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俺は百合勇者の従者にならざるを得ない……  作者: ウニア・キサラギ
10章 勇者《魔王》として
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209 少年の元へ

 精神を操られている。

 そう思っていたキューラだが、それは薄くなったと自ら否定。

 一体どういった理由があるのだろうか?

 それは昨日の夜の事だ。

 俺は眠れなくて少しでも情報を得ようと魔法陣の本を読んだ。

 だが、本には精神を操ると言った魔法は無かったのだ。

 そして、ゴーレムと言う魔法を見つけた。

 土の人形を作り出す魔法はこの世界にもある。

 それと似たような物か? と考え読んでいくと……先ほど口にしたように他者の遺骨からそっくりな人形を作り出すと言った魔法を見つけてしまったのだ。

 この人形の良い所はまず人と見た目が変わらない所。

 魔力が切れるとアンデッド化するが、主の命じた命には忠実であり、壊れるまで動き続ける事。

 その二点だ。


 つまり……あの旧市場に居たアンデッド達もこれで納得がいく。

 何故アンデットが蔓延る場所で人が無事に生きているのか?

 面倒な事になる前に襲うなといえば良いだけだからだ……。


 それに、必要な人形は一度壊して作り直せば問題はない。


「作られた人形は記憶を持たず、主の命に従うだけだ……だが、見た目も声も同じ……騙すにはもってこいだ」


 俺はそう口にしつつもう一人の貴族に怒りを覚える。

 親殺し、それを利用し……更には子供まで、いや……あのスラムに居た人々はもしかしたら奴が作ったゴーレムなのかもしれない。

 そう考えるだけで胸糞悪い……。


「そんな……そんな、いくらお姉様でもそんな……」


 ヘレンはショックを受け、その場に崩れる。

 それを支えた老人ロッシュは……。


「つまり、上のお嬢が探してる本はお前さんが持ってるのか?」

「…………ああ」


 俺の話を納得させるためには本の事は正直に行った方が良いだろう。


「だが、その本に書かれている事が真実だとは限らないだろう? 試したのか?」


 しかし、ロッシュは痛い所をついて来た。


「でも、キューラちゃんが嘘をつくなんて――」

「いや、クリエ……良いんだ。彼が正しい」


 俺は喰いかかるクリエを止め、そう口にし……言葉を続ける。


「だから、これが本当かどうかは確かめたい」


 幸い今は確かめる術がある。

 ゴーレムの事は間違いなく本に書かれており、魔法の解き方も載っていたのだ。

 別に魔物の様に戦う必要はない。


 ヘレンを見つめると、彼女は暫く呆然としていたがロッシュの手を借り立ち上がる。

 そして……。


「分りました……牢へと案内します」


 何処かうつろな表情を浮かべ歩き始めた。

 非道な事をしている姉というのが本当だとしても、それを信じたくないのだろう……。

 少し心は痛むが……仕方のない事だよな?



 貴族の娘ヘレンに連れられ俺達は地下室へと向かう。

 この世界の牢は地下に作られることが多いのだろうか? そんな事をぼんやり考えていると……ヘレンは鍵を一つ取り出し扉を開ける。

 そこには鉄格子があり、その奥に少年の様な影が見えた。


「…………ここです」


 彼女は悲しそうな顔を浮かべ、告げる。

 少年にはちゃんとした食事が与えられていたのだろう……。

 ぐちゃぐちゃになった料理の後が見えた。

 それから見るに多分食べていない。


「もったいない事をしてるね」

「食べてくれなかったんです……この子の好きな物を用意したはずだったんですが」


 彼女は涙をこらえるように言い。

 こちらを睨む……。


「まさか、ゴーレムは食事を必要としないから分からないとか、言わないですよね?」

「……分からない、そこには何も書かれてなかった……」


 事実、ゴーレムが動く為のエネルギーは魔法陣だから食事は要らないと言っても良いのかもしれない。

 だが、本に書かれていなかったのもまた本当だ。

 俺の判断だけでそうだとは言えない。


「さてと……後は……どうやって魔法陣があるかどうかを見るかだな」


 ゴーレムとはいえ、生前の人間をそのまま人形にしたような物だ。

 あの少年にはそれ以上の力はない。

 だから、驚異的ではない……のだが……子供だからこそ厄介な事、それは……。


「逃げられたら面倒だね」


 トゥスさんはそう言いながら扉を閉め目の前へと立つ。

 入口は一つしかない、そこを押さえれば大丈夫か……それにこっちにはロッシュという強い爺さんも居る。

 そう簡単には逃げ出せないだろう。


「よし、鍵をこっちに……」


 俺はヘレンから鍵を受け取り、牢を開ける。

 すると少年は走り出し抜け出そうとする。

 だが、一回は逃げられたとはいえ、今回は逃げると分かっての行動だ。


「おっと……」


 何とか捕まえた俺はクリエの方へと向き……。


「悪いクリエ、押さえててくれないか?」


 彼女に頼む。


「は、はい!」


 トゥスさんにあそこで待機してもらったのは杞憂だったか……そう思いつつも、俺は本に書いてあった内容を思い出し、少年の胸元を露出させる。

 そこにある模様、それがゴーレムである証拠になる。

 もしなかった場合は催眠って線が濃厚だが……どうやったのか分からなくなるな。


 だが、心情的には催眠であってくれと願いたい。

 そうすればこの少年を戻してあげる術があるはずだからな。

 だけど……。


「……………………」

「……ど、どうなんですか?」


 俺のそんな願いは虚しく……。


「ゴーレムだよ……」


 ……やっぱり現実は非情だった。

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