これね、ネッキングって言うらしいですよ
見上げるほどの大きさの癖して軽快な足音を響かせて近づいてきた双頭のキリン型モンスターである、デュオジラ。流石にキリンだけあって、追跡ガツオの特殊個体"戦艦"やアダムとイヴの樹、通路に詰まったビッグスライムといった今まで対面してきた巨大モンスターたちにも負けず劣らずの高さをしているな。
さて、初めて遭遇した訳だから何となく接敵を許したわけなんだが……明らかにこちらに意識は向いているよな。ただサイズ的にオーロラの存在には気づいているのかは怪しいところ。
デュオジラが俺達の目の前に来て見下ろしてきたかと思えば――
「「ンモ゛ッンモ゛ッ」」
両方の頭から牛に近い鳴き声をあげ、首筋を軸に頭部が円を描くようにぐるんぐるんと回し始める。あ、これ事前の情報収集で学んだところだ!
事前情報通りなら回避することは難しくないだろうが、第一モンスターのお手並み拝見として一度受けてみよう。もし、これで不安点が出来るようであればその時また考えればいい。そうすれば、まずはオーロラだな。
「オーロラ。俺から離れるか逆にくっつく位近づいてな」
「クッツイとく!」
このままオーロラが俺の近くを飛んでいる状態であれば、デュオジラの攻撃に巻き込まれる可能性があったので、その2つの内選んでもらったところ俺の服に潜り込んで顔だけ覗かせた。別に服の中まで入らずとも肩に乗ってくれるとかでよかったんですけど?
「ンモ゛ゥ!」
おっと、そうこうしているうちに奴の攻撃――頭を回転させることで遠心力を高めた状態で、首を鞭のようにしならせて横薙ぎの強烈な頭突きを対象に向けて叩き込むというものが繰り出された。ただの頭突きと侮るなかれ、その一撃は岩をも容易く砕け散らせるという恐ろしいものだ。訓練していない人間が喰らってしまえばひとたまりもないだろう。
しかし、慌てず騒がず落ち着いて取り出したるは硨磲の盾。俺とデュオジラの頭に間に挟み込み、しっかりと地面を踏みしめ、腰を落として構えてその攻撃を迎え撃った。その衝撃は戸中山ダンジョンでもめったに味わえない程強烈なものではあったが、硨磲の盾に数本の罅が走るくらいで受け止めきることができた。
が、そこで油断してはいけない。
「ンモ゛ゥ!」
そう、デュオジラなのだ。頭突き1つで終わるわけではない。挟撃の形で一撃目とは反対の方向から迫ってくるもう1つの頭。そうだな、これで俺が普通の人間でソロならば回避が間に合わずここで大怪我を負っていたことだろう。
ごめんな、硨磲の盾ってもう1つあるんだわ。最初の方に出した硨磲の盾Aには申し訳ないけれど盾の内側から蹴りを入れてデュオジラの頭Aを弾き飛ばす。で、開いた両手で硨磲の盾BをAカードから引っ張り出して改めて受け止める。二撃目に至っては威力のほどが分かっているから無駄に力を籠めずに受け止めることが出来た。
「はい、失礼!」
受け止めきった硨磲の盾BをA同様に蹴り飛ばしてデュオジラの頭Bを怯ませる。頭Aが立て直して攻撃しようとしてくるが、その前に近づいてそれぞれの首を根元から吽形で斬り落としてお終いだ。うんうん、今日も今日とて吽形は良い切れ味で素晴らしいね。
とまぁこんなものか。勿論、デュオジラがこのダンジョンで最強あるいは最弱のモンスターという訳ではないから油断は禁物だ。しかしヤドリギの矢は疎かトネリコの弓を用いずに正面から相対しても勝利できたことからとりあえずはこの荒川原ダンジョンに潜っていても大丈夫そうだな。
「オツカレー!ネェ、このモンスターって食ベルの?」
「確か胴体部分はそこまで美味くないけど、首の肉が美味いみたいだぞ。胴体部分は毛皮として需要があるみたいだから一旦全部持ち帰ろうかね」
案の定、解体の経験のないデュオジラは後で組合で解体してもらうためそのままAカードに収納しておく。ぶっちゃけ、斃すよりもAカードに片付ける方がそれなりに疲れたよ。切断面から血が流れたことでその匂いを感じ取ったハイエナっぽいモンスターが出てきてその処理に追われたからね。そっちは1、2頭に普通の矢を突き刺してあげればすぐに逃げ帰っていきましたよ。
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デュオジラを斃した後、ワイバーンの卵を求めて目印となる物を探すため歩いているのだが、やはり冒険者が多いだけあってちょくちょく配信なのか動画撮影なのかカメラを持っている冒険者がチラホラ見受けられる。
当然映る訳にはいかないから見かけ次第、こっそりと距離を獲るようにしているから問題ないが。
そうして冒険者たちを回避しながらも歩いては周りを見渡して――ようやくワイバーンの巣らしきものを見つけることが出来た。ただ、その……なんだ。
「どうやって立ってるんだ、あれ?」
「スゴイネー」
須藤さんからも予め聞いていたし、調べてもいたのだが……直に目にすると一層意味が分からない。
見たこともあるもので例えるなら……そう、皿回しだ。地面から先程のデュオジラよりも細く長い棒というか竿?の先っちょに皿のようなものが引っ付いて、その皿からはみ出す形でワイバーンらしい尻尾が確認できた。




