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キノコ
昔社会人になりたての頃、結婚を約束していた大学生の時から付き合っていた恋人に振られた私は、恋人と初めてキスをした思い出の場所で死のうと山に登った。
高い崖の上から飛び降りようとした私の目に松茸のようなキノコが映る。
当然死ぬことなど忘れ松茸狩りを行いアパートに帰って来て料理して食ったら、毒キノコで危うく初志貫徹するところだった。
あれから30年経った今ギャンブルで借金まみれになり返す当ても無く、今度こそ山で死のうと近くの山に分け入り枝振りの良い松の枝に紐を結びつけ首を吊る。
首を吊った私の目に最後に映ったのは、松の木の周りに生えている沢山の松茸だった。




