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タコ焼き

 アイリスたちが妊娠10ヶ月に入ったある日の出来事だ。


「タコ焼きが食いたい」


「どうしたの突然」


 アイリスとボードゲームをしていたらフッとそう思った。


「なんか無性に食いたくなった」


「ああ〜、あるよね。そういう時」


「ちょっとベレチアに行ってくる」


「行ってらっしゃい。ご飯楽しみにしてる」


「おうよ」




 ********************



「トカレフさ〜ん!」


 ギルドマスター室に駆け込む。


「おい、唐突だな。何か用か?」


「タコって、何処で取れるの!?」


 市場で聞いてみたが、誰も知らなかった。ここ、港街ですよね?


「タコって、何だ?」


「oh……」


 トカレフさんも知らない様だ。


「タコってのは、俺のいた場所でそう呼ばれる生き物。軟体の身体と吸盤の付いた8本足が特徴。攻撃手段に黒い液を吐いたりする。逃走の際、足を自分で切り離すこともある生き物」


「ちょっと待て……えーっと……何処だったか?あっ、これだ」


 トカレフさんは、部屋に置かれた本棚へと向かう。一通り見た後、目的の物を見つけた様だ。


「確か、これに書かれて……あった。これの事か?」


 本を開いてあるページを見せてくれた。


「そう!それ!!」


 俺の知るタコがそこにいた。ただ、イソギンチャクみたいな絵も添えられている。


「オクトポーダ。水生トレントの一種だな」


「トレントって、あの森にいるトレント?」


「そうだ」


 良く物語にも出て来る木の形をした魔物だ。分類としては、昆虫に近く、木に擬態して獲物を待ち受ける。


 カリーナの森にも潜んでおり、あの森が危険と言われる原因の一つだ。ただ、これには攻略法が存在する。


 魔力感知を行うと生物故か、木からは考えられない程の魔力を感じる。これにより先制攻撃したり、回避を行える。


 弱点は火と雷だ。しかし、火は中級程でないと倒せない。体内の水分量が多い為、発火しにくい。それに引き替え、雷なら下級でも倒せるのだ。これは、普通の人は知らない情報でもある。


「全く似てなくない?」


「水生だからな。環境影響で進化したのだろう。こっちの図で見るなら分かるだろ」


 トカレフさんが指差すのは、イソギンチャクの様な形状。


「基本は、この形だな。潮が満ちる洞窟や海底に棲息しているぞ」


「これを狩るクエストある?」


「今、Bランクの奴らが行ってるやつだけだな」


「それ、ちょうだい」


「いやいや、SランクがBランクの仕事取るなよ」


「だったら、クエスト外で狩ってくる!」


「正気か?それ以外なら海の底だぞ」


「海の何処?何処ら辺?大体で良いから教えて!」


「はぁ?まぁ、大体で良いなら、クラーケンがいた辺りなら居るんじゃねぇ?」


「分かった!行ってくる!!」


 では、早速行こう。ついでに空間制御(エリアコントロール)で水中も可能か実験だ!


「おい、本気なのか!?さすがにーー」


 無理だったら普通にBランクの子たちのを買い取ろう。


 俺は、そう思いながら海に向かうのだった。





 ********************




「行っちまいやがった……」


 アイツ、ホントに分かっているのか?


 クラーケンがいた場所の海底に行くって事は、水深1000m以上を潜るって事だぞ。


 潜れたとしても洞窟とかの弱った状態ではなく、通常の状態だから危険度増すんだが……。


「まぁ、諦めて帰って来るだろ」


 10分後。


「マスター、失礼します。お時間宜しいでしょうか?」


 港を管理している部下がやってきた。


「どうした?港で何かあったか?」


「いえ、ユリシーズさんが空を飛んでいたとか、海に飛び込んだとか噂になってまして」


「………」


 マジで狩りに行ったみたいだ。あり得ねぇ……。


「飛んでいたってのは、どういう話なんだ?」


 潜るのに飛ぶ必要はないだろ?


「なんでも、沖に行くのに船より飛んだ方が速いって言った後、港から沖に魔法で飛んで行ったらしいです」


飛行(フライ)か?」


「それが聞いた所、違う魔法の様でして」


 風か、何かの応用か?そもそも、飛べる冒険者自体が片手で数えれる程しかいないし分からんな。


 ドッゴオオォーーン!!


「「………」」


 海の方から爆音が聞こえた。起きた原因に心当たりしかない。


「副マスターに言って、解体師を集めておいてくれ」


「了解しました」





 ********************





「あ〜、ウザかった」


 海中での戦いを終えて港に戻ってきた。


 魔法は問題なく機能し、水圧を利用した高速移動も可能だった。


 そして、目的のオクトポーダは海底にちゃんといた。


 名称:オクトポーダ


 危険度:A-


 説明:トレントの系統。水生に特化した為、軟体の身体に変化。身体の殆どが筋肉で強い力を発揮する。食用可能。


 オススメ:タコ焼きも良いですが、酒のツマミとしてタコわさなんてどうでしょうか?もし、やる場合は、塩でよく揉む必要があるので気を付けて下さい。


 傷が少なくて済むように、雷魔法を使用。水中でも魔法銃を使える事が判明した。


 ただ……。


「しつこい」


「………」


 大型のウツボに襲われた。水中故に、相手の叫び声は聞こえない。


 名称:ナマダ


 危険度:S


 説明:ゼラチン質が多く含むうえに強い旨味がある。食用可能。また、外皮からは良い革製品が作成可能である。


 オススメ:タタキや野菜を加えて煮凝りにする事を推奨します。


 相手をする気は無いので、陸に上がろうと水中を進むが何時までも追ってくる。その上、魔法による氷柱を飛ばしてきた。


「マジで、ウザいわ!!」


 空間制御の効果範囲を拡大。相手の全体が入るまで飲み込む。


「せいのっ!!」


 水圧の向きを変更して俺もろとも打ち上げた。その結果、あっという間に水中から空中に移動。そして、フラガラッハで頭と胴体を切断した。


 ナマダをアイテムボックスに入れて港に帰還。


「お前……何をしたんだ?」


 帰り着いたら、トカレフさんや港の関係者が待っていた。


「うん?ちょっと水深1000mまで潜って、狩ってきただけだよ?」


『ちょっとじゃねぇよ!?』


「それより聞いて。ナマダに襲われて大変だったんだよ」


「あぁ、Sランクの魔物だからな。さすがに海中だと無理だーー」


「これも解体お願いします」


 アイテムボックスからナマダの頭を引きずり出して見せる。


「シャアー」


『………』


 何故か、周りの空気が死んだ。あれ、鳴き声似てなかったかな?


 まぁ、鳴き声知らないし。仕方ないよね。


「あれ?なんかマズかった?」


「いや……なんかもう……どうでも良いわ。解体所に運んでくれ」


「分かった」


 解体は、直ぐに終わり屋敷に帰った。


 そこから、ティアたちも呼んでタコ焼きを焼きまくる。


『ほふほふっ!』


 皆、熱々ながらも沢山、口に詰め込んでいるのが見て取れた。


「アイリス。はい、あ〜ん」


「あ〜……はむっ、もぐもぐ。美味しい!!ユーリも、あ〜ん」


「おうよ、あ〜ん……ぱくっ。もぐもぐ、やっぱり美味いな」


『………』


 はいはい、大丈夫です。皆にもして上げます。


 ティアたちの前だというのに、イチャイチャを見せつけた。


 彼らもたまにやるから、別に良いだろ?


 というか、ティアとグレイは既にしていた。


 さすが、新婚さんめっ!熱々だな!!……俺も新婚だった。


 次は、何をしよう。秋らしく、今度は焼き芋でもしようかな?


 そんな穏やかな1日だった。

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マリーも忘れないでw
[気になる点] ナマダは美味しかったのでしょうか?
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