150 黒い翼
尊重の元へと届く魔物の襲撃の知らせ。
だが、話を聞くとそれはキューラが懐けた魔物レムスの事だと分かった。
キューラ達は王からの話が届いたと急ぎ現場へと向かったのだった。
男の後を追いかけていくと、確かに空には大きな烏が飛んでいる。
烏は何かを探すようにくるくると村の真上を飛んでおり、辺りの住人達は騒ぎ立てていた。
これはまずいな……早くレムスに害がない事を知らせないとそのうち武器を持って来られてしまうかもしれない。
幸い今はまだそういった事は無い様だし、急ごう!
「レムス!!」
俺はニースクロウへと向けその名を呼ぶ……すると、黒い塊はその場で羽ばたき空中に留まるとこちらへと目を向けた。
「こっちだ戻って来い!」
そう伝えるとレムスは嬉しそうに鳴き声を一つ上げるとゆっくりと降下してきて、俺は布を腕へと巻き付け差し出す。
すると、そこへちゃんと降り立ったレムスは甘えるような鳴き声を上げ、身体を摺り寄せてきた。
なんだか、魔物って懐くと可愛いな。
そんな事を考えていると足元から抗議するようにライムが締め付けを強くして来る。
「ラ、ライム? 後で撫でてやるから今はその、痛いんだ……勘弁してくれ……」
そう言うとライムは慌てた様に緩めてはくれたが……焼餅を焼いてるな、これは……。
『かぁぁ~』
そして、自分が優位に立ったと思っているのだろうか? レムスはレムスで満足気だ。
「レムス、所で帰りが早かったけど、手紙は届けてくれたのか?」
使い魔である以上俺の願いは聞き届けてもらってるだろう事は分かっている。
だけど、レムスは魔物だ。
クリードに向かったのは良しとして攻撃され、逃げかえって来たという事はあるかもしれないからな。
そんな事を考えていると……。
『カァ!!』
訴えるように鳴かれ、羽を大きく広げるレムス。
恐らく、労いの言葉ではなくちゃんと届けたか心配してしまった事で怒らせてしまった様だ。
それに良く見れば返事の手紙があった。
「そ、そうか、悪かった……助かったよ」
俺は改めて礼を告げると、レムスは少し拗ねてしまったのかぷいっとそっぽを向いてしまった。
今のは俺が悪いからな……。
そう思いつつポケットに入っていた木の実の事を思い出し、それを取り出すとレムスの口元へと近づける。
すると、レムスは暫くそれを見つめていたのだが……。
「ほら、レムスの為に取っておいたんだ、食べろ」
そう告げるとゆっくりとではあるが木の実を咥え食べ始めた。
取りあえずこれで機嫌が直ってくれれば良いなと考えていると……。
周りが別の事でざわめきだしている事に俺は気が付いた。
「ま、魔物……魔物を二匹も従えてる!?」
「だって普通は一匹じゃないの!?」
そう、今度は俺を見て騒ぎだしているのだ。
「キュ、キューラちゃん? 何時の間に……ニースクロウなんて……」
「あ、ああ……ライムの時と同じで偶々だよ」
クリエも半信半疑だったのだろう……俺はそう答えるとレムスの頭の当たりを指でコリコリとかいてやる。
すると、それが気持ち良いのか頭を指に押し付けるようにしてきた。
……これは、魔物が可愛いと思っても正常だろう。
「そ、そうなんですか……でも、魔物を2体も……」
クリエも驚いているが、別に出来ないって訳じゃない。
魔族や混血が魔物に懐かれる理由は分からないが……懐いたというだけならばファリスだってゴブリンを何匹も懐かせていた。
それから考えれば別に凄いなんて事は無い。
ましてや魔王となればきっと魔物を2体どころじゃないだろう……。
「ん? そう言えば昔いた魔王って魔物をけしかけてきたりはしないのか?」
「……何言ってるんだい? 魔物は人にとっては共通の敵、懐く方が珍しいんだから、そんな事できやしないに決まってるだろ?」
そ、そうだったのか……。
じゃぁ、今回も魔物をけしかけてくる心配はないのか? いや、まだ分からないな……。
出来るけどしていないだけなのかもしれないし……安易に安心するのはよそう。
だけど、とにかく今は……。
「レムスがクリードの王に手紙を届けてくれた……村長に報告しに戻ろう」
今は、レムスが帰ってきたのを素直に喜ぼう。
「そうですね、その早く戻りましょう?」
クリエも頷いてくれて、俺達は再び村長宅へと向かう。
そして、レムスの事を報告すると彼は頷き……。
「そうか、では……その返事を読んではもらえないか?」
と言われ、俺は頷きレムスから手紙を受け取るとその中身を読み始める。
「間違いなくクリード王カヴァリからの返事だ」
そう言って俺は手紙の封をしてある蝋を見せ、内容を伝える。
「キューラ、そして名もなき村の村長よ、話はしかと聞いた……『アメルーの事についてだが、我が国は冒険者の国と呼ばれ、私自身騎士王を名乗っている……したがって、その流通の優先をしていただきたい、勿論、金については相談させていただこう』…………これだけだ」
これだけ、とは言ったが俺達の望み通りになった。
アメルーと言う素材は武器防具の材料になる……本来ならば多くの鍛冶師たちが居る街に送った方が良いのだろう、しかし貴族たちに武器が渡る可能性はこれで下がったはずだ。
「安易に信じるのは良くないと思うんだけどね……」
トゥスさんがそう呟いた声はしっかりと聞えていた。
だが、他の人達は聞こえなかったのか、それとも聞こえないふりをしていたのか俺含めそこには沈黙が流れ……。
暫くすると村長は此方へと目を向けてきた。
「商人も今頃冒険者を連れてクリードへと向かってる。次の手紙は早いはずだ」
「助かった」
村長はそう一言を口にすると……。
「暫くは居てくれるのだろう? 宿は取ってあるゆっくりと休むと良い」
「ああ、助かるよ」
俺は彼の心遣いに感謝しつつそう答えたのだった。




