番外編04/留置所(中編)
非常に短いですが、もはや思い出せなくなってきているので、書けている範囲だけでも投稿します。お許しください。
○☆☆☆☆☆○★
いま……何日目だっけ?
それすらも思い出せなくなってきた十何日後。
私は東野圭吾著作の官本を借りて読んでいた。
さすがは東野圭吾。こういう小説を私も書けるようになりたい!
圧倒的な知識と語彙力、表現力には目を剥くばかりだ。
『なに小説のレビューみたいなこと考えてるのさ?』
瑠奈は呆れたような声で突っ込みを入れてきた。
だって、やることがないじゃないか……。
とはいっても、私が書いている小説は完全にライトノベルを目指している軽いノリの小説だ。ベクトルが違いすぎる気もする。
私はこれ(砂風奇譚)とは別のフィクション小説をいくつか書いている。特にメインで書いている奴は、ノンフィクションとはガラリと変わり、完全なるフィクションもの。主人公の男子高校生が美少女に変貌し、さまざまな問題を抱えるといった内容だ。自分で説明すると恥ずかしくもなる。
それに対して東野圭吾はリアル志向の大衆文芸。ここからなにか参考にできるかといえば、きちんとしている文章ぐらいであろう。
ーーこうしちゃいられない。
つづきを書かなくてはーー。
私は突如、自費で購入したノートを開き、文字をノートに走らせる。
走らせたのだがーーすぐに指が疲れて放り捨てた。
「ヤバい……」
このままでは、カスほどもなかった私の文章力が、さらに下落の一途を辿ってしまう!
事実、私が留置所から出て小説を再び更新するまでに五ヶ月ほどの期間が空いてしまった。これは捕まっていたからというのも理由のひとつだが、なにより書こうとしても筆が乗らなかったからだ。
せめて、つづきがどうなるかプロットを練り直そう……主人公が戦えるようになるにはーー。
「誰かキマシタね」
と、13番のベトナム人は、壁に耳を当てながらそう言ってきた。
……毎回誰か来るたびにこうである。まあ、仕方もないだろう。13番はそろそろ留置所歴100日を越えるのだから。
誰かが留置所に入ってくるのをちらりと横目で見ると、今回は日本人のようだ。
番号は……27番。僕のあとに既に5人もの人たちが入ってきている。いったい何時になれば出られることやら。
裁判の結果は知っている。一年六ヶ月の懲役、三年の執行猶予だろう。それ以外の結果はあり得ないとわかっているから安堵していられるのだが……。
待つだけの日々はつまらない。
○☆☆☆☆☆○★
「22番、取り調べだ。出てこい」
「取り調べ?」
忘れていたことを思い出したので書いておくことにする。
実は本作品の投稿が遅れている理由は、留置所内での出来事を忘れてしまい、書けなくなっているからにほかない。その証拠に、Twitterでは何気ないことをツイートしていたりする。さっさと最終章『断薬』に移りたいのだが、そうは問屋が卸さない。
取り調べとは、調書とはなにか違うのだろうか?
と考えながら、手錠を嵌められ警察署内を警察官と歩く。
たどり着いた部屋には、僕を迎えに来た警察官と大ボスらしき警察官の二名がいた。
なにやらノートパソコンやらトランクやらを脇に抱えている。
「ちょっと訊きたいことがあるからやってきた。どう? 留置所内? いやぁ、昼に食べたラーメンは格別だったなぁ」
自慢しに来たのだろうか?
別にラーメンが食べたいとも思っていなかった私は特に反応を示さない。
それに対して訝しげな表情をしながら「あれ? 麺類食べたくならない?」と続ける。
「いや、別に……」
「ちっ、つまらねぇなぁ……まあいいや」なにがつまらないんだおちょくりにきたのかこのやろう。「このまえ訊けなかった詳しい話を訊きに来たから。まず、売人と落ち合った場所とか訊くから。黙秘権があるから使うかどうかは考えてね。まあ、裁判のことを考えると素直に話したほうがいいよ」
「はあ……まあ、まえに話したとおりですよ」
私は捕まる原因となったと思わしき売人について詳細に説明した。
べつに裁判が怖かったわけではない。そんなこと脅しだと理解している。ただ、今回捕まった要因は明らかに件の売人だ。そこに対して容赦はしない。ただし、以前付き合いのあった売人まで話す気はさらさらない。
「うーん、ありがとう。じゃあ今度はきみが使った覚醒剤についてだけど」警察官はトランクを開けてこちらに向けた。「このなかのどの量を一回で使っていた?」
トランクの中には覚醒剤や大麻、コカインからヘロインまで見た様子本物と思わしき物が保管されていた。
わー、ほんものだー!
思わず覚醒剤に見惚れてしまう。覚醒剤はいくつかのパケに別けられて入れられており、それぞれ量は0.03g, 0.05g, 0.1g, 0.2g, 0.5gくらいだろう。
それを見た警察官は、なぜか満足そうにする。
「で、どの量を使ったの?」
私は迷いながら昔普段使いしていた0.05gを指差した。
「なんgくらい?」
「へ?」
「いいから」
なぜわざわざ訊くのかわからないが、私は「0.05g前後」と答えた。
「おー、正解」
と、覚醒剤の入った位置にあるプレートを外した。
そこには、私の予想どおりの量が記載されている。
印刷してきたらしき紙になにかを警察官は書く。
ヘロインを凝視する。
「なに? そっちも興味あるの?」
「はい。やりませんけど、これ本物ですか?」
「本物だよ」
はぇ~、日本にもヘロインってあるんやなぁ。
コカインより白いんだな。そりゃそっか。
「覚醒剤以外にもやったことあるんだっけ?」
「まあ、昔ですが一応。あ、ヘロインはやったことありませんよ?」
「ふーん」
興味なさそうに警察官は返事する。
興味ないのは、昔だからだろう。
今やっていたら問題になるが、昔だと証拠が取れない。自白だけで薬物は逮捕できない(他の犯罪もそうか)。
つまり、覚醒剤をやりました! と警察署に行ったとして、証拠がなければ尿検査以外に調べる方法がないため、現行犯は難しいだろうし、陰性なら逮捕もなにもできないのだ。
「じゃ、取り調べ終わるから」
「暇ですしほかになにかないんですか?」
「こっちは暇じゃないんだよ」
じゃあなんでラーメン旨かったなんて言うんだよ……。
ていうか、この警察官誰かに似てるんだよな~会社の社長以外にも似ている人がいる。
ああ、そうだ。高校の頃の教師に凄く性格が似ているのだ。どこか人をおちょくっているような……でも嫌いになれないような感じが……。
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今回はここまで。正直、記憶が時間が過ぎるに連れてどんどん薄くなるため、つづきが書けるような気がしなくなってきた。
だから読者にはさきに謝罪しておきたい。
つづきを書けなくなっても許してください。すみません。
その際は、作品をエタるか、留置所編を閉じて断薬編に入るかのどちらかになると思われる。
今、一番困っているのは、自宅で使用期限が五年過ぎた風邪薬が密かに見つかったときなど衝動的にODしてしまう癖だ。つまり覚醒剤では既にそこまで困ってはいなかったりする。
それでは、また。




