俺の日常が帰ってきた
商隊は、カリスさん指揮の元、2日ほどで商売を終えた。
そこから、また水路を辿り商業都市ウェンへ。
残りの商隊や冒険者チームと合流後、関所へと向けて出発。
今回は、特に問題もなく関所へと辿り着き、越える事が出来た。
宿街サイカに着いたら、俺の本領発揮!サイカとペンドラゴンを繋ぐ転移門を作成!
「慌てずゆっくり進んで下さい」
『………』
皆、黙々と転移門を潜っていく。そして、悟りの境地にでも達したかのような穏やかな表情をしている。
旅を経て、心が強くなったのだろう。色んな魔物に遭遇したしな!
まぁ、馬車を止めずに狩れるほど余裕だったけど。
「それが原因だよ!?」
「………」
そう、ゴーヴァンにツッコまれたが、気のせいだろ。
これで長かった護衛クエストは、終了した。
「ア〜イ〜リ〜ス〜!」
「お帰り!」
屋敷に帰るなりアイリスに抱き着いてキスをした。やっぱり、アイリスが一番落ち着く。俺の嫁で相棒でもあるしな。
「ただいま!」
「ユーリさん、お帰りなさい」
「マリーもただいま!」
マリーにも同じ事をする。前よりお腹が更に大きくなったのを感じた。その後、他の皆にも同じ事をやって回った。
「お疲れ様です。ユーリ様」
『お疲れ様です』
メイドと執事の集団に挨拶された。
「………」
誰だっけ?……あっ、ティアたちか!
「おう、ただいま。仕事順調?慣れた?」
『はい!』
「それは、良かった。後で、働いた分の給与渡すから。その後の事は、後で考えよう」
彼らの日当は、金貨1枚。労働者の1日の平均賃金は銀貨8枚だ。
カリスさんに高いと言われたが、臨時雇用だし良いだろうとそうした。計算もしやすいね。
上級ポーションの相場は、1本金貨5枚。今回は、それが2本だから金貨10枚。
彼らは合計で、1日に金貨6枚稼ぐ。そして、雇ってから1週間程経ったから今は合計で金貨42枚。ポーション代を引いても十分な金額だ。
「分かりました」
ティアが代表して答えた。
商業都市ウェンでアイリスたちの為に宝石を買ってきたので配る。
「俺の国では、婚姻の証に指輪を贈る習慣が有るんだ。だから、受け取って欲しい」
アイリスには、サファイア。
マリーには、エメラルド。
リリスたちには、ルビー。
ミズキには、琥珀。
フィーネには、アメジスト。
イナホたちは一緒だったので、直接選ばせた。
イナホは、タンザナイト。
リリアは、ルビーだった。
だから、姉妹のもルビーにしておいた。喧嘩しないように。
ギンカは、ロイヤルブルームーンストーンなる物だ。
宝石の中に虹を閉じ込めた様な不思議な宝石だった。
「2人にはまだ早いからこれを」
フランとユキには、イナホと同じタンザナイトから造られた腕輪を渡す。
「成人した時に気持ちが変わってなかったら改めて渡すね」
「は〜い!」
「はいなのです!」
皆、気に入ってくれた様だ。ただ、指に着けるのではなく、チェーンで首から下げるのはどうなんだろう?
「手に付けていると失くしそうだから!」
と言われれば納得するしかない。話を聞くと一般的にも、こうしておくそうだ。まともに付けるのは、貴族や王族くらいなものらしい。
腕輪とかの方が良かったかな? フランやユキは、喜んで着けているし。
クエストクリアを祝って宴会をする。
ティアたちもいるから大所帯だ。だから、鍋にしよう。
ちょうど、カニらしき魔物を狩って食材を手に入れた。
大丈夫。大きな心で見ればカニだ。
そう思えば、タラバに見えなくもない!赤いし!
「カニ鍋だぞ!沢山あるから好きなだけ食え!!」
「では、頂こう」
「この食材は、初めてね。楽しみだわ」
ちゃっかりガイアス爺さんがいるけど、気にしない。
これが、うちの日常だから!
さぁ、実食に移る。皆の感想は?
『美味い!』
好評な様だ。だけどな、アイリスとギンカ。
「殻は、食わなくていいから!ちゃんと切れ目入れてるでしょ?それに、一応売れるんだよ」
「何か、面倒くさくて」
「これでほじくると出し易いよ」
カニスプーンを全員に配る。
「ホントだ!スルスル取れる!」
「ホントに美味しいですね!これ、どんな生き物なんですか?」
「………」
とうとう、聞かれたか。黙ってたのに。
「イナホ。説明してあげて」
同じテーブルに座っていたイナホに話を振った。
「サンドスパイダーです」
『ごふっ!?』
巨大なタラバガニの魔物だ。ただ、茹でる前から赤かった
数人むせたって事は、この魔物を知ってるな。
「砂漠に住む危険度A+じゃないですか!?」
「そうだね。ゴーヴァンたちもそう言ってた」
「体内の水分を守るため硬質の殻に護られているって!?」
「だから、身はぷりぷり、殻は素材として売れるね」
「魔物って食べられるんですね……」
「うん? うちの肉は、全部魔物だけど?」
「「「しっ、知らなかった……」」」
「美味ければそれで良いじゃないか!あはは、どんどん食え!」
酒も入り、テンションが上がる。
「カニの締めは、ご飯だろ!」
麺も良いが、カニといえばカニ雑炊だろ!
「ご飯投入〜」
ご飯を入れてひと煮立ちさせた後、自分のテーブルの要員に配っていった。
雑炊は、鍋を初めて経験するティアたちも驚いていた。
満足満足。カニではなくクモだが、味は間違いなくカニだった。
今度から食いたくなったら、あれを狩ろう。
というか、アイリスたちを連れて旅行も良いなと思うユーリだった。
余談だが、茹でても殻は普通に売れた。バケツ1杯で大銀貨1枚。
皆が食べたサンドスパイダーの殻を入れたバケツだ。それが6杯もある。
合計で、大銀貨6枚。
タダのゴミがお金に変わった。儲けたぜ!




