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9 向かった先は?

 従者の契約を済ませたキューラ。

 これで晴れて勇者の使いとなった訳で……彼女と共に旅立つ事となった。

 しかし、彼はまだ学生……まともな装備など持っておらず、それを買おうと部屋を出ようとした所クリエに止められ、彼女と一緒に買い物へと出かける事になったのだが……?

 勇者……それはこの世界において金色の瞳を持ち生まれる神の使い。

 そう呼ばれる者は決して途切れる事無く、この世界に現れては俺達が住む世界リセッティアに平和をもたらす。

 その敵は魔物だったり、魔王だったり、歴代の勇者達はそれらと戦い、人々を照らす光となった。

 そして、今代の勇者もそうなるべく俺と言う従者を連れ本格的に旅を始める……。

 更に言えば今度の勇者が相手にするのは魔王……歴代最強と呼ばれる勇者以降、初めての魔王退治。

 神大陸に住む人々はいずれ彼女を褒め称えるのだろう……と、普通なら思われるのだが――。


「きゃぁぁぁぁ!! 可愛い、可愛いです! キューラちゃん、次はこの服を着せて上げますね!」


 恍惚とした表情で俺を着せ替え人形にしているこの女性クリエ……。

 この人が紛う事無き今代の勇者である。

 しかも、コイツ……いや、この人は……。


「うへへ……この、ちょっと肌が見える所が多いのなんて似合うんじゃないでしょうか?」


 女性がしてはいけない……いや、男女関係なくしてはいけないだろう表情で俺を見ている……というか油断をすると――。


「着替え手伝いますよ?」


 そんな怪しい目と手つきで言われると我が身の危険を感じる。

 それよりも疑問があった。


「いや、自分で着れる……というか俺達武器と防具を買いに来たんだよな? なんで服なんだ?」


 そう、俺達が居るのは服を売っている店だ。

 魔法使いが着るような生地の厚いローブではなく日常生活できるような服……。


「だって、可愛い女の子なんですから! ぜひ、私好み……じゃなくて、色々な服を着て見ましょう? 二度と体験できないかもしれませんよ?」

「待て待て……今、クリエ好みとか言ったろ!? 絶対に楽しむために此処に連れてきたろ!?」


 そう言うとクリエは目を逸らしなんのことですか? と言うと思ったのだが――。


「ええ、そうですよ?」


 開き直りやがった……。


「でも、ちゃんと別の理由もありますよ」

「へ? そうなのか?」

「ええ、だってずっと防具を身に着けている訳にはいかないですよ。手入れの時とかもそうですし、やっぱり服も必要です……それに今は可愛い女の子なんですから、不自然に見えないような服は必要でしょう?」


 そう……か……確かに、そうだな。

 いや、でもスカートばかりなのはどうなんだ?

 俺としてはこう今まで通りの服が良いんだが……。


「ですからこの服を……」


 そんな事を考えているとクリエが新しく持ってきた服を目を向けずに取り、着替えを済ませようと思い個室へと向かった所で何かがおかしいと思い――ふと服を確かめると……。


「クリエ!! これは服じゃないだろ!?」


 俺は個室から手と顔だけを出しそれを突き出した。

 俺が持っているのは下着同然と言っても良い布……そう、布だ。

 訴えながらもクリエの方へと目を向けると……。


「え?」

「え? じゃない!」


 流石に今度は目を逸らしたクリエ……いや、今更遅いって!!

 ああ、もうヤダこの勇者……というか魔王も確かロリコンだったよな? なんか急に戦うのが嫌になって来たぞ……とにかくこの状況はさっさと終わらせよう……。


「必要なのは分かった! でも服なら家に親が勝手に作ったのがある……それで良いだろ?」

「そ、そうだったんですか? ではせめて一着だけ」


 そこは譲ってくれないのかよ……仕方ない……。


「分かった、まともな服を頼む」

「は、はい……」


 なんでそう残念そうな顔で頷く……どんな服を着せるつもりだったんだこの神の使いは……。






 それから暫くして武具を買いそろえた俺達は服を取りに行くために家へと向かっていた。

 横を見てみると顔をだらしなく歪めた女性が俺を見つめていて思わずため息を漏らす……。

 何故こうなった……と……。


「どうしたんですかキューラちゃん?」

「……はぁ……」


 どうしたんですか? と聞かれても原因は俺の服にある。

 クリエの選んだ服は水色のワンピース……丈は短い、結構きわどいが……まだ俺の注文通りいたって普通の服だ。

 それは良い……だが、それを着て鏡を見た所……似合い過ぎていたのがショックだった訳だ。

 まぁ、見た目はさほど変わってないから、男の時に着ても似たような衝撃は受けていただろうが、今回は違う、それだけじゃない。

 だって女になってるんだぞ!? それで鏡で見た少女が引きつった顔を浮かべて俺を見てくるんだ……。

 まるで、そう……なんでこの服を着させたんだ? とでも言いたげな顔で……。

 その少女は俺だと言う事が更に追い打ちをかけた……。


「え、えっとなるべく普通の服を選ぶよう努力したのですが……もしかして納得いきませんでしたか?」

「あ? ああ、服はこれで問題ないよ……ただ……現実を思い知らされただけだ……」


 今日というかこの姿になってからだが、俺は絶対に男に戻ろう、戻らなきゃだめだ。

 可愛い女の子なのは救いなのかもしれない、だが……このままもし呪いが解けなかったとしたら俺はこのまま女性として大人になる訳で……。

 さらにその先……つまり結婚を考えるとゾクリと身体が震えた。

 そんなのは認めない、親が認めたとしても俺が拒否する。

 いや……でも、俺な訳だから男を好きになるってことは無いか……とは言ってもこのまま女性というのも無理があるし……。

 もし何かの間違いで俺が男を好きになったりしたらと言うのは無いだろうが、好きな女性が出てきたら……。

 その時にはきっとまた落ち込む羽目になる事は目に見えている。

 つまり、これからの転生人生は隣を歩く変態……じゃなく勇者クリエにかかっている訳で……。


「キューラ……ちゃん?」

「頼むぞ? 本当に頼むからな!?」


 不安を感じ俺はクリエに念を押すと彼女はその顔を綻ばせると両手を胸の前辺りまで持っていくと軽く拳握り――。


「はい! お姉ちゃんに頼ってください!!」

「お、おう……」


 うん、見た目はやっぱり美人だし……そのはっきりと言ってくれた言葉に関しては嬉しい。

 だというのに……なんだ? この不安は? 

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