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友達の家の玄関扉が異世界に繋がっちゃって帰れないんだけど

掲載日:2023/09/23

 六畳間で、一組の男女が対戦ゲームに興じている。


「うおぉぉぉ! よっしゃー! 初めてエミに買った!」

「負けたー! コータ強くなったね。悔しい! もう一回やろう、もう一回」


 エミはコータの腕に抱きついてせがんだ。


「や、やめろ。くっつくなよ」


 コータの顔が真っ赤になった。


「あ、あれ……? ……コータ、もしかして、あたしのこと好きだったの!?」

「そうだよ。今更気付いたのか」


 照れ隠しなのか、コータは少し怒った顔をして見せた。

 エミがソワソワし始める。


「だ、だって、コータはあたしのことなんて、女として見てないのかと思ってたから」

「エミこそ、俺のこと男だと思ってないだろ」

「いや……(小声)そんなことは……ごにょごにょ……」

「ん?何か言ったか?」

「ううん、何にも」


 コータは時計を見た。針は午後8時過ぎを指している。


「……もうこんな時間か。今日は泊まっていけよ」

「いやいやいやいや、帰るよ」


 エミは赤くなって帰り支度を始めた。


「今、帰れないぞ」

「なんでよ、帰るよ」


ガチャ


 玄関扉を開けると、そこは草原だった。


バタン


「……何これ!? なんか外が草原なんだけど!?」

「ああ、繋がったか。そこのドア、毎日このくらいの時間になると、異世界に繋がるみたいでな」


 コータはゲームのコントローラーを手に持ったまま、悠然と言った。


「……は?」


 エミの目が点になった。

 意味が分からない。


「しかも、ランダムエンカウントの敵がめちゃくちゃ強い。ゲーム開始直後にレベル20の敵と戦う感じ。俺は一度遭遇して死にかけて必死で逃げてきた。それから二度と外に出てない」

「いやいやいやいや。どんな現象よそれ」


 エミは頭痛をこらえるように、こめかみを押さえた。


「正直俺にも意味は分からんが、現実にそうなってるんだから仕方ない。朝になれば元に戻ってるから、それほど困ってはいないぜ」

「今まさに私が困ってるけど?」

「だから、泊まってけよ。別に無理矢理襲ったりはしねえから」

「ううう……」


 エミはしばらくしゃがみこんで唸っていたが、おもむろに立ち上がると、コータから1メートルほど離れた場所に座り直した。


「コータはさ、あたしのこと好きなんだったら、したいとか思わないの? その……、キス、とか」

「そりゃ、したいに決まってるだろ。でもエミが嫌なら我慢するさ」

「そ、そう……」


 エミが真っ赤になって言い淀むのをしばらく見ていたコータは、不意にハッとしたように目を輝かせた。


「もしかして、してもいいのか!?」

「え、嫌だよ!」


 エミが即答したので、コータはショックを受けた顔をした。


「なんだ、違うのか」

「だって、あたし達はまだ付き合ってるわけじゃないし……、告白すらされてないし……」

「……『まだ』?」


 コータは少し考え、正座してエミに向き直った。


「エミ」

「う、うん」

「好きだ。俺と付き合ってくれ」

「…………」


 エミは赤くなった顔を隠すように両手で押さえ、


「……はい」


 と頷いた。

 それから、コータに近づき、今度は肩が触れ合う位置に座った。


「…………」


 やや潤んだ瞳でコータを見上げる。


「キスしても、いいか?」


 コータのこの質問に、


「……うん」


 今度はエミも頷いた。


「……ん……」



 離れた後、エミはコントローラーを握って、


「もう一戦しよう!」


 と言った。


「おう、やるか」

「……今日、本当に泊まっていってもいいの?」

「お、おう。なにしろ、外は異世界だからな」

「ふふ。そうだね。異世界だからね」


 二人は異世界に感謝した。

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