おまけ
昔々、あるところに大豆の王国がありました。取り立てて豊かという訳ではありませんでしたが温厚な人々が住む優しい国でした。
その国で一番偉いのは豆腐の女王様です。真っ白で滑らかな肌をしたとても美しい女王様でした。とても頭もよく、国民からも愛される素晴らしい人でした。
そんな女王様には1人の女の子がいました。豆乳姫です。女王様と同じ流れるような白い肌をした美しい少女でした。明るく親しみやすい豆乳姫は皆の人気者でした。
しかし近頃、豆乳姫が部屋へとひきこもるようになってしまったのです。理由を聞いても何も言わず、ただ悲し気に首を振るだけ。誰もが彼女を心配し、豆腐の女王様も困ってしまっていました。
なぜなら豆乳姫の婚約者のにがり王子がやって来ることになっていたからです。
にがり王子は海の国の王子様でした。青く輝くその髪と整った顔立ちをしており、穏やかなその雰囲気に誰もが好感を抱くようなそんな王子様でした。
数日後、豆乳姫とにがり王子の婚約が大々的に発表され国を挙げてお祝いをすることになっていたのです。しかし当の豆乳姫が悲しみに暮れている今、婚約発表どころかにがり王子に合わせる顔さえありませんでした。
豆腐の女王様が豆乳姫に優しく語りかけます。
「豆乳姫、何をそんなに悲しんでいるのかしら?」
豆乳姫が悲しそうな目をしながら豆腐の女王様を見ました。
「私はおからが好きなのです。今は離れ離れになってしまったけれど小さい時からずっと一緒にいてくれた彼が好きなのです」
「おからとは騎士のおからのことかしら」
豆腐の女王様の言葉に豆乳姫がうなずきます。
豆乳姫とおからの騎士は小さいころからずっと一緒にいたのです。少し年上のおからを豆乳姫は実の兄のように慕い、おからが騎士となって離れ離れになってしまい自分の恋心に気づいたのです。
しかしその時にはにがり王子との婚約が既に決まってしまっていました。豆乳姫は張り裂けそうになる自分の心を偽ろうとしましたが、どうしても我慢できなかったのです。
豆腐の女王様はそんな豆乳姫の気持ちを聞いて困ってしまいました。親として好きな人と一緒にしてあげたいと言う気持ちはありましたが、女王として海の国との関係を悪化させるわけにはいかなかったからです。
しばらく考え込んでいた女王様でしたが、豆乳姫に1つの提案を……
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「姉ちゃん、風呂だよ」
「あっ、うん。ありがとう」
タオルでガシガシと濡れた頭を拭きながらやって来た司に舞が慌ててパソコンの画面を操作してそれを隠す。
「最近パソコンに座ってるけど豆腐屋の経営まずいとか?」
「ううん、そんなことないよ。常連さんもいるし学校の給食の委託も受けたしね。私が個人的に勉強しているだけだから司は気にしないで」
「ふーん、あんま無理しないようにね」
部屋を出ていった司が2階へと上がっていくトントンと言う音を聞き、舞がふぅーっと深いため息を吐く。そして再びパソコンの画面を元に戻すと改めて文章を見直した。
「うーん、ファンタジーにしようと頑張ったけど、これファンタジーじゃないよね」
舞は何とか童話から脱却しようと頑張ってみたのだが、書くことが出来たのはどう考えても童話の範囲を超えていなかった。
「うぅ、ファンタジーって難しい……」
がっくりと肩を落とした舞がパソコンの電源を落としお風呂へと向かう。舞が豆腐メンタルという言葉に出会うのはそれからしばらくしてのことであった。
おまけなんだからねっ!
完結設定を忘れたから急きょ書いたわけじゃないんだからねっ!
すみません、うっかりやらかしたのでおまけです。
最後までお読みいただきありがとうございました。




