竜王祭 本戦。俺の第1〜3試合
竜王祭本戦は、3回に分けて書きたいと思います。ちょっといじる度に量が増えていくので……。
竜王祭本戦当日。
クジ引きの結果、3番目。
第2試合より開始だ。
前に2人の試合が行われているが、次選手は控え室待機のため、見る事が出来ない。
「ユーリ様、入場をお願いします」
早いな。
控え室に来て、まだ10分程しか経っていない。
本当に最短で決着をつけにかかっている様だ。
俺にとっての第一試合。
対戦者は、騎士。
やはり国の代表なだけあって、自国の騎士とかを派遣するみたいだ。
「試合開始!!」
審判の開始宣言がなされた。
即行動く。
「私は、ラグス王国騎士団団長ーー「えっ?」ーーぐはっ!?」
開始と同時に距離があったから転移で詰めた。
そこからとりあえず腹を殴ろうと全力で拳を振った。
鎧に空間魔法で穴を創り、直接殴る。
結果、無防備な状態の腹に拳が突き刺さった。
「えっ……と」
会場の声援も静まり返る。
凄く気不味い。
殴る瞬間、何かを言っていた。
ラグス王国騎士団団長。
名前は、聞けなかった。
名乗りを上げる前に殴ってしまったからだ。
本人は、既に倒れている。
「審判。これって……反則?」
「開始宣言した後に、わざわざ名乗りをしたこの人がアホですね。そもそも反応出来なかったので、勝負にならなかったでしょう。試合終了!勝者ユーリ・シズ!!」
審判は、良心的な人だった。
でも、他国の代表をアホって良いのだろうか?
おおぉーー!!
歓声が上がった。皆も納得の様だ。
第二試合。
対戦者は、傭兵。
あからさまに敵意剥き出しだ。
「私は、ガラド。ミルトン侯に仕える傭兵だが、先の者の様にいかないと思ってくれ」
今度の対戦者は、殺気が溢れている。
俺も注意するとしよう。
「試合開始!!」
「はっ!!」
開始と同時にナイフを投げてきた。
フラガラッハ。
通常モードで召喚。
「せい!」
空中でナイフを弾く。
どうやら、ナイフに袋が付けられていたらしく、それが弾けた。
ぼふっ。
ナイフを中心に黄色い煙が巻き起こる。
「ーーっ!?」
風下な事もあり、煙に飲み込まれた。
視界が塞がれたが、身体には異常は起こっていない。
魔力感知!
「すまない。特製の麻痺ガスだ。通常の毒も一緒に混ぜている。両方の耐性がないと無理だ。ズルくて済まない。これでも傭兵だからな。結果が必要なんだ」
まだ煙の残る中をご丁寧に解説しながら正面まで来てくれた。
自分が煙いだけなのは、状態異常無効の影響だろう。
そして、ガラドはいつの間にか武器を身に着けている。
得物は、爪付きの篭手。
爪の先端から液が滴り落ちている事から毒もしくはこれも麻痺毒だろう。
「覚悟!」
爪で刺そうと突出す。
「こっちこそ、ごめん」
煙いだけで全く効いていないのです。
彼の行動に合わせて、顎を掌底で弾く。
生憎、よく絡まれていたのでこういうのは、得意だったりする。
「ぐっ!?」
相手の勢いに合わせて行った事で威力は倍になる。
ついでに、顎へのダメージで脳が揺れる。
ガラドは、たたらを踏んで後ろに倒れた。
「風」
空中に古代文字を書くと風が起こり、煙が晴れていく。
「うっ、うぐっ!」
身体を動かしたいが脳が揺れた為、起き上がれない様だ。
「行動不能の為、試合終了!」
2戦目も勝利。残り最大8人。
第三試合。
対戦者は、騎士。
重そうな大剣を携えてやって来た。
それを片手で扱っている。
やはり、騎士が多い様だな。
「私は、リヒト共和国。筆頭騎士ロランだ。友であるマークスの仇討ちといかせて貰おう」
「マークス?」
誰だ?さっきの傭兵は、ガラドだし。
あの騎士団団長か?
「最初に戦ったラグスの騎士だ」
「納得。名前聞く前に殴っちゃったからな。悪い」
「いや、気にするな。戦場でスキを見せる方が悪い」
清々しいな、このオッサン。
だけど、戦場じゃなくて試合なんだが。
とりあえず、この人もまともそうだ。
「我が剣は、魔剣エリス。この剣にかけて君を倒す」
鑑定。
名称:魔剣エリス
レア度:S
性能:刀身の重力改変。刀身の魔法耐性A。筋力A。
重力改変?
重力改変:刀身の重さを使用者の意思により、重さレベル1〜100まで改変可能。現在の重さレベル1。重量30kg。
えーっと、3tまで重く出来ると。
剣が交わったら、重さでやられかねないな。
重さは、それだけで威力を上げる。
しかも、生半可な魔法は、剣で斬れるのか。
刀身に魔法耐性がついてるから。
物理で殴れを素でいく武器だな、アレ。
どうしたものか?
「試合開始!」
「!?」
考えていたら一気に距離を詰められた。
「ハアァーー!!」
大剣が自分に迫る。咄嗟にルーンを書く。
「炎」
2人の間で爆発が起こり飛ばされた。
俺にも爆風によりダメージが入ったが軽度、距離が出来た。
身体能力は、相手が上らしい。
剣撃では、勝ち目が無さそうだ。
魔法による対抗を考える。
俺が使える魔法は、空間魔法とルーン27文字。
古代文字は、簡単な現象を一文字で発動出来る。
組み合わせ次第で複数の効果を起こせるらしいが、まだ把握しきれていない。
教えて貰ったのは、27文字。
27魔法。
これで対抗するしか無さそうだ。
「逃げられたか。でも、次はないぞ」
ロランは、大剣を構えている。
普通に使ったら防がれるだろう。さっきみたいな不意打ちでないと……。
不意打ち?
「行くぞ!!」
ロランが向かってきた。
身体を斜めに構え、片手を後ろに下げる。
「カノ」
「ぐはっ!?」
ロランの背後、死角で爆発が起こる。
理由は、空間魔法。
空間接続。任意の空間と空間を繋ぐ魔法だ。
後ろ手に発動して、ルーンを投げ込んだ。
「ごめん!水!」
「くうッ!?」
今度は側面から水弾が放たれる。
「嵐!」
「があぁ!?」
雷撃が発生し、水で濡れた鎧に通電する。
「氷!」
最後は、背後から氷によって凍らし、身動きが取れなくなった。
「戦闘続行不可!試合終了!」
「………」
ロランは、気を失っていた。
イースまでは、いらなかったかもしれない。
パシャ!
エリクサーを振りかけた事で、ロランの身体が発光する。
傷は消えたが、意識は無いようだった。
後は、審判に任せよう。




