※主人公です
「ギュオッギュワッ!」
「ギュルルァ!」
おっと、卵と輝く何かしらに気を取られていたところをワイバーンの威嚇を含めた鳴き声によって引き戻された。
改めて目の前のドラゴンにもよく似たモンスターはワイバーン。ドラゴンと違う点と言えば翼が背中に生えているわけではなく、腕部分に蝙蝠の様な翼膜が存在しそれを駆使して飛行する。ドラゴンに近い見た目をしながらもそのスペックはドラゴンに及ばないことから"ドラゴンもどき"とか呼ばれることもしばしば。種類的には近い筈なのにね。
まぁドラゴンに及ばずともそこら辺のモンスターよりも厄介なモンスターではあるし、アオオオダイショウにおけるアカオオダイショウのようにドラゴンに迫る力を持つ上位種が現れることもあるらしいが。
ワイバーンの数は6体か……3組のペアで1つの巣を共有しているのか、はたまたハーレムなのかいまいち分からんな。まぁ俺にはワイバーンの雄雌の区別はつかないし、それを知ったところでどうということはないのだが。
さて、6体のワイバーンは全員もれなくやる気のようだ。卵を置いて逃げるというのなら見逃してやったと言うのに愚かなことだ……いや、このセリフを含めて俺ちょっと悪役っぽくないか?愛を育んでいる巣もとい家に乱暴な方法(ヤドリギの矢)で押し入り家庭を荒らす――うん、考えないようにしよう。
「「ギュアッ!」」
「おっと、オーロラ飛ばせちゃダメだからな」
「ハーイ!」
戦闘態勢に入ったワイバーンは大きく翼をはためかせて飛び上がろうとする。ワイバーンは狩りをするとき上空から遠距離攻撃を仕掛けたり、隼の様に急降下して襲うことが常套手段だ。だが安易に上を取らせるほど甘くないしそれを防ぐ手段はいくらでもある。俺はトネリコの弓で放った矢で翼の関節部分を狙い撃つ。矢が関節に突き刺さり、鈍い音とともに翼が折れた。ワイバーンの悲鳴を上げさせ、体勢を崩すことに成功した。
オーロラはお得意の氷魔法で翼を丸々氷漬けに。すでに巣から離れていた連中は氷漬けになった翼でそれ以上飛ぶことが出来ず、そのまま自由落下することに。流石に怪我するほど高く飛んではいなかったが、奴らの出鼻をくじくことが出来た。
んじゃま、怯んでくれたところでさっさと終わらせることにしましょうか。オーロラをその場に留めておいて右手に吽形、左手にヤドリギの矢のいつものスタイルで、ワイバーンの内の一番大きい個体に接近する。
「ギュブァ!」
これで抵抗なく首を落とすことが出来れば話が早かったのだが、ドラゴンに近しい存在としての意地なのか、腹部が大きく膨らんだかと思えば俺の視界が一瞬にして炎に包まれた。炎のブレスだろうが――
「熱いなぁもう!」
「ギュアッ!?」
吽形を大きく振るい、炎のブレスを霧散させる。流石に赤大蛇の帯皮は炎の熱には作用しないから少々熱くはあったが、大怪我するほどの火傷は負ってはいない。これくらいならあとで持っているポーションをかけとけば問題ないだろう。
おっと、次は尻尾の毒針が俺を突き刺さんと迫り来る。これに関しては刺さらなければ問題なかろうなのだと言うことで刺さる前に斬り飛ばす。次の手段は?――あぁ、その体躯と物量を利用しての集団での体当たりね。だが悲しいかな、元々地上での戦闘がそうそうないことからスピードはそれほどでもない上、他のワイバーンがオーロラの妨害によって前に進めず実際に突っ込めたのは真正面の1体だけ。
やぁ、ワイバーンくん!急に上がり込んじゃって悪かったね!お出迎えしてくれてありがとうね、代わりに送ってあげるよ!
「"頭ぶち抜け"っとぅ!」
ヤドリギの矢で頭を撃ち抜く。それでもまだその目には戦う意思が残っていたので、反撃を許す前に吽形で頭部分を斬り落としたところで、ようやくワイバーンの体が力なく崩れ落ちた。
よし、巣の中で一番強いであろう個体を斃してしまえばあとは楽というもの。流石にヤドリギの矢の乱発は控えたがオーロラと協力し時間をかけることなく巣のワイバーンを殲滅することが出来た。
「お疲れ様」
「オツカレ!」
「それじゃワイバーンと目的のもの回収しようかね」
「ハーイ!」
さっさとワイバーンの死体の回収を済ませて今回の主目的とその副産物も回収だ。
主目的とは勿論、ワイバーンの卵。ワイバーンの体に隠れて正確な数は分かっていなかったが、なんと8個もあった。抱えてみたがずっしりとしたその重さは見た目以上だ。これをゆで卵にして漬けるのか……フフフ、今から楽しみでしょうがない。
で、それ以外のいわゆる副産物なのだが……卵の傍に添えられた金のネックレスだとか指輪だとかの宝飾品だ。ドラゴンに近しい存在は基本金銀財宝がだーいすき!巣にはどこから集めてきたのかそれらを貯蔵する習性がある。それ目当てでワイバーンの巣を狙うものもいるらしいな。まぁドラゴンの蓄えてるものに比べたら宝石や貴金属の質は低いが。
「オーロラ要るか?」
「シュミに合わないからいらない!」
さいですか。オーロラの趣味が何なのかは気になるところだが……ちなみに俺も全く興味がない。
まぁ宝飾品についてはいいんだよ、どうせ売るんだからさ。これがね、宝飾品と卵の中に一つだけ異彩を放つものがあるんだよ。俺はそれを掴み上げてはマジマジと見つめる。おっと、オーロラも肩にやってきた。
「ジョージ、何ソレ?」
「卵……宝石……?あるいは両方か?」
それは卵の形をした赤いダイヤモンド?いや、ダイヤモンド柄の卵と言った方がいいのか?
最初は大型ワイバーン1体がジョージに立ち向かい他5体が卵を必死に守る構図を考えてましたがなんか嫌な予感がしたのでやめました。




