が疑問を浮かべているとヘレンは突然回復魔法を唱え始めた。

 何の事だろうか?

 そう思って回復されている場所を見て俺は――。


「っ!?」


 襲って来た痛みに顔を歪める。


「今頃になって痛みが出てきたんですね」


 そう言って慈しむような表情を見せるヘレン。

 彼女の手の先には焦げた腕があった。

 先程までは何ともなかった腕は治っていくにつれ激痛を伴い。


「――っ!? ――――!!」


 俺は叫び声さえあげられずにその場でもがき苦しんだ。


「…………大丈夫です、治せるところまで治しますから」


 彼女はそう言うと俺の腕を治癒し続けてくれている様だ。

 ただ俺は――。


「――――――っ!!!」


 礼を告げる事すら出来ずにその場で気を失いかける。

 最後にみたのは……。


「――!!」


 ヘレンの後ろで辛そうな表情を浮かべ兵士に捉えられているイリスの姿と彼女へと向け人とは思えない表情を浮かべた見知らぬ女性が棍棒を振り上げている姿だった。








 目が覚めた場所は真っ暗な闇の中。

 寝ているのではなく立っていた。


「ああああああああああああ!!」


 喉が張り裂けんばかりの声で俺は叫びその場に崩れる。

 何故だかは分からない、だが、腕が焼ける……その感覚が今になって蘇って来た。


「情けないな」

「――っ!! アウ……ク……」


 何とか聞こえた声に対し俺は返事を返す。

 そう、その声は聞き間違えるはずがない、アウク・フィアランスの物だ。

 顔を上げると其処には悪人面をした男が立っていた。


「怒りに身を任せ拳を振るった代償がついに来たという事か……」


 どういう事だ? 俺はこいつに騙されていたのか?

 俺の視線に気が付いたのだろう、彼は呆れた顔で告げてくる。


「だが、俺は言ったはずだ、使いこなせとな」

「――腕が焼けるのは……」


 確かに俺が魔法を使いこなせていないからなのだろう。

 だが、ここまでとは聞いていない。


「言っておくそのままではお前は何も護れない、己の命さえもな……」


 彼はそう言うと俺の横を通り過ぎ去って行く……。


「ま……て……」

「これは最後の忠告だ……その力を使いこなせ……出なければその炎はお前をも焼き尽くす……」


 そして、そこで俺の意識は再び途切れた。

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