見つけたものの正体
「流石――というべきなのでしょうね。妖精が一緒にいるとはいえ、ソロでデュオジラにワイバーンの巣襲撃、忍びサボテンの実を持って帰ってくるとは」
「どうもどうも」
「ドウモドウモ」
はい、戦利品を回収して道中で一本だけ生えていたサボテンの実を数個もぎって帰ったら別室に通されました、譲二です。来た時同様の女性職員が担当してくれているが、すごい苦笑いを浮かべていらっしゃる。
曰く今日俺がこなした内、デュオジラは2人以上のパーティでの討伐を推奨され、ワイバーンの巣に至っては複数パーティが基本となっているらしい。そんな事言われたってしょうがないじゃないか。
で、忍びサボテン。これは実をもぎ取ること自体は誰でもできることなのだが、見つけることが困難らしい。その辺は見つけた時にスマホの図鑑アプリで知ってたけどさ、あっさりと見つかったよ?そもそも見つけようとして見つけた訳じゃないけど。
そしてもぎ終わって改めて帰ろうとして視線を外してもう一度忍びサボテンを確認しようとしたらすでにその場から消えていた。忍んだっぽい。忍びサボテンの実も何個か持って帰ろう。
「まぁこちらとしては有難いことです。デュオジラはともかく、ワイバーンを卵とまとめて納品は滅多にないですから。ワイバーンが蓄えていた宝飾品は多少色を付けさせていただきます」
「あ、デュオジラは首肉を、ワイバーンは2体分の肉と骨と卵は5個持ち帰りますんで」
「あら、骨は武器でも御作りに?それでしたら職人を紹介することも――」
「骨は煮込んで出汁とりたいんで」
「――流石ですね」
あれ?おかしいぞ、冒頭の言葉と一緒の言葉なのに含まれている意味が違い過ぎる気がするぞ?だって戸中山ダンジョンの隠しエリアキャンプの後で食べたティラノ骨スープの雑炊がアレだけ美味かったんだ。ワイバーンの骨だってきっと上手い筈だからな。……いや待てよ?骨髄という手も。
そんなこんなで買取の話が進んでいき――最後の1つとなった。今回の探索の一番の問題児。宝石のような殻をした卵だ。そう、卵。ワイバーンの巣にいた時にもしかして調べられるのではと思って図鑑アプリで調べてみればヒットしましたよ。
「"ジュエルグリフォン"の卵が見つかるとは運が凄まじいとか言われません?」
「否定はできないですね」
「スゴイよねー」
グリフォンとは鷲の頭に翼に前脚、ライオンの胴体と下半身を持つモンスターでかなり上位に位置するモンスターだ。鷲の視力に大空を悠々と飛行することのできる翼。ライオンの筋力に獰猛さ。それ狙われてしまえば一般冒険者は終わりと言わしめるほどの力を持っている。
さて、先に一般的なグリフォンの説明をしておいて今回のジュエルグリフォンの話に移ろう。
ジュエルグリフォンもその名前からしてグリフォンの近縁種だ。鷲の頭に翼に前脚、ライオンの胴体と下半身もちゃんとありますとも。ジュエル要素は肌のあちらこちらに宝石が露出しているところにある。
グリフォンであり、宝石という+αの要素が加えられれば強いと初めてその名前を知った人はみなそう思うだろう。残念、ジュエルグリフォンは早い話が雑魚です。
まずサイズ。ワンちゃんレベルです。それも小型犬。次にスペック。鷲の翼?言うほど迅く飛びません。ライオンの胴体?言うほど力はありません。多分大型犬に負ける。
そんな貧弱なモンスターがどうやってダンジョン内を生き抜くのか?その答えが今回ワイバーンの巣で見つかったことにつながる。
要するにカッコウやホトトギスの様に他のモンスターに巣立つまで守ってもらう様、托卵しているのだ。対価は宝石の様に輝く卵の殻。孵らなくても、卵が残っていれば輝く物が好きなモンスターであればそれだけでメリットでもある。
「確か有精卵か無精卵かは分からないんですよね?」
「その通りです。過去あらゆる科学技術を用いても、殻が特殊なのか卵の中を透析して確認することは出来ませんでした」
「なるほど。ちなみにオーロラは何か感じる?」
「モノスゴク何も感じない!」
やっぱりか。俺も卵の形をした宝石にしか見えなかったからなぁ。
「そしてそれは親個体でも分からないそうで卵が出来次第手当たり次第に托卵しているそうなんです。殻のおかげでいつまで経っても中身が腐らないのはメリットではあるかもしれませんが」
「オォースゴイ」
こらこらオーロラ、卵をそんな突かないの。転がって床に落ちちゃったら――いや、それで割れたらワイバーンなんて大きな存在に托卵しないか。
「こちらとしては出来るだけ買い取りたいのですが……これくらいでいかがでしょうか?」
「どれどれ……って高いですね」
宝飾品と卵含めたワイバーンの買取合計より価値あるんですかこの卵。いや、希少性は分かるけどワイバーンの立つ瀬無くなっちゃう!でもまぁ、大変申し訳ないのだがこの卵については既にオーロラと話し合って決めちゃってるんだよね。
「すみません、食べたいのでこの卵の買取はナシで……」
「ですよねぇ……何をお作りの予定か聞いても?」
「漬け卵を」
なんて言ったら女性職員さんが大爆笑してしまった。この煌びやかな見た目の卵を使って作る料理が漬け卵と言われたら笑ってしまうのも分かるけどそこまでかね。あらあら涙まで流しちゃって、うふふ――あれ?大丈夫?過呼吸になってない?ちょっ、誰か!誰か来て―!




